【絵本レビュー】 『3人のママと3つのおべんとう』
作者/絵:クク・チスン
訳:斉藤真理子
出版社:ブロンズ新社
発行日:2020年1月
『3人のママと3つのおべんとう』のあらすじ:
子育て、家事、仕事、日々せいいっぱいがんばるママたち。今日は幼稚園の遠足の日。ハナマンションに暮らす3人のママたちは、朝からおべんとうづくりに大忙し。3人のママが、子どもたちにもらったまぶしい春の日を描いた韓国発の絵本。
『3人のママと3つのおべんとう』を読んだ感想:
いろんなママたちがいて、いろんな形の子育てをしている。誰もができることを一生懸命していて、自分の時間なんて取れないほど毎日を忙しく過ごしている。
何度か書いていますが、私は主夫に育てられました。母は午後出勤がほとんどで、週末もほぼ仕事でした。大抵は私が寝てから帰って来ていたので、私は一日の大半を父と過ごすことが多かったです。朝ごはんを作ってくれるのも、お弁当を準備してくれるのも、学校の帰りにおやつと私服を持って来てプールに送ってくれるのも、勉強を見てくれるのも、お風呂の準備をしてくれるのも、寝る前に本を読んでくれるのも、全て父でした。
母がいるのは一週間に一回か二回。そんな日は学校から帰るのが楽しみで、スイミングがあったりすると会えるのは帰宅してから一時間ほどだったので、とても悔しかったものです。それでも母のいる日は朝家を出る前に食べたいものをメモに書いておくのが常でした。そうすると夕食にはカレー、コロッケ、ドリアやハンバーグなど、父が作るものとはうって変わった盛り付けも彩も食欲をそそるようなものばかりが食卓に並ぶのでした。食がとても細かったのですが、母のいる日の夕食は本当に楽しみでした。
学校のイベントのある日は、母は早起きしてお弁当を作ってくれました。小学校の運動会の写真には必ず母が写っているので、きっと休みを取ってくれていたんでしょうね。私のリクエストはいつも同じ。唐揚げと卵焼きでした。母の作る卵焼きはお店のみたいに綺麗な層があって、しかもちょっと甘いんです。父が作ると醤油の入れすぎで茶色くなってしまって、しかも焦げていることが多いのです。一度「ママのみたいに甘いのがいい」と言ったら、パンケーキかと思うほど甘くなっていて子供ながらにたまげたことがありました。母がお弁当を作ってくれた時はみんなに見せたくて、自分から友達を誘って一緒にお弁当を食べました。
今自分が母親になってみて気づいたのは、一日があっという間に過ぎていくことです。私はどちらかというと絵本作家のダヨンさんみたいな生活をしています。次長ではなかったけれど、ジソンさんのように会社で働いていた時もあります。どちらも一日は飛ぶように過ぎ、いつも計画したことが終わらないので、なんだか時間を無駄に使ってしまっているような気がします。仕事に家庭にプライベートを全て100%しようとしたら、一日が三倍長くないといけないんでしょうね。全部ちゃんとやりたくて、でもできなくて、私の毎日はイライラがいっぱいです。
これもあれもそれもと生きている私に比べると、息子はまったく違う次元に生きているような気がして、それはまたイライラの原因になりがちなのですが、この絵本を読んで、もしかしたら息子はそんな私に人生を楽しむ方法を教えてくれているのかもしれないな、と思いました。
「みて〜この葉っぱ」
「みて〜この棒」
「みて〜アイスクリーム」
どれも周りにあるものなのに、私は「次のチェックリスト」ばかりが気になって、そういうものに目を向けません。でもそれらは全部、かつて私が一つ一つ足を止めて愛でたものばかりなのです。いったいいつから私の一日はこんなに枯れてしまったんでしょうね。
子供の時の私は、忙しかった母にそんな気づきを与えられていたんでしょうか。そうであったといいです。私は、まだ間に合います。チェックリストを一つ減らして、息子と一緒に一日のうち何かを楽しめるようにしたいと思います。
あなたはどんなママですか。
『3人のママと3つのおべんとう』の作者紹介:
クク・チスン
2人の子どものママで、絵本作家。大学でデザインを学び、絵本作家へ。ひとり出版社moonmoonbooks(ムンムンブックス)を運営
クク・チスンさんのその他の作品
まだ他の作品は出ていないようです。次回作が楽しみですね。
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