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🟨 続・日本人の9割が知らないタイ飯 ①〜タイ式お子様ランチ 前編〜 🟨


タイ式お子様ランチ?

街飯ってタイトルで謳っておきながら屋台じゃまず見かけないメニューからスタートするのもアレだけど、初回はタイのお子様ランチことカオパットアメリカン。

と言うのも以前から気になってたお店があって、そこにカオパットアメリカンがあったので食べてみた。そしたら改めてこの不思議なメニューのことが気になってしまったから。


そのお店はシーナカリン通り沿いのショッピングセンターParadise Park内のSeri Marketにある。最近のフードコートっぽくないクラシックな雰囲気は独特。その片隅の1段高くなったコピティアム(コーヒーショップ)みたいな一角はフードコートを見渡せて、昔あったディスコ「ジュリアナ」のVIPルームみたいな感じの特等席。

Seri Marketのフードコート

店名は『カントン(ร้านก้านตอง)』。ここが大丸デパートだった頃からあるお店でおじいちゃんとおばあちゃんの夫婦2人で切り盛りしてる。

『カントン ร้านก้านตอง』

メニューは日本の洋食にちょっと近い感じのいわゆる中国式洋食が並ぶ。定番のポークチョップや牛タンシチューや魚のムニエルや各種スパゲティなどなど。この中にカオパットアメリカンもあった。

カントンのメニューはオールタイ語
カオパットアメリカンもあった

こういうメニューは戦後から80年代に流行って今や絶滅危惧種の「クックショップ(กุ๊กช็อป)」と呼ばれる中国式洋食業態にありがちなラインアップ。クックショップは海南系中国人が経営するお店が多いけどこのお店の店名がなぜ広東(カントン=ก้านตอง)なのかは不明。

伝説のクックショップSilom Restaurantの名物メニューポークチョップ

ここで久しぶりにカオパットアメリカンをオーダーした。ケチャップライスにレーズン、ミックスベジタブル、付け合わせはソーセージ、フライドチキン、目玉焼きの定番アイテムが並ぶ。

アイテム
-ケチャップライス
(ミックスベジタブル、レーズン入り)
-半熟目玉焼き
-フライドチキン(ドラムスティック)
-ソーセージ(カニさんカット)
-カニカマ
-野菜(フルーツサラダ)

オーソドックスなレシピと違うポイントとしてはレーズン、ミックスベジタブルが混ぜ合わせてない、カニカマフライが増えてることと、グレープ、リンゴなどフルーツが大量に混ざったサラダ。このサラダがさっぱりしてていい感じに口直しになった。そしてお約束の半熟卵トローリ。ただフライドチキンがパサついてたのが少し残念。


タイ式お子様ランチ?

カオパットアメリカン(ข้าวผัดอเมริกัน)の意味はいちいち解説する必要もなくアメリカ風カオパット(チャーハン)。英語だとAmerican Fried Rice。ただしアメリカ発祥なわけじゃないタイにしかないメニュー。

レーズン入りケチャップライスにフライドチキンとソーセージ(あるいはハム)と目玉焼きが並ぶのが定番のどう見てもタイ料理っぽくない見た目。多くの日本人は昔デパートの食堂にあったお子様ランチを思い出すはず。

Wikipediaより

昔タイ料理に慣れなかった頃、普通のタムサン食堂とか入ってよくオーダーしてたのがコレ。食べやすくてなんとなく懐かしい味がしてコレばっか食べてた。ある意味個人的な意味でタイのソウルフード。

お子様ランチって書いてみたけど、アメリカと関係ないのにカオパットアメリカンってところがナポリと関係ないのにナポリタンスパゲティとなんか似たもの同士みたいだ。ケチャップ味で子供に人気ってとこも共通してる。


カオパットアメリカンの起源

カオパットアメリカンについて調べようとしたら日本語版Wikipediaに載っててちょっとビックリ。日本のタイ料理屋じゃ見かけないと思うけど。

タイ語版Wikipediaによるとカオパットアメリカンの起源は諸説あって以下の3つの説が有力。

①空港レストラン説
1950年代ドンムアン空港のレストランである航空会社が朝食と昼食を注文したが、フライトをキャンセルした。これにより、目玉焼きやソーセージなどのアメリカンブレクファスト用の調理済みアイテムが大量に余った。その時マネージャーがその材料を使いカオパットを作って提供した。

②米軍基地レストラン説
1957年から1975年のベトナム戦争中、タイにまだ米軍基地があった時代に、ナコンラチャシーマ県に駐留するアメリカ兵に提供するためにイサーン人の「ゴー・ジェク」というシェフによって考案された。このメニューは非常に人気があったため、全国に広まった。

③メキシカンライス由来説
1910年に米をトマトで炊き込むメキシカンライスのレシピがアメリカの新聞に掲載された。当初ソーセージに添えられて提供されてたがその後目玉焼き、フライドチキン、ベーコンなどと組み合わされるようになった。これが冷戦時代米軍によってタイに持ち込まれた。

いずれの説でもカオパットアメリカンの起源はそれほど昔のことではなく70-80年前くらいに登場したメニュー。これはベトナム戦争時代膨大な数のアメリカ兵をタイに送り込んだからこそ生まれたメニューじゃないかと思う。


後編では実食レポート

こんな経緯で生まれたカオパットアメリカンは土着の「ルーツ系タイ料理=ジャングルフード」ではない。カオパット(炒飯)という「中国系タイ料理」の調理法を取り入れてるけど中国料理にはないタイ独自のメニュー。

後編では実際どんなものかをいろんなお店に行って実食してみてた…をお届け。



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