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ゴッホの見た星空(32) ゴッホに誘われ浮世絵を楽しむ
金沢で浮世絵の九谷焼
先月(2024年6月)、金沢に出かけたとき、漆器や九谷焼のお店を見て回った。いろいろ買ってきたが、最後にお土産屋さんで九谷焼の陶版を2枚買った。葛飾北斎の浮世絵が絵柄になっているものだ(図1)。『冨嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」(通称「赤富士」)である。ゴッホはこの2枚の浮世絵を見たのだろうか? そんな思いで、これらの陶板を買った。
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浮世絵がゴッホの絵を変えた
ゴッホの初期の絵は暗いトーンのものが多かった。しかし、1886年、パリに移ったあと、画風は劇的に変わった。その原因は日本の浮世絵だった。19世紀後半、浮世絵は印象派(クロード・モネ、エドガー・ドガら)やポスト印象派の画家たち(ゴッホ、ポール・ゴーギャンら)に大きな影響を与えた。ゴッホに関心を持ってからこの事実を知ったが、正直なところ驚いた。と同時に、外国人に浮世絵のよさを理解してもらったことは日本人として誇りに思う。原田マハの『たゆたえとも沈まず』(幻冬舎、2017年)を読むと浮世絵がゴッホの絵に与えた影響がよくわかる。
実際、ゴッホの絵には浮世絵をフィーチャーした絵が何枚かある。三つの例を上げておく(図2、図3、図4)
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私はマニアではないが、浮世絵は好きだ。そういえば童話作家の宮沢賢治も浮世絵のコレクターだった。
こんなこともあり、金沢で浮世絵の陶板を買った次第だ。ただ、買った2枚の陶板をどう使うかまでは考えていなかった。とりあえず本棚の空きスペースに飾るぐらいかと思っていた。
偶然の出会い
使う当てもなく買った、九谷焼の2枚の陶板だったが、ある日、曙光(しょこう)がさした。とあるデパートの陶器売り場を見たら、とても素敵な湯呑みがあった。なんと、葛飾北斎の浮世絵『冨嶽三十六景』「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」(通称「赤富士」)が描かれた湯呑み茶碗なのだ(図5)。京焼・清水焼だ。表面は少しざらっとしているが、それがかえって気持ちよい。
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また、打ってつけの湯呑み茶碗に出会ったものだ。並べてみるとよくわかる(図6)。
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当面はこれでお茶を飲むことにしよう。できれば、ゴッホにもこれでお茶を飲んでもらいたかった。
「いや、いや。私はお茶よりワインがいい」
ゴッホはそういうかもしれない。そのときのために、金沢では九谷焼のワイングラスも買ってきた(図7)。ゴッホが気に入ってくれるなら、これを差し上げたい。
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