【絵本レビュー】 『そらとぶパン』
作者/絵:深見春夫
出版社:PHP研究所
発行日:2001年10月
『そらとぶパン』のあらすじ:
ある日、列車の形をしたパンが駅に到着しました。子どもたちが大喜びで乗り込むと……パンはフワリと空へ浮かびあがりました。
みんなを乗せたパンは、大きな雲の中に入っていきました。中は、パンでできた夢の国でした。
『そらとぶパン』を読んだ感想:
息子がまだ小さかった時、絵がシンプルなのと美味しそうなパンに惹かれるかなと思って購入しました。4歳になった今も大好きで、毎回どのパンを食べるか時間をかけて真剣に悩んでいます。日本でパン屋に連れて行ったら、一生出て来られないだろうなと思います。
私の父はパンが好きで、駅間のパン屋に貼ってあった「焼き上がり時間」を覚えていました。うちから駅までは自転車で10分ちょっと。休みで家にいると言われるんです。
「おお、あと30分でフランスパンが焼けるぞ」
そう言って1000円札を一枚渡されます。食べたがるパンはフランスパンかイギリスパンでした。うちは父も母も食べる量が半端なく、父はいつもご飯はどんぶりで食べていたくらいですから、イギリスパンを1斤食べるのなんて朝飯前。マーガリンだけで焼きたてのパンをがしがし食べていました。
そういうわけで、私はその時何をしていようとも中断する羽目となり、自転車に乗って駅まで行ったわけです。買うのは必ず3つ。戦中に育った父は、食べ物が「もうない」と言われるのが大嫌いで、料理も足りないより残したいので多めに作らされました。食べきれないくらいいっぱいいあることに安心感を感じたのかもしれませんね。なのでパンもひとり1本、または1斤買いました。焼きたてのパンは表面がまだパリパリしていて、中はフワフワです。父とテーブルに座り、真ん中にマーガリンを置いて、黙々とパンを食べます。私は時々クリームチーズをつけましたが、焼きたてパンにはやっぱりバターだけが一番美味しいと今でも思います。
それからしばらくして、私はパン作りを始めました。土曜の夜家族が寝静まった後に家の小さなオーブントースターでパンを焼きました。バゲット、スコーン、ベーグルといったあまり難しくないものでしたが、朝起きて来た父と母が嬉しそうに食べるのを見るのが楽しみでした。また土曜の夜に、海外ドラマを見ながらパンを作ることは、一週間の疲れをリセットする役目も果たしていたと思います。
買いていたらなんだかパンの香りを思い出して来ました。久しぶりにスコーンでも焼いてみようかな。
『そらとぶパン』の作者紹介:
深見春夫
1937年、東京生まれ。絵本、挿絵を中心に活躍中。主な作品に『せかいいちのぼうし』『劇団どうぶつ座旗揚げ公演 パンダのぱんや』『劇団どうぶつ座 第二回公演 王様はどなた?』『じぶんでおしりをふけるかな』『にがいおくするのめるかな』(共に岩崎書店)、『そらとぶパン』『くもきちせんせい』『しりとりのくに』(共にPHP研究所)、『チョコレートのまち』『へんてこマンション』(共に佼成出版)などがある。