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ゴッホの見た星空(39) 《星月夜》の渦巻は何か? :解釈のまとめ

《星月夜》の渦巻

《星月夜》はゴッホの名作として有名な一枚である。この絵を有名にしているのは、夜空に大きくうねる渦巻模様が描かれていることだ(図1)。

図1 ファン・ゴッホの《星月夜》(1889年)。ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。 https://www.artpedia.asia/work-the-starry-night/

この渦巻は何なのだろう? 夜空に巨大な渦巻が見えることはない。そのため、いろいろな説が提案されてきている。これまでnoteでさまざまな説を紹介してきた。最近では「大気の渦」や「渦巻銀河M51」のアイデアを紹介した。他にもいろいろあるので、一旦、諸説をまとめておくことにしよう。

《星月夜》の渦巻は何か?

今までに提案された説を表1にまとめたのでご覧いただきたい。

表1 《星月夜》の渦巻の解釈
表1 《星月夜》の渦巻の解釈(続き)

光文社新書『ゴッホは星空に何を見たか』

M51の渦巻の解釈については光文社新書『ゴッホは星空に何を見たか』(谷口義明、2024年)に詳しい説明があるので、興味のある方はお読み下さい(図2)。

図2 光文社新書『ゴッホは星空に何を見たか』(谷口義明、2024年)。《星月夜》は第3章、《糸杉と星の見える道》は第4章で説明されている。

浮世絵の奥深さ

浮世絵による解釈は、葛飾北斎 の《神奈川沖浪裏》を起源とする説は光文社新書『ゴッホは星空に何を見たか』で紹介した。

歌川広重の 《阿波 鳴門の風波》の可能性は note 『ゴッホの見た星空』(36)で紹介した。

また、葛飾北斎の《上町屋台天井絵 怒涛図》(図3)については「ゴッホは星空に何を見たか<光文社新書ビジネス講座>」で紹介した。こちらは次のムービーで見ることができます(有料なので、恐縮です)。

これは2024年12月3日、新宿の紀伊国屋書店で行った講演会『ゴッホは星空に何を見たか』の様子を収めたものです。お楽しみ下さい。


図3 葛飾北斎の《上町屋台天井絵 怒涛図》 https://hokusai-kan.com/collection/kanmachi/

「渦を巻く海の波」は浮世絵の定番のひとつだったのですね。まったく、意識していませんでした。「青(碧)」の美しさが浮世絵師を惹きつけたのか。

そして、19世紀、浮世絵は海を渡った。ポスト印象派のゴッホたちはたちまち浮世絵に惹きつけられた。

結局、「質の高いもの」は、国や人種の垣根を乗り越えて、世界をめぐるのだ。