謎は謎のままでいい
谷中商店街の骨董だか土産だか雑貨店の主人が知り合いらしく、
私は辛島宣夫に連れられて店に立ち寄る事となり、雑談となった。
私が子供の頃から辛島宣夫を知っており、対面する事になった経緯に、
店の主人は驚き、感慨深さと不思議さを感じると言って感心していた。
ある会話の中で辛島宣夫は「謎は謎のままでいい」と口にした。
謎のなくなったものは、その魅力を失い、人を引き付ける力を失うと。
店を出て歩き、当時 白山に住んでいた私は辛島宣夫を自宅に招待した。
彼はトイレを貸して欲しいと言い、今日はこれで帰りますと言うのだった。
連絡先を交換した。
「連絡しますよ」
と、辛島宣夫は言った。
私は、彼を充分に もてなす事ができなかったのが口惜しかった。
不審がる妻と、吠えまくる犬がいる狭い部屋に邪魔できるわけがない。
配慮が足りず、気を使わせてしまった。
寛いで、もっと色々な事を聞いてみたかった。
だが後日、電話が鳴った。
私を自宅に招待したいという連絡だった。