【絵本レビュー】 『たいへんなひるね』
作者/絵:さとうわきこ
出版社:福音館書店
発行日:1990年3月
『たいへんなひるね』のあらすじ:
4月だというのに雪が降っています。外に出てハンモックで昼寝をしようと思っていたばばばあちゃんは、雪雲を追い払う計画をたて、森の動物たちを呼び出しました。みんなに袋を配り、中に「もう春だよー」という大声を詰め込んでもらうと、大声でいっぱいの袋を花火にして、雷さんに空に打ち上げてもらいました。空に大声が広がると、あたたかい風が吹いてきて……。
『たいへんなひるね』を読んだ感想:
私の趣味の一つは昼寝です。自称「パークスリーパー」。そういうと、「ああ、スペインに住んでいたからでしょ」と言われますが、これはスペインに行く以前からです。ベッド、ソファ、ハンモック、電車、公園とどこでもできます。そう言うと今度は「日本人だもんね〜」と言われますが、それは一概に否定できないかもしれません。
ロンドンに行ってホストファミリーの家を出て一人暮らしをするようになった頃、まだ仕事がなかった私はかなり切り詰めた生活をしていました。友達もいなかったので、週末になると英語の勉強以外特にすることもなく、かと行って一日中家にこもっているのもと思って考えたのが、近くの公園へ行くことでした。そこならいつも人が周りにいてなんとなく賑やかだし、かつ公園からテムズ川も見えるという、一石二鳥のいい場所だったんです。
それからの私は、前の日に買っておいたバゲットの半分に卵3こで作ったチーズオムレツを挟んでアルミフォイルで包んで、途中で日曜版の新聞を買って公園に行くというのが日曜の習慣となりました。日曜版の新聞は普段のより分厚くて薄い雑誌が入っているんです。それには写真がいっぱい載っていてファッションのこと、新しい映画のこと、誰か有名な人のインタビューなど内容も盛りだくさんです。それらをサンドイッチを頬張りながらゆっくり読むのです。一通り読み終わると私は芝生にごろりと寝っ転がって、遠くから聞こえてくる子供達のサッカーをする声や、人々の話し声を聞きます。毎週少しずつ話している内容もわかるようになってきましたが、それでも色々な方角から聞こえてくる音はまるで蜂の羽音のようにも聞こえ、私はすぐうとうととし始めます。そしてもうその時には私は夢の中にいるのです。
そんなに長い時間寝ていたわけではなかったでしょう。15分くらいでしょうか。時には20分くらい寝たのかもしれません。また同じ羽音に誘われるように私は現実に戻ってきます。目を覚ますと新聞は広げたまま、靴も脱いだ時のまま、空も青いままと時間が経ったのか否かさえ気づかないようなゆったりとした空気が流れていました。私はまた丘の斜面に見える人々をのんびり眺めるのでした。
月曜に英語学校に行くと大抵聞かれたのは「週末何した?」で、ある時私が「公園で昼寝した」というととても驚かれました。私たちの先生は「カフェのテーブルに携帯を置きっぱなしにしない!」とか「バッグは常に身につけておくこと!」なんて口うるさく言っていた人なので、最初の一言は「危ないよ!置きたら持ち物が全部取られちゃってるかもしれないじゃない」でしたが、ロンドンの他の地域ではそういうこともあったのかもしれませんね。私がいたのは都市部からも離れた純住宅地だったので、人ものんびりしていたような気がします。先生には心配されるので言いませんでしたが、それからも公園での昼寝は私の週末のお気に入りの過ごし方となっていました。
今はもっぱらパワーナップで10分くらいがっつり寝て充電完了となっていますが、暖かくなったらベランダにハンモックを吊るして昼寝をするのがお気に入りです。今年は春が恥ずかしがって隠れてしまった感がありますが、早く暖かくなってほしいものです。
『たいへんなひるね』の作者紹介:
さとうわきこ
1937年、東京都生まれ。児童出版美術家連盟会員。リアリズム作家の会同人。絵本に「おつかい」「たぬきがいっぱい」「おりょうりとうさん」「ねえ おきて」「ねえ まだねてるの」などの作品がある。
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