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【絵本レビュー】 『フレデリック ちょっとかわったのねずみのはなし』
作者/絵:レオ・レオニ
訳:谷川俊太郎
出版社:好学社
発行日:1969年4月
『フレデリック ちょっとかわったのねずみのはなし』のあらすじ:
仲間の野ねずみたちが、冬に備えて木の実などを貯えているのに、
フレデリックだけはなぜか何もせずに、ぼんやりとしています。
でも長い冬、野ねずみたたちを救ったのはフレデリックでした。
『フレデリック ちょっとかわったのねずみのはなし』を読んだ感想:
全てのぼんやりくんたちがフレデリックみたいだったらいいのですが、とスレた大人の心を持った私は思ってしまったのですけれど。。。
小学校では体育の時間に雨が降っていると、体育の先生が教室に来てお話をしてくれました。特にテーマが決まっているわけではなく、その時々に先生が話したいことを話していたように思います。時々は先生が道であった人の話。また時々は先生の生まれた町の話だったりしました。
そんなある雨の日、私たちは制服のまま教室に座って先生を待っていました。先生はいつも通りのジャージに白いポロシャツで、首からは笛がぶら下がっていました。
この日先生がしたのは、はっきりと題名があったわけではありませんが、つけるとすれば「言葉の不思議」でしょうか。先生は言葉には心があって生きていると話してくれました。
「生きている」なんて、なんともミステリアスなことだと小学生の私は思いました。まだ「言霊」などという言葉は知らなかった頃です。私はワクワクしていました。
先生は私たちに目を瞑るようにいると、これから先生が言う言葉をできる限り詳しくイメージ化するように言いました。薄暗い教室はとても静かで、しまった窓の外に降る雨のしとしという音すら聞こえそうでした。
「みんなの心臓が動いています。強く、弱く。強く、弱く。」
これは簡単です。とても静かなので感じることができたからです。
「外に太陽が照って、青い空があります。白い雲も浮かんでいます。」
目をつぶる前に見たのは雨降りの灰色の空でした。そのイメージを押し払いながらピッカピカの眩しい太陽を思い浮かべます。絵の具で塗ったみたいな真っ青な空に真っ白なふかふかの雲が浮かんでいる。そんな空を思い浮かべるとなんだか心までスッキリ晴れ渡るような気がしました。
先生はそのあともいくつかの言葉をゆっくりを紡ぎ出しました。そして、
「レモン。黄色いレモンを切っています。みずみずしいレモンです。一切れ口に入れてみましょう。」
その言葉が終わるか終わらないかするうちに、私の口の中には唾液が溢れて来ました。クラスの中に軽く息を飲む音が聞こえました。私もその一人でした。
それからまだいくつかの言葉がありましたが、私はレモンの効果に軽いショックを覚え、そのあとはあまり集中できませんでした。けれども私は「言葉は生きている」と言うことを身を以て体験したのです。
食べ物や温かい寝床を確保することはもちろん大事です。でも、長く暗い冬を素敵な言葉たちに包まれて過ごすことができたら、どんなに素敵でしょう。目をつぶるだけで行きたいところに行けたり、見たい景色が見れたりしたら本当に素敵です。必要なのは想像力だけ。これができたら、なりたい自分を想像するのもそんなに難しくなさそうですよね。目をつぶって、今日の自分よりちょっとだけ成長した明日の自分を想像してみるとしましょう。
『フレデリック ちょっとかわったのねずみのはなし』の作者紹介:
レオ・レオニ(Sophie Blackall)
1910年オランダ アムステルダム生まれ。イラストレーター、グラフィックデザイナー、および絵本作家として、米国でもっとも活躍した芸術家のひとり。「あおくんときいろちゃん」(至光社刊)「スイミー」「フレデリック」「アレクサンダとぜんまいねずみ」「さかなはさかな」「うさぎをつくろう」「じぶんだけのいろ」(以上好学社刊)などの作品がある。1999年没。
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