氷上のプリンスたちへ
◆ネイサン・チェン選手へ
ショートプログラムは、職場で見ていました。
日本人選手の最後に滑った鍵山選手が自己最高点をマークしてトップに立ち、私たちは大いに沸きました。
そのすぐあとに滑ったのが、あなたでした。
あなたの演技が進むにつれ、私たちの口数は少なくなっていきました。
圧倒的な演技でした。
そして昨日のフリー。
あなたはまさしく王者のようでした。
威風堂々たる4回転ジャンプ。完璧なトリプルアクセル。優雅なスパイラル。小粋なステップ。
誰よりもシンプルな衣装のあなたは、誰よりも輝いていました。
恵まれたスタイルに運動神経、そして優秀な頭脳。天はあなたにどれだけのものを与えたのでしょう。
でも、あなたはそれに甘んじることなく、血を吐くような努力の末に北京のリンクに立ったはずです。
私たちの国の選手はあなたに勝てなかったけど、あなたなら仕方ない。なんの曇りもなくそう思える演技でした。
ネイサン、金メダルおめでとう。
心からの賛辞と敬意をこめて。
◆鍵山優真選手へ
本当にびっくりしました。
あなたのような若手が育っていたのか、と。
ショートプログラムでの生き生きとした演技は、新しい時代の幕開けを感じさせました。
そしてその後にあなたが言った「楽しまなきゃ損」というコメント。
ちょっと怖いもの知らずとも思えるその言葉は、10代ならではの天真爛漫さであり、自分への言い聞かせであったのかもしれません。
フリーのときのあなたは、少し緊張しているように見えました。
でもあなたは、その緊張を演技への集中力に変えました。
これからあなたはどこまで伸びるのでしょうか。楽しみでなりません。
鍵山優真さん、初めてのオリンピックで銀メダル、見事でした。
本当におめでとう。
◆宇野昌磨選手へ
平昌オリンピックのあと、あなたが超未熟児として生まれていたことを知りました。
あなたが生後しばらく入っていたNICUの同窓会に、銀メダルを獲ったあとに送ったという電報をネットで読んだことがあります。
そこには、確か「小さく生まれた自分でもアスリートになることができた」と書いてあったように記憶しています。
銀メダリストのその言葉は、未熟児として生まれた子どもたちやその親御さんたちをどれだけ勇気づけたことでしょう。
平昌のときは天然系の発言が話題になったりもしましたが、今回のオリンピックでのあなたは、本当に大人っぽくなりましたね。
その落ち着きが、演技への自信にもつながっていたように見えました。
宇野昌磨さん、フリーでのあなたらしいアレンジのボレロ、素敵でした。
素晴らしい銅メダル、おめでとう。
そして
◆羽生結弦選手へ
私のうちでとっている新聞の、今日の朝刊の1面トップはあなたの記事でした。
メダリストではなく、4位のあなたの写真が1番大きく載っていました。
それが、昨日のあなたの演技を見た私たちの思いなのです。
思わぬハプニングに見舞われました。
体調も万全ではなかったのかもしれません。
悔しかったでしょう。
でも、あなたは滑りきりました。
あなたが選んだ楽曲のとおり、ときには天高く舞い、ときには地にエッジを深く刻み込ませました。
生きている人間には到底飛べないとまで言われた4回転半なのに、飛べることを全世界に証明しました。
あなたと同じ時代に生きてあなたの演技が見られたことが、なによりの幸せです。
あなたが私たちの国の代表選手であることが、誇りです。
羽生結弦さんへ。
4位入賞おめでとう。
そして、ありがとう。