【絵本レビュー】 『おしゃべりなたまごやき』
作者:寺村輝夫
絵:長新太
出版社:福音館書店
発行日:1972年12月
『おしゃべりなたまごやき』のあらすじ:
ある国の、ある王様のおはなし。
王様はにわとり小屋にぎゅうぎゅう詰めになったにわとりをかわいそうに思い、にわとり小屋の戸を開けますが、にわとりが飛び出し大騒ぎに。王様がにわとりに追いかけられたと誤解した兵隊たちは犯人探しをはじめますが、みつかるはずがありません。ところが、夕食のめだまやきがじゃべりはじめます...
『おしゃべりなたまごやき』を読んだ感想:
王様という人生はなかなか大変だな、というのが最初の感想です。周囲は「王様」としてこの人を見ていて、「一人の人」とは見てくれない。王様って広いお城の中で一日中過ごし、できることは庭をぐるぐる回るくらい。そりゃあうちのベランダとは違って素敵な庭でしょうけど、一人ではあまり楽しくないんじゃないかな。せっかく鶏を自由にして一緒に走り回っても、すぐに楽しみを取り上げられてしまう。これが人生なら、王様にはなりたくないなあ。
多分この絵本が教えたいのは、秘密はいつかバレる、ということなのではないでしょうか。どんなに口裏を合わせても、いつかどこからか漏れてしまう。よくあるのは、「これ秘密だから言わないでね」と言われて黙っていたらみんな知っていた、とか。友達だと思って割と私にとっては大事だと思うことを話したら、翌日クラス中が知っていたとか。小学校の頃の私は女子が苦手だった。いつも髪の毛やヘアピンなんかを褒めあって、アイドルの話で盛り上がっているのは、私にはちょっとわからなかった。うちは母が外で働き、父が主夫をしていたので、女子的な考え方を全く教わらないで育ってしまったからだろうか。実体験で痛い目にあって当時学んだことは、「女子はわからん」。そう思って男子とばっかり遊んでいたけど、少し大きくなって考え直したことは、「秘密はいつかバレる」。王様も、あんな風に秘密が明らかになってしまうとは、思わなかったことでしょう。この後一体どうなったのかな。
『おしゃべりなたまごやき』の作者紹介:
寺村輝夫
1928年東京都生まれ。戦後早稲田大学に入学し"早大童話会"に所属、創作童話を志す。56年に「ぞうのたまごのたまごやき」を発表。以来「ぼくは王さま」シリーズをライフワークとして書き続ける。61年『ぼくは王さま』で毎日出版文化賞受賞。80年『あいうえおうさま』で絵本にっぽん賞受賞。84年「独特のナンセンステールズで、子どもの文学の世界を広げた」功績により巌谷小波文芸賞受賞。「寺村輝夫のとんちばなし・むかしばなし」「おはなしりょうりきょうしつ」「わかったさんのおかし」「かいぞくポケット」など、子どもに人気のシリーズが多い。2006年没。