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バルコニアン(6) 万葉の時代の園芸はどうだった?

園芸好きの日本人

マンションの大規模改修で大変でした。その後、少しずつですが、ルーフ・バルコニーの庭も復活しつつあります。

ガーデニングといえば、イングリッシュ・ガーデンが思い浮か日ます。しかし、日本人もかなりの園芸好きな国民ではないでしょうか。

たとえば、江戸時代なら「あさがお」や「ほおずき」を売る市がたち、多くの庶民が買い求めたといいます。もうだいぶ前のことですが、私の町でも、「あさがお」市が開かれていたことがありました。

万葉の時代は?

江戸時代はさておき、もっと昔はどうだったのだろう? そう思って、一冊の本を買い求めました。岩波新書の『花と木の文化史』(中尾佐助、岩波書店、1986年)です(図1)。

図1  『花と木の文化史』(中尾佐助、岩波書店、1986年)。最近、昔の岩波新書がいくつか復刊されてきています。大変助かりますね。

読み進んでいくと、第III章に「日本の花の歴史」という項目がありました。そこに面白い比較が出ています。「万葉集」、「聖書」、そして「唐詩選」に出てくる草木のベストテンです(表1)。

註:「唐詩選」に出てくる「芳樹(ほうじゅ)」は美しい花の咲く木、「百草(ひゃくそう)」はいろいろな草 (千草ともいう)、「昔樹(せきじゅ)」は旧い木のことです。

なんと、「万葉集」ではハギ(萩)がトップでした。梅と松が続き、桜は第8位に甘んじています。

一方、「聖書」では花というより、実用的な植物が上位を占めます。「万葉集」は歌集ですが、「聖書」は宗教に関する書物です。その違いが出ているのでしょう。

また、ベストテンではないですが、「唐詩選」(明 [ミン] の時代、16世紀から17世紀に編纂された漢詩集)に出てくる植物関係の言葉が紹介されています。こちらは、もっと驚くべきことが紹介されています。出てくる言葉は、草、花、薮などの一般名詞で占められているのです。いったい、どうなっているのでしょう。

ちなみに「万葉集」には166種もの植物が出てくるそうです。こうしてみると、日本人は草花に対する愛着が強い国民なのかもしれません。

NHKの朝ドラ『らんまん』の主人公、植物学者の牧野富太郎博士(1862-1957)の植物への執念には驚かされたものです。収集した植物標本は約40万枚、新種の発見は約1500点。『らんまん』のおかげで、また園芸ファンが増えたかもしれませんね。

我が家のルーフ・バルコニーでは?

「万葉集」の順位を見ると、萩、梅、松、藻、橘、菅、芒、桜、柳、そして梓となっていました(表1)。我が家のルーフ・バルコニーを見渡してみると、あるのはひとつ。松だけです(図2、図3)。

図2 (上)我が家で一番大きな松。数年前に買ったものですが、ある年、急に大きくなりました。(下)こちらは小さな松。モコモコになっています。いずれも剪定が必要なのですが・・・。
図3 軽石でできた鉢に植えた松。この種の鉢は雰囲気作りに役立ちます。夜間照明用のライトは、現在10本ぐらい置いてあります。手前の花は芍薬(シャクヤク)です。

一時期、梅と八重桜もありましたが(図4)、今はありません。

万葉人が我が家のルーフ・バルコニーを見たら嘆くかもしれません。「万葉集」を今後の指針にしてみるのも面白そうなので、少し考えてみます。

図4 一時期、バルコニーにあった八重桜。

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