見出し画像

🟨 日本人の9割が知らないタイ飯④ 〜王様のカオクルックカピ〜 🟨


芳香な磯の香りカオクルックカピ

Supanniga Eating Room

カオクルックカピって屋台やフードコートから高級タイレストランでも見かける人気メニュー。カオパット(チャーハン)のように見えるけど油で炒めずに作る混ぜご飯。だからさっぱりしてて食べやすい。

もちろん辛くないし、カピ(エビ味噌)の香りが芳醇で食欲を掻き立てる。海産物に馴染みのある日本人の味覚に間違いなくマッチするメニューなはず。

持ち帰り専用のカオクルックカピ

カオクルックカピはタイ語でข้าวคลุกกะปิ。意味はカオข้าว(飯)+クルックคลุก(混ぜる)+カピกะปิ(エビ味噌)。直訳すれば「エビ味噌混ぜご飯」となり、炊いたご飯にカピを混ぜた「カピご飯」のことを指す。

クルックについてはトムヤム(ต้มยำ)のヤムとどう違うのかわからない人もいると思うので、ガップカーオ氏のnoteがわかりやすく説明してる。


カオクルックカピってどんなの

カオクルックカピのご飯

そしてこのカピご飯の上に更にトッピングをいろいろ載せてカオクルックカピが完成する。トッピングの内容は豚肉の甘煮、クンチアン(中国ソーセージ)の肉類と野菜、薬味、錦糸卵が一般的。

トッピング例①
トッピング例②
トッピング例③

そしてこのトッピングとご飯をまずは容赦なく混ぜる(クルック)。調理だけじゃなく食べる前にも混ぜるのが必須。まあまあ韓国料理のビビンバみたいなもん。

混ぜる前(左) 混ぜた後(右)

カオクルップカピの伝統的なレシピによると、炊いたご飯にバナナの葉で包んだカピを炭火で炙って混ぜ込んでいる。この連載の最初の回で書いたような炒める、揚げるといった中国由来の調理法とは無縁。

現代ではトッピングに豚の甘煮や中国ソーセージを使うことが多いけど、豚肉は中国由来の食材だから使ってなかったはず。

つまり、前回のカノムチンと同様、古代からある土着の「ルーツ系タイ料理=ジャングルフード」だったわけで、パッタイやパッガパオやクイティアオみたいな新興の「中国系タイ料理」よりずっと歴史があるメニューってこと。


カオクルップカピの歴史

このメニューはカピが使われる以前は炊いたご飯にナマズの塩焼きを混ぜ込んだものだったらしい。日本にも焼きサバや塩ジャケの混ぜご飯なんておにぎりにしたくなるメニューがあるし。個人的には鮎の塩焼きをご飯に混ぜ込んだ鮎ご飯が好きだけど。

それがなぜナマズの塩焼きからカピに変わったのか。それはタイにカピがもたらされてからの話。カピは保存性が高いから、ナマズみたいにいちいち焼かないで済むし、カピとご飯さえあればいつでも作れるからって理由だったんじゃないかと思う。そんなレシピなので元々は一般家庭で作られてきたようで、いつから食べられてきたかという明確な資料はない。

カオクルップカピについて検索してて多くヒットするのがラマ5世(チュラロンコン大王)にまつわるエピソード。それは、1907年にラマ5世がヨーロッパ訪問の途中、船の中で出される食事に飽きて以下のように語ったとされる。

「おばあちゃんがカオクルックカピを作ってくれる夢を見ました。とてもおいしかったです。カオクルックカピが食べたくなりました。カピと他の材料を用意しておいて、明日起きたら自分で混ぜます...」

これを読んだ時、「日本帰ったら真っ先にTKG食うぞ!」みたいなホームシック話しかとも思ったけど、ラマ5世がタイ(料理)を愛してたエピソードとして伝わってる。さらにカオクルックカピが当時の庶民の間にいかに広まってたか、いかに愛されてたかがわかる。

残念ながら当時のレシピは見つからなかったのでラマ5世が食べたカオクルックカピが現代のとどう違うのかはわからない。少なくともカピをまぶしたご飯がベースだったことは間違いないと思う。


カピってなに?

ウィキペディアによるとカピとは小エビやオキアミを塩漬け、発行させた調味料で、中国南部、東南アジア全域で同じような調味料が使われてる。タイにもいろんな種類のカピがあるけどほとんどはアンダマン海のオキアミを使ったもの()。こう考えると、どうやら海沿いの地方で使われてきた調味料って印象。

真ん中のセメント色の玉がカピ

ちなみに、カピ自体は塩とオキアミだけで作ってある調味料なので辛くはない。ただ塩辛いだけ。イカの塩辛の臭いが大丈夫人なら絶対問題なく食べられる。わが家では冷蔵庫に常備してあって「天然のうま味調味料」として活躍中。熱々の日本米に混ぜてもイケるし、納豆に混ぜたら絶品。

実際に市場などで売ってるカピの画像は以下のような感じ。けっこう水分少なめの味噌のような状態で、見た目も大昔の日本の店頭で量り売りにしてた味噌にソックリ。値札に書いてあるタイ語は産地。コチャーン3種類、ラヨーン1種類って感じで、大体のお店でもカピの産地はタイ南部がほとんど。ちなみに、お値段は見た通りキロ50฿から90฿程度でおコメと同じくらい。

クロントイ市場のカピ屋

ちなみに、カピの名称はそれぞれの国や地域で呼び名が変わるけど、タイのカピの語源はビルマ語で「発酵した魚」を意味するンガピ ( ငါးပိ )に由来する()。

じゃあカピっていつからあるんだろって思って調べると、その歴史はスコータイ時代(18-19世紀)まで遡る。ラームカムヘーン大王以前に南部のパッタニーから持ち込まれた()。ようするに、スコータイ朝が現在のタイ南部を征服した頃、ナコンシータマラートあたりまで領土を広げたときに簒奪してきたらしい。


そんなこんなで90฿/キロのカピを買ってきてご飯に混ぜたりスパゲティに和えたりしてみたけど、これは使える。わが家においてはナンプラー導入以来の大発見だった。


カオクルックカピのいろいろ

🔶レストランのカオクルックカピ

タイ版ファミレスの「カオクルックカピ」。さすがレストラン熱々の状態で提供される。見た目は食堂やフードコートのとあまり変わらない。トッピングの切り方がややオシャレだけどお値段165฿と約3倍。トップ画像は高級店のカオクルックカピで220฿。

SEE FAH

🔶ハラル飯屋のカオクルックカピ

ハラルフードのお店でもカオクルックカピはある。トッピングのクンチアン(中国ソーセージ)が豚肉じゃなく鶏肉になってる。カピ自体がタイ南部産が多いこともあってハラル飯屋で提供することも多い。

ร้านหนังสืออิสลามชะฮาดะห์

🔶フードコートのカオクルックカピ

普通のフードコートで提供するカオクルックカピ。トッピングも盛りつけも王道のような正統派。

タラート・ルアムサップ

チャンネル登録よろしくおねがいします

いいなと思ったら応援しよう!