ミシア 垣根を越えて 2025年5月11日 午後2時半開演 つくばノバ小ホール
「ベルエポックの女王」と呼ばれていたミシアは、従来の常識にとらわれない審美眼を持っていました。ミシアの理解と支援もあり、当時、前衛と呼ばれていた音楽家、画家、文学者たちは、ジャンルを越えて互いに切磋琢磨しながら、新たな芸術に向かってゆきました。
展示サロンにて、同時代の画家たちによって描かれた数多くの「ミシアの肖像」もお楽しみください。かしこまった肖像画ではなく、ピアノを弾いたり、庭園でくつろいだりする普段のミシアの姿を垣間見ることができます。
ナタンソン時代からミシアは、印象派だけでなくナビ派の画家たちも支援しました。
今回演奏するモーリス・ラヴェル(1875-1937)の歌曲集『博物誌』(1906年作曲)も、ミシアとの交流から生まれた作品です。ジュール・ルナール(1864-1910)著の『博物誌』Histoires naturellesから、5つの鳥や昆虫の様子を音楽で表現しています。韻文ではなく散文に作曲した画期的な作品でした。
このように、ミシアが支援していた画家たちも、ルナールの『博物誌』に次々と挿絵を描きました。今回は、ボナールの挿絵と共に演奏いたします。
ラヴェルは1908-1910年に、ミシアの姪と甥の為に、連弾曲『マ・メール・ロワ』Ma Mère l'Oyeも作曲し、ミシアと家族ぐるみの交流が続きます。
セール時代のミシアは、セルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)率いるロシアバレエ団の為に奔走します。当時はまだ単なる婦人服仕立て屋だったココ・シャネル(1883-1971)とも親しく交流し、シャネルはロシアバレエ団の衣装も担当してデザイナーとして活躍の場を広げてゆきます。ミシアの「常識の垣根越え」は生涯続いてゆきます。
朗読・絵画・レクチャーを交えながらの異分野を融合したコンサートで、ミシアの「新しい芸術への感性」を感じていただけましたら嬉しいです。
フランス音楽研究会 文責:阿部理香
参考文献:「ミシア」1985年出版
アーサー・ゴールド/ ロバート・フィッツデイル著
鈴木主税訳 草思社
"Misia, reine de Paris "展( 於 オルセー美術館)カタログ 2012年出版
Gallimard社