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Summer Sonicと一つの時代の終焉について

サマーソニックの二日目に参加した。PinkPantheressの不参加は非常に残念だが、終わってみれば例年以上に楽しめた。唯一例年と違ったことは、「今年は○○を見た!」というようなこの瞬間でしか味わえない何か、とんでもないものを目撃したという突出したものが無かったかもしれないということだ。裏を返せば何もかも素晴らしかったのだが、サマソニの歴史でいう03年のレディオヘッドの様な音楽ファンの共通項に成り得そうなものは無かったのではないかという感覚があった。自分が見た中でも、Chr

    • 2月に東京ドームに立ったテイラー・スウィフトとオードリーの狭間で

      はじめに 2024年2月、東京ドームで二つのライブ/イベントに行った。『 The Eras Tour』と『オードリーANN in 東京ドーム』である。前者は世界一の興行収入になる見込みとなり、国家が動くほどの歴史的ツアー、後者はラジオのイベントとしては前人未到のスケールであり15周年を銘打ったが故のイベントだった。同じ場所で開催されたというだけでなく、この二つは共通点もあった。それは余りにもハイコンテクストだったことである。前者はアルバム一枚or代表曲を数曲知っている程だと

      • 2023年の映画についての覚書

        まとめ ストリーミングでは映画とドラマが分け隔てなく並ぶのは当たり前になって久しいが、Sight&SoundのThe Greatest Film of All Timが2022年に更新され、シャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』が一位に更新されたことに象徴されるように、映画でしか出来ない事が明確になってきたと感じた。映像が始まってから何を連続させ、何を断絶するか。例えば海外では高い評価を受けたマーティン・スコセッシ監

        • The 1975の来日公演を観て感じた、興奮と表裏

          去る4月24日、東京ガーデンシアターで行われたThe 1975のライブに行ってきた。感想を先に書いてしまうととても良かった。『Stop Making Sense』を彷彿とさせるステージ・セットとVoマシュー・ヒーリーの弾き語りからメンバーが出てくる冒頭。と同時に「A Theatrical Performance Of An Intimate Moment(=親密な瞬間の劇場的なパフォーマンス)」の略である「atpoaim」の文字がスクリーンに映されたことが象徴的だが、システマ

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        Summer Sonicと一つの時代の終焉について

          『There Will Be Blood』はなぜ傑作とされているのか?

           2000年代ってなんだったんだろうと考えることがある。例えば音楽では、J Dillaのようなオングリットでは無いビートの揺れやダブステップの様な新しいビートはあったものの、印象に残るのは、ロックンロールリバイバル、ポストパンクリバイバル、アメリカーナ、00年代後半におけるトーキングヘッズの再解釈したインディバンド群だったような気がする。勿論カニエ・ウェストというとてつもない才能が生まれたディケイドでもあるのは承知していますが2010年の『MBDTF』と13年の『Yeezus

          『There Will Be Blood』はなぜ傑作とされているのか?

          Asian Kung-Fu Generationの映像作品集8のリリースから10年に寄せて

           本作は2012年に行われたツアー 「Tour 2012 ランドマーク」における東京国際フォーラムの公演を収めた作品である。DVD/Blu-rayとしてリリースされたのは2013年3月13日。今年で10年になる。MCの中で語られるように東日本大震災によりツアーも流れ、ミュージシャンが多大な電力を使ってライブすること自体不謹慎だというムードが日本を覆っていた時代。そして後に語られるように、バンド内の人間関係も危うく緊張感を孕んでいた時期。前作『マジックディスク』で外部からミュー

          Asian Kung-Fu Generationの映像作品集8のリリースから10年に寄せて