3-1-3 爆跳の3要素 ー誘因と対策ー
今回は備長炭の「爆跳の3要素」の最後、「誘因」について解説します。
備長炭の爆跳は、誘因つまり「急加熱」に気を付けるだけでなくすことができます。
ぜひ最後まで読んでください。
1.爆跳の原因 ≒「急加熱」
備長炭は高温で加熱したらダメ
備長炭は着火が大変。
だから早く着火させようとして、どうしても熱源の火力を上げたくなるんですよね。
気持ちはわかります。
ただ、フライパンや鍋などの金属であればガス火の強い火力を受け止められますが、備長炭はそうはいきません。
金属の調理器具と違って、水分やガス分を含んでいるからです。
ガス火で着火させる場合は「そもそも高温であるガス火は備長炭の着火には強すぎる」と心がけてください。
とにかくゆっくり着火させれば爆跳はしません。
爆跳の原因は3つに分類できることを解説してきましたが、現実的にはほとんどの場合この誘因「急加熱」が原因です。
「いつもと同じように着火しているのにハネた」
これも頻繁に聞く意見ですが、「いつもと同じように」してはダメです。
備長炭は自然のものなので、原木の段階から同じ状態のものは2つとありません。
製炭後も備長炭1本づつ水分、ガス分の含有状態が違います。
他の食材だって個体ごとに状態が違うので、状態に合わせて微調整して調理しているはずです。
備長炭も同じように音や見た目で状態を見極めて着火させなければいけません。
だから「いつもと同じように」ではダメなんです。
2.なにが「急」かは、産地や炭の大きさによる
「急加熱はダメ」とか「ゆっくり着火」といっても、何が「急」なのか、どのくらいの火力が「ゆっくり」と言えるのかは炭しだいです。
例えば、あの産地の備長炭はゆっくり着火しないとダメだなとか、あの産地のは高火力で着火させても大丈夫だなとか。
また、同じ火力でも、炭が「大きければ」急加熱にはならないし、炭が「小さければ」急加熱になってしまいます。
これから使っていきたい、またはいま使っている産地の備長炭の特性を事前に理解して着火することはなによりも大事です。
3.「着火は逆三角」のイメージで
備長炭の着火には逆三角のイメージが大切
着火熱源としては燃焼温度がガス火より低い炭火が理想ですが、ガス火で着火させる場合はイメージが大切です。
とくに備長炭を使いはじめたばかりのうちは下の図のような「熱源と備長炭の関係が逆三角になっているか」をイメージして着火するとうまくいきやすいです。
早く着火させようとしてガスの火力を強めるのは逆効果です。
確かにそれでもハネないことはありますが、ほとんどの場合ハネると思っていた方が良いです。
弱くて小さな熱源でも「熱が逃げてなければ」着火できる
「熱源の火力が弱いと備長炭に着火できないのではないか?」と思われるかもしれません。
そんなことはありません。
仮にそうだとしたら、熱源の火力が足りないのではなくて①熱源で発生した熱が備長炭に届く前に逃げているか、②備長炭に伝わったあとに逃げていることが原因です。
「熱が逃げていないか?」、逆を言えば「熱は貯まっているか?」、これに気を付けるだけで弱い熱源でも備長炭に着火させることは可能です。
いちど三要素を理解して着火の原理をマスターしてしまえば、ハネさせる方が難しくなります。
いちど自転車に乗れるようになると、転ぶことのほうがむずかしい。
そんな感覚です。
■【備長炭初心者へのエール】
■ 爆跳シリーズのまとめ
※爆跳シリーズをまとめたマガジンはこちらから ↓
主な参考文献:
①『爆跳性木炭について』高橋憲三 国立国会図書館デジタルコレクション
②業界紙『木炭』全国木炭協会 1959年3月〜5月号
③『白炭の爆跳防止に関する研究』高知大学 小沢 一郎・吉川 正訓
④『木炭の博物誌』 岸本定吉 総合科学出版
⑤『木のひみつ』 京都大学木質科学研究所 東京書籍
Writer:
ホンダタロウ/炭火研究家 @HIROBIN
ふだんは備長木炭の生産→流通→消費のうち、
「流通」を担っています。
世界の伝統文化・アート・JAZZが好きです。
Instagram:@hirobin___taro.honda___
twitter:@sumibinogakkou
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