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【絵本レビュー】 『かさじぞう』

再話:瀬田貞二
絵:赤羽末吉
出版社:福音館書店
発行日:1966年11月

『かさじぞう』のあらすじ:


編み笠を作って暮らしているじいさんは、正月の餅を買うために、笠を五つ持って町に売りに出かけましたが、さっぱり売れません。そのうちに日が暮れて雪も降ってきたので、しかたなく戻ってくる途中、野原に立っているお地蔵さまに雪が積もっているのを見て、持っていた笠を全部かぶせてあげました。翌朝、どこからか橇引きの声が……。

『かさじぞう』を読んだ感想:

子供のとき一度は読む(読まされる)『かさじぞう』。私の思い出は、小学校の5年生の時。新しい担任は大の劇好き。その年の学芸会ではかさじぞうをすることになりました。じいさんとばあさんのキャスティングは特に熱心で、じいさんには普段クラスでは目立たない静か目の男の子が選ばれました。私は地蔵の一人。台詞もとりあえずつけたくらいの短い一文だったと思います。しかし、大変だったのはじいさんとばあさん役の子供たち。朝練も繰り返され、毎日発声練習の声が練習場所として使っていた図書館の外にまで聞こえて来ました。なんどもダメ出しされて授業に泣き顔で入ってくることもありました。私はあまりに熱心になり完璧な演出に固執する先生をただ、大人気ないという気持ちで見るとともに、主役に選ばれなかったことをラッキーとさえ思っていました。学芸会の当日はみんな上手にやり遂げ、特に練習ですっかり枯らせてしまった男子生徒の声はじい様として完璧に仕上がりました。非常に嬉しそうな担任の姿が今も思い出されます。あの劇は私たちのためではなくて、先生のためにしたという感触は今も拭い取れませんが、何かにそこまで打ち込めるというのはまあいいことなのではないでしょうか。『かさじぞう』を読むたびにあの時の冷めた気持ちが蘇って来て、雪に埋もれるお地蔵さんの気持ちはバッチリ反映できるようになりました。

『かさじぞう』の作者紹介:

瀬田貞二
1916年、東京・本郷に生まれる。東京帝国大学で国文学を専攻。戦後、「児童百科辞典」(平凡社)の企画編集者をふりだしに、児童文学の評論、創作、翻訳などにいくつもの大きな仕事をのこした。絵本の代表作に『きょうはなんのひ?』(福音館書店)があげられる。ライフワークのひとつに「落穂ひろい 日本の子どもの文化をめぐる人びと」(福音館書店)がある。1979年逝去。

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