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審査員オファーを断り続けて気付いた「本当の謙虚さ」

僕はこれまで、デザインやアートの分野で審査員をはじめとする重責のオファーがあっても、ひたすら断り続けてきました。ところが、ある友人の何気ない一言がきっかけで、そんな自分の「謙虚さ」に対する考えが大きく覆されることになったんです。今回は、そのときに得た気づきや学びを皆さんと共有したいと思います。

「自分にはできない」と思い込んでいたワナ

そもそも僕が審査員などの役目を避けていたのは、「自分にはとても荷が重い」という強い先入観があったからです。周囲にはキャリアも豊富で才覚にあふれた人がたくさんいるのに、そんな場所に僕のような人間が参加するなんて場違いではないか。そう考えた結果、オファーを受け取るたびに「申し訳ないのですが」と断り続けてきました。

当時の僕は、それこそが正しい態度だと信じて疑いませんでした。自分の力不足を正直に認め、もっと適任な人にお任せするほうが依頼をした方にも、作品を評価される側にも良いだろう…そんなふうに思っていました。

友人のひと言で覆された先入観

ところが、ある友人と食事をしていたときのこと。最近お断りした審査員依頼の話をしたら、意外な反応が返ってきたんです。

「でも、依頼する側だって、よく調べた上で声をかけているんじゃないの? その判断を否定することにもなるんじゃないか」

言われてみれば、たしかにそうかもしれない。僕は自分なりに“謙虚に”断っていたつもりが、実は依頼してくれた方の評価や思いを軽んじていたのかもしれません。その瞬間、自分の行動がちょっと恥ずかしく感じられました。

異なる視点がもたらす発見

この友人の指摘を機に、自分の中で「自己評価」と「周囲の評価」が大きく食い違っていることを強く意識するようになりました。僕たちはどうしても、自分自身を厳しめに見る傾向があります。特に、プロとして常に高品質を求められる世界で仕事をしていると、なおさら「自分はまだまだだ」と思い込みがちなんですよね。

しかし、依頼をしてくれる側は、僕が気づいていない持ち味やアプローチにも魅力を感じている可能性があります。実績や肩書きだけを見ているわけではなく、作品づくりの姿勢や人柄、さらに独自の視点などを総合的に勘案してオファーしているはず。それを頭ごなしに否定してしまうと、せっかくのチャンスも無駄にしてしまいます。

適切な謙虚さと受け止める勇気

この出来事を通して、謙虚であることと、自分を過度に卑下することの違いを学びました。自分の限界をわきまえる謙虚さは大切です。でも、必要以上に「無理だ」と決めつけるのは、周囲が抱いてくれている期待を裏切ることになるかもしれません。

僕はそれ以来、オファーをいただいたときは、まず相手が期待している役割や背景をしっかりとヒアリングするようになりました。もちろん、すべてを安請け合いするわけではありません。むしろ、自分に足りない部分を率直に伝えたうえで、「こういう形なら貢献できるかも」と提案することも増えました。

僕たちは常に、自分の力不足を感じるものです。とはいえ、そこにばかり縛られていると、新しい成長の機会を逃してしまうことにもなります。ときには自分のコンフォートゾーンを飛び出して、未知の領域へ踏み込む勇気こそが、大きな学びや変化につながると実感しています。

審査員のオファーを断り続けていたころの僕は、単純に「謙虚であろう」としていただけ。でも、友人に言われたように、それが必ずしも“誠意ある態度”とは限らない。相手を尊重するなら、オファーに込められた意図を受け止め、一歩踏み出すのもまた一つの誠実さだと思います。もし、何か新しい役割を引き受けることに迷っている方がいたら、ぜひこの経験を参考にしてみていただけると嬉しいです。

この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

Original Article:審査員オファーを断ることを「謙虚」と誤解していた件


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トミナガハルキ|フリーランスの人
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