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愛着の理論と対応-子どもの現場から学ぶ-

愛着とは特定の人と人の間に形成される、時間や空間を超えて持続する心理的な結びつきをさす。本来、人生の早期において形成されるべき愛着は特定の養育者による養育行動と、それに応答する乳児の相互作用によって形成されるが、様々な理由によって特定の養育者と安定的に関係性を築けぬまま生育する子どもたちが世界には一定数存在する。

そうした児童養護の現場で第一線に立ち続けてきた心理職・樋口亜瑞佐(ひぐち・あずさ)先生が本研修会の講師である。

本研修会は、大きく3つのテーマで構成をされている。

「1. 愛着とは何か」
「2. トラウマケースの愛着」
「3. 援助者として持つべき視点」

このテーマに沿って本研修会では、理論を基礎としたうえで、実際の現場においてどのように対応をしていくのか、また切れ目のない連続した支援につなげていくための多職種連携のエッセンスを学ぶことを目的としている。

研修会に先駆け、設定された3つのテーマに基づき、講師から当日どのようなお話が伺えるのだろうか。
その一部をこのnoteでは皆様にお伝えしたい。

テーマ1:『愛着とは何か』

愛着は、BowlbyやAinsworthをはじめとし、名だたる臨床家が数多くの定義を残している。講師の樋口先生の言葉で、愛着とは何かをお伺いすると、

自身の言葉で語るならば、愛着とはつながること。家族に『つながる』という言葉を敢えて用いることはあまりしない。 敢えて用いるのは社会的養護での業務が長かったせいかもしれないんですけど。
それに、「(人と)つながる」ことが出来ると、その次の段階として、「抱える」あるいは「支える」と育っていくことができるのでは』。
クライエントとセラピストとがつながりを持てていないうちは 、セラピストはクライエントを支えることは難しい。本研修会の話はまず「つながる」をテーマに開始される。

テーマ2「トラウマケースの愛着」について

そもそもトラウマを抱えた子供たちははじめて出会った人に相対する際、どのような反応を示すのか。この質問に対して先生からは、実際に出会われてきた現場でのお話が語られた。

『(前略)愛着的ないい関係を恒常的に結んだことがないという子どもたちは、出会ったそばから私に抱きしめてほしがったりとか、初対面の私の膝の上に乗って私を抱きしめたりするんです。この事にはじめ、私は強烈な違和感を覚えました。
でも、彼らはそういう風にしがみつくか、逆に突き放して遠ざかって行って振り返って相手がそれでも自分の事を見るか試してみるというパターンが多い。でも、愛着に伸びしろがあるんだとしたら、支え手である周りの環境がその伸びしろをうまく引きのばしたり、支えたりすることができるはず。そういう意味で彼らに責めはないのです。
ただ残念ながら、そういう機会がうまく機能しなかったり、もともと支え手に出会えるような環境に無かったりしてきた人たちは、それを一生懸命人生をかけて探すし、愛着を結べそうな人が出てくると、今度は『そんなものを結べる人なんているはずがない』というおぞましさみたいなものがあるので、それ故に、「そんなものはあるはずはない」といったような強烈な突き放しをするんですね(後略)。


テーマ3:子どもたちの反応に対して我々支援職が持つべき視点とは何か

これが本研修会の最後のテーマである。問いに対する、講師である樋口先生のお答えはとてもシンプルだ。

『こうした子どもたちを沢山を見ていて、まずどうほぐしていくのかという事を考える。
愛着を結ぶというよりも『世の中は安全で安心だよ』という事を伝えることが大事。社会的養護はよく安全安心といいますが、そこをまず伝える。フレームを伝える感じでしょうか。愛着を結ぶというのは、実はセカンドステージなんだろうなと思っています。
(中略) そして、子どもたちを支援する際は、まず自分事として、何が起きているのかということをしっかり考えていくというところが大事。具体的には、支援者である自分はどういうことに困っていて、じゃあ子供に対してどういうことを望んでいて、そして、その望んでることに対して、目の前にいる子どもがもしかしたら生得的に応えられない何らかの色んなアンバランスを持っているかもしれないですけど、はじめにそのアンバランスに着目するよりも、自分はいったい子どもとやり取りをする中でどうしたいのか、どうすべきっていうことから考えていくという視点ですね。』

支援が上手くいかないとき、その問題を相手に求めるのではなく、まずは自身を見つめる。
それは言うは易く、行うは難しい。
そこには支援職である自身への厳しさが垣間見える。


児童養護の領域で働く心理臨床家が語る仕事への信念

インタビューの終わりに、先生に心理臨床家として自身が支援する上で心掛けてみることを伺ってみたところ、先生は熟考された上でこんな答えを返された。

大事にしていることは・・・「逃げない」
それも心理臨床家だからできるのかもしれません。私たちにはやっぱり枠がきっちりあって、そういうところでどう対峙していけるのか。どうそこでサバイブするか。ものすごくサバイブしている人を相手に、それに寄り添うことってむちゃくちゃ痛みを伴うんです。私はすごく痛いし逃げたいけど、一番痛くて逃げたい人はクライエントだから、私は絶対逃げない。ということは心掛けたつもりでいます。もうね、痛いですよ。血まみれですよね(笑)。そういう象徴的に痛みを感じたり、それこそ象徴的に血を流していくっていうことが時に必要なのだろうと思うし、恩師にも言われたんですよね。「象徴的に共に死ぬ」という事をできることがあなたが出会う子らに必要だってことを言われて。まぁ、当時はもう嵐の真ん中に居たので何を言われてるのかよくわからなかったのですが、今は何かわかる気がします。』

足掛け20年という長い時間を第一線で逃げずに支援をし続けた心理臨床家。
そして、現場に長年居続けたからこそ、その臨床知から編み出された理論がある。『心理臨床の中で編み出されたさまざまな理論はすべて現場に還元される』。そう信じて樋口先生はこれほど大切にしてこられた現場の仕事から、大学で教鞭をとる仕事にフィールドを少し移されているのだろう。

そうしたことを実践としてやってこられた心理臨床家から学ぶ理論と実践の具体的な方法を学ぶことを目的とした本研修会。

ぜひ多くの方のご参加をお待ちしている。


【研修会詳細】
2021/4/28(水・祝)20時-22時(録画視聴期間 4/30~5/28迄の1ヶ月)
当日参加/録画視聴 3500円
※両方 6000円 +PDF配布 500円
※ご友人紹介チケット500円引き(両名とも)

対象:臨床心理士・公認心理師など心理業務従事者及び学生
場所:zoom 申込締切:4/21(水)23:59

申込みはコチラ

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