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「すぐに」をやめる

「3年後の成果を待てますか?」

この問いは、ワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまねさんの最新著書『「すぐに」をやめる - ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣 -』を読んでいる間に、自分自身に降ってきたものです。

組織や事業のマネジメントに関わっている方であれば、この問いに葛藤を抱く方も多いのではないでしょうか。

今回はこの問いについて綴ってみたいと思います。


ネガティブ・ケイパビリティとは

まだまだ一般的には浸透していないコトバですが、昨年からよく見聞きするようになったネガティブ・ケイパビリティというワード。

沢渡あまねさんによると「すぐ解決しようとしない行動特性および能力」と定義されています。
一方でその対義語として、「すぐ解決する能力や体制」をポジティブ・ケイパビリティと呼びます。

「ポジティブ=良い」「ネガティブ=悪い」という話ではなく、ポジティブ・ケイパビリティもネガティブ・ケイパビリティも併せ持つことで、難易度の高いビジネス課題にも向き合っていけるという沢渡あまねさんの考えにはとても共感します。

自分自身は、数年前までは「ポジティブ・ケイパビリティ」に偏った言動が中心であり、今もその傾向があるのは自覚しているのですが、ここ1~2年はネガティブ・ケイパビリティの重要性をひしひしと感じています。
(自分の中のネガティブ・ケイパビリティをじっくり育てている最中です。)

書籍 『「すぐに」をやめる』

『「すぐに」をやめる』は、ポジティブ・ケイパビリティに偏り過ぎた組織の弊害を具体的なエピソードを交えて紹介した上で、どのようにしてネガティブ・ケイパビリティをあわせ持って答えや成果を出していくかを考える第一歩として、とても最適な書籍です。

この書籍が発売される前から、沢渡あまねさんはネガティブ・ケイパビリティの重要性を様々な媒体で発信されていましたが、日経クロステックに掲載されたこちらの記事にある「P型組織とN型組織の特徴」が非常にわかりやすい内容となっております。興味を持たれた方はぜひご覧くださいませ。

出所:日経クロステック 『ネガティブ・ケイパビリティーなき企業は組織も人もつぶす、「急がば回れ力」を育てよ』 2024.09.13

3年後の成果を待てますか?

ここからは、冒頭に記した問いについて感じたことを綴っていきます。

組織や事業の持続的な成長を目指した「中期経営計画」で3年後の目標やビジョン(理想の姿)を掲げたものの、3年が経過して振り返ってみると、財務上の業績は伸びているものの周りの景色はほぼ変わっていない・・・、ということはありませんでしょうか。

ここでの周りの景色とは、
 「専門性を持った人材(タレント)の輩出」
 「新規事業の立ち上げ」
 「既存事業のビジネスモデルの転換」
 「トッププレイヤーの世代交代やローテーション」
などを指します。

この状態がポジティブ・ケイパビリティが強すぎる弊害と捉えています。

毎年の財務目標(売上や利益)は達成して、年々業績は伸びている。
しかし、持続的成長を目指して掲げたはずの「人材」「新規事業」「構造転換」などが伸びていないとすれば、そこにネガティブ・ケイパビリティの発揮が必要と考えます。

人材にしても新規事業にしても、半年や1年ですぐに成果が出るものではなく、3年、5年、10年とじっくり継続的に取り組んでようやく成果が出てくるものですよね。

じっくり待って出てくる成果が待てずに、短期業績目標に集中した一気呵成のパワープレイを実行した結果、本来目指していた中期目標への「持続的成長ストーリー」が大きく崩れ、短距離走を毎年全力で走り続けてみんなが疲弊してしまう・・・。

短期業績目標が大切なのは理解できます。ポジティブ・ケイパビリティも重要なのも理解できます。
でも、ポジティブ・ケイパビリティ(全力の短距離走)に偏った取り組みでは、現場のメンバーがその速度についていけなくなったり、「いつまで全力で走り続けるのだろう?」という疑念が生まれてモチベーションを下げてしまう可能性がとても高い。

ネガティブ・ケイパビリティをあわせ持ち、遅いペースであってもじっくりと着実に走り続け、走っている途中の景色の変化も楽しんで目的地に到達する。
初年度や2年目の短期業績目標は達成できないとしても、じっくり着実に走り続けた結果として3年目や4年目以降に目に見える成果が現れ、10年経てば関係者全員が素晴らしい景色が見えているケースもあるので、まずは「じっくり答えを出す」スタンスを自分の中にあわせ持つ思考のクセを持ちたいですね。

人材育成に関わる立場として

1月から所属事業部のHRBPとなり、人材育成に責任を持つ立場となりました。

人材育成に関わる様々な方が、この「ネガティブ・ケイパビリティ」の重要性を浸透し、ポジティブ・ケイパビリティとの絶妙なバランスを見つけ出して、事業と個人がじっくり着実に成長できる道のりを提示できるようにしていきたいですね。
(同じ思いを持つ方とは、ぜひぜひ色々とお話させていただきたいです。)

時には組織内のコンフリクト(考え方の対立)もあるかもしれません。
ただ、それは組織として健全なコンフリクトと考えているため、熱意と覚悟を持って「3年後の成果を待つ」を信じた発言・行動していきたいです。

じっくり取り組んで3年待って景色が変わらなければ、成果を急いで自分自身がポジティブ・モンスターに変化しているかもしれませんが(笑)

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