天皇と備長炭
今回は皇室と備長炭に関するたんなるコラムです。
天皇は毎日なにを食べているのか?
宮内庁に備長炭を納品するという仕事を15年間続けてきましたが、今年3月に後任に譲りました。
納品は年に1度のことですが、倉庫で備長炭の箱を積み上げるたびになんとなく考えていたことがあります。
・私が天皇のために料理を作るなら、何を作るか?
・そもそも備長炭は何に使われているんだろう?
もし私が天皇の料理番に選ばれたら、メニューについてむちゃくちゃ考えて、むちゃくちゃ緊張すると思います。
それが料理番ともなると1日3回のことですからね。いったい毎日どんな食事をしてるんだろう。
『天皇の料理番』というドラマの存在も知っていたし、秋山徳蔵という料理番がいたことも知っていましたが、まったく調べずにそのまま眠らせてありました。
ところが先日たまたま見たYoutubeで、ずっと眠らせてあった疑問を思い出すことになったのです。
天皇の料理番が書いた本
きっかけになったのは、あのフレンチの巨匠三国清三さんのYoutube。
動画の中ではさらっとしか紹介していませんが、ひょっとしたら数年来の疑問への回答が書かれているかもしれない。
そう思って、三国さんと同じ『秋山徳蔵選集 第一巻・第二巻』バージョンを買って読んでみました。
秋山徳蔵さんは気が短くて有名だったそうですが、文章も短文で歯切れがよくテンポの良い文体です。
きっとカラッとした性格の方だったのでしょう。
内容は、
・天皇陛下の食事のエピソード
・コックの社会的地位
・日本の美味
・耳で食べる
・腹で切る
・秘食、ゲテモノ
・器、包丁
・料理のコツ五則
・味が出る塩
などなど盛りだくさん。
面白そうですよね。長くなりますが、秋山さんの世界観が伝わると思いますので第一巻から少し抜粋してみます。
どうですかね?
私は仕事相手が料理人さんなので、料理人さんの本も多く読むようにしていますがかなり面白い部類に入ります。
天皇と備長炭
ところでもう一つの疑問。
そもそも納品した備長炭はいったい何に使われているのか?
海苔の乾燥?
だとしてもこんなに量を使わないだろう
うなぎのかば焼き?
そんなにしょっちゅう焼くわけではないだろう
焼肉?
天皇や皇室の方が焼肉を食べている姿が想像できない
焼鳥?
これまた天皇が串をほおばっている姿が想像できない
焼魚?
これは一番ありえそうだ、日常的に魚なら焼いているだろう
和菓子?
和菓子用の豆類を炊く時に使っているのか?ありえる!
ということで、宮内庁の木炭倉庫の管理をする方に「この備長炭や木炭はいったいなにに使われているのか?」聞いてみたことがあります。
担当の方もはっきりはわからないようですが、「主に春秋の園遊会で使用されるようですが、日常でも少し使われるようです」
「近年は海外の御来賓はなくなり開催されていませんが・・・」
言葉は正確ではありませんが、そのような趣旨のお答えをいただきました。
考えてみれば、備長炭はきっと江戸時代から将軍家や今でいう皇室に代々納められてきたのでしょう。
製炭は世界に誇る日本の伝統文化ですから、宮内庁にもずっと使い続けていただきたいですよね。
和食係を務めた谷部金次郎さんの本も読んでみようかな、と考えながら今回は以上にします。
また来週、よろしくお願いします!
今回の参考文献
秋山徳蔵さんの4部作は、文庫版も出ています。↓
Writer:
ホンダタロウ/炭火研究家 @HIROBIN
ふだんは備長木炭の生産→流通→消費のうち、
「流通」を担っています。
世界の伝統文化、アート、JAZZが好きです。
Instagram:@hirobin___taro.honda___
twitter:@sumibinogakkou