嫌われてても特別で大好き
昔、ひよどりを飼っていた。
小学校4年生の夏休みの自由研究は、校区内にある神社やお寺、地元に残る伝説などを調べてまとめる予定だった。なんとなく昔からそうした伝説や歴史的なものが好きで、地域の文化に興味があったのだ。
校区内と一言で言っても、田舎の校区は広くて半径5キロのとても広い範囲で、親に車に乗せて行ってもらい何日か巡る予定だった。
その初日、3件目か4件目の神社で、地面に落ちていたヒヨドリの雛を見つけた。少し衰弱もしていて、親の姿も見つからず、飛べない雛をこのまま置いておいたら危険だろうと動物病院へ連れていき、元気になるまで飼うことになった。
私にとって、初めてのペット。ピッピと名付けて、ケージを買ってもらって飼い始めた。
はじめはまだ手のひらの中にすっぽりと入る大きさで、手の中でおとなしく餌を食べる様子は可愛かったなぁ。とても賢い鳥で、人差し指を足の前に出すと、ひょいと飛び乗り手乗りヒヨドリ、また肩の上に乗って一緒に外に出かけられるほど懐いてくれた。頭の上にもなんども糞をされたけど、それでも可愛くていつも一緒にいたっけ。
今でも、鼻をつけた時の干し草のような柔らかな香りとふわふわの羽の感触を思い出す。
でも、野生の鳥は本来飼ってはいけないので、元気になったら自然に帰さなくちゃいけない。
しっかり飛べるようになり、ケージの周りに友達も遊びに来るようになった頃、我が家の隣の山に帰してあげることに。
近くの木からなかなか飛んでいかないピッピを、ずーっとずーっと見てたっけ。
自然に帰ったあとも、時々顔を出しに来てくれて、子供ができたら子供と一緒に挨拶に来て、相変わらず可愛い子だった。
ヒヨドリは賢いから、畑などを荒らすため嫌われている。
でも、私にはピッピとの思い出があるから、ヒヨドリはどんな鳥より大好きな鳥で特別な鳥なのだ。
いつか、あの思い出の景色を根付に彫りたいなぁと思いつつ、でも、ヒヨドリって嫌われ者だからきっと誰も買ってくれないな、そもそも足や尻尾はどうしよう、なんて思いつつ、鉛筆画でヒヨドリの絵を書いたりしている。
私にとって、どんな鳥より大好きな鳥だから。