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日本の木炭と世界の木炭を比較してみたら、
こんな疑問を持つ料理人さんに読んでほしい
・木炭って世界には何種類あるの?
・木炭って種類によってそんなに違うの?
・今後も木炭を使い続ける意味ってあるの?
今回お伝えしたいこと
・木炭の性質を理解している料理人さんには世界的な希少価値があること
こんなことが書いてあります
・世界の中でも、日本は炭種が別格に多い国
・「備長炭=良い炭」ではない
・木炭を使いこなせることが武器になる理由
日本にいるとあまり意識しませんが、世界と比較してみると日本の木炭ってかなり特殊です。
日本の木炭と世界の木炭を比較してみた結果、わかったことを書いてみたいと思います。
①日本は木炭大国である
今となってはほとんど認知されていませんが、日本は今も昔も木炭大国です。
かくゆう私もこの仕事を選んで炭火の研究をしていなければ、知ることはなかったと思います。
「森林のある国で木炭を焼かない国はない」
と言われます。つまり世界には木炭の種類が無数にあります。
世界の炭種 = 樹種(原料)・産地 × 製炭方法
= 無数
ただ、1つの国で日本ほどの炭種と品質を誇る国は世界広しとはいえ日本以外にはありません。
日本は炭種数とその品質でぶっちぎりの世界一です。
「炭の良し悪し」は使う目的や用途しだいになりますが、茶道で使用する「茶の湯炭」、飲食店が使用する「備長炭」の品質は世界の木炭の中でも明らかに異質の存在です。
また日本では一般ユーザーであっても、アウトドアやBBQで「レジャー炭から少し本格的なオガ炭まで」幅広くいろんな種類の木炭を使用します。
世界の国々ではそもそもこんなに多様な炭は生産されていませんし、特に一般の方が炭種を使い分けることはありません。
では「なぜ日本だけが木炭大国になったのか?」
は長くなりますので別の機会に書いてみたいと思います。
とにかく木炭に関しては、日本ははっきり言って異常なほどの種類があります。
↓ 余談ですが、堅い木炭は世界でもアジア地域にのみに集中しています。
②目的に合わせて炭種を選べる
日本にいれば目的に合わせて炭種を選ぶことができます。
これができるのは世界でも日本だけです。
炭種によって燃焼特性は大きく異なります
良い悪いではなく、燃焼特性が違うので目的や燃焼環境に合った炭を選べばよいと思います。
少し具体的に言うと、
・どんな食材を焼くのか(食材の厚み、含水量、含脂分、繊維質 etc)
・どんな焼き面に仕上げたいのか(しっとり、クリスピー、ガリガリ etc)
・どの程度熱を入れたいのか(表面のみ、中心まで、半生)
などの目的や使用する燃焼器に合わせて選ぶことができます。
また一般に備長炭が炭の中でも最良の炭というイメージがありますが、もし料理人が使うなら目的に合っていてはじめて良い炭だといえます。
フルーツナイフでマグロを解体する料理人はいませんが、炭ではこれと同じくらいおかしなことがおきます。
炭種の選択は料理人さんの仕上がりイメージ次第ですが一般的には、
・水分の多い食材 → 備長炭
・脂分の多い食材 → 備長炭
・香りを引き出したい → 備長炭
・焦げやすい食材 → 備長炭
・コストを下げたい → オガ炭
・長時間煮炊きしたい → オガ炭
・着火性を重視したい → 黒炭、BBQ炭
・表面をクリスピーに → 黒炭
・少し野性的な香りを → 黒炭
などなど。
世界でも日本だけが多くの炭種から選べることを、木炭大国の日本人であっても99.9%の人は知りません。
これは私たち木炭流通業者が情報制作を怠ったせいだと私は思います。
③木炭は武器になる
日本にいても、世界で挑戦するとしても、料理人さんが木炭のことをちゃんと理解していることは大きな武器になります。
ほとんどの料理人さんが木炭の性質を理解しているわけではなく、経験と勘だけで使用しているからです。
近年日本でも「薪火」が流行っていますが、欧米ではもともと薪火か柔らかい木炭が主流です。つまり見た目にも力強く、強力な熱源がほとんどです。
焼鳥・うなぎ・寿司・和食だけでなく、フレンチ・イタリアンなどの洋食であっても炭火を目的に合わせて使いこなせる料理人さん、特に備長炭に自信と誇りを持っている料理人さんは世界的にも希少価値があります。
炭火にしかできないことは多い。
しっかりとした炭火の知識と経験を一度身に着けてしまえば、一生使える武器になります。
そんなことを多くの料理人さんに広めていきたい。
今回のまとめ
✓ 日本は炭種数と品質で断トツの世界一
✓ 目的や燃焼環境に合わせて炭種を選ぼう
✓ 炭火の知識と経験には世界的な希少価値がある
ではまた来週、よろしくお願いします!
今回の参考文献
①『「木」から辿る人類史』ローランド・エノス NHK出版
②『木炭の博物誌』岸本定吉 総合科学出版
③『木炭の文化史』樋口清之 東出版
④『山に生きる人びと』宮本常一 河出文庫
Writer:
ホンダタロウ/炭火研究家 @HIROBIN
ふだんは備長木炭の生産→流通→消費のうち、
「流通」を担っています。
世界の伝統文化、アート、JAZZが好きです。
Instagram:@hirobin___taro.honda___
twitter:@sumibinogakkou
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