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B級邦画のような夜を過ごした

新宿の近くで就活生向けの企業が開催するセミナーがあった。
昨日の失恋が、実際に自分の身に起こった現実として受け入れられないまま、適当にメイクをし着替え向かった。電車ではいつものように読書をし、思考をコントロールした。(思い出さないように)
ただ、セミナー中「はい、泣いてください」と言われたらいつでも泣けるような精神状態だった。何とかそのセミナーを終え、その後に座談会のようなものでお酒を出してくれる機会があった。人事の方からの印象なんて気にせずにハイボールと酎ハイを飲んだ。空腹にアルコール度数7%は、少しフラッときた。やらかしやらかし…。
セミナーで会った友達と就活の情報交換をし、新宿駅で別れた。人で溢れていた。
真面目に最寄駅に向けて電車を乗り換える気にはなれず、新宿駅の東口を出て傘をさしながら歩いた。傘で顔が隠れてるのをいいことに、ボロボロ涙がでてきて顔がぐちゃぐちゃになった。街はうざいほど明るく、「私失恋したんだー」という実感が湧いてきた。
Googleマップを開き、適当に下北沢を目的地にして私は歩くことにした。慣れない先の尖ったパンプスのヒールの音と、ワイヤレスイヤホンから聞こえる3houseの
「WHERE IS LOVE」

なぜ失う前に気づけないのだろう

この歌詞をそっくりそのまま彼に投げつけてやりたい。

あんなに好きだったのに、一方的に別れを告げてきて、もう本当に悲しかった。どうしようもない感情で泣きながら歩き続けた。

新宿を離れると、だんだん住宅街が近づいてきた。知らない誰かが生活をする家と家の間を、泣きながら歩いていた。泣き始めてから1時間くらい経っただろうか…。

こんなことを思い出した。
新宿で彼と飲んだ後、シーシャを吸い、
下北沢ではお揃いの古着を買った。

出発と目的地に思い出があるの酷だな〜とか思いながら自分ともごもご会話しながらひたすら歩き続けた。

バケツ2個分ぐらい涙でた。いっぱい泣くと涙は出そうとしても枯れて出ず、涙の材料が足りなくて喉が渇くのだと知った。
そして自分の「生」をじわじわと感じた。

気づくと雨は止んでいた。路面が街灯に照らされてキラキラ光っていた。

下北沢に1時間半かけて辿り着き、ちょっと治安悪そうな道を泣き顔で通ってみたりして放浪した。
バーで酔っ払いが下手な演歌を歌っているのとか、温泉のシャンプーの香りがする怪しい通りを目にするのは初めてだった。

自分の知らない世界で、知らない人がとても輝いて見えた。

俺流塩ラーメンを食べ、異常なほど水を飲んだ(これも、彼と映画でーとの帰りに見た思い出のラーメン)

そっか、彼じゃなくてもう元彼だよな。心の中でもう名前を呼ぶことも無くなる。普段運動しない系の女子大生なので、歩きすぎたせいで疲れて眠くなってきた。このまま全部忘れちゃいたいな、

自分の足で、家まで帰る。これができたら、今日はもうこれでいい。

帰ってパンプスを脱ぐと、左足のストッキングに血が染みていた。

その血を、なぜか愛おしく感じた。

母に「どうしたの、そんなにどこ歩いてたの」と言われ今日歩いた道のりや、すれ違った地雷系カップルのことを頭に思い浮かべながら、今日私が主演で演じた邦画のタイトルを考えていた。


自分の知らない色をした夜を過ごした。

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