【絵本レビュー】 『ラチとらいおん』
作者/絵:マレーク・ベロニカ
訳:とくながやすもと
出版社:福音館書店
発行日:1965年7月
『ラチとらいおん』のあらすじ:
ラチは世界でいちばん弱虫です。犬をみると逃げ出しますし、暗い部屋には入ることができません。そんなラチのところに小さな強いライオンがやってきました。ラチはライオンがそばにいてくれることで少しずつ強くなっていきます。ある日、友だちのボールをとったのっぽの男の子をラチは夢中でおいかけボールを取り返します。ふときがつくとライオンの姿はありません……。あわてたラチが家にもどると、ライオンからの素敵な手紙が残されていました。
『ラチとらいおん』を読んだ感想:
「ラチは、せかいじゅうで いちばん よわむしでした」
こんなふうに始まる絵本ですが、もう最初の一行で私は子供時代に飛んで行っていました。
私はすごく弱虫で泣き虫でした。母親によく、「そんなに泣いてると本当に泣きたい時に涙がなくなっちゃうよ」と言われるほどよく泣きました。小学校に入学した時、門から見える校舎がとてつもなく大きく見えて怖くなり、何日も泣いて戻ってきてしまい、やはり登校中の校長先生に見つかって連れて行かれたものでした。
ピアノの発表会へ行けば怖くて緊張しすぎて吐いてしまうし、学校で誰かが朝おはようと返してくれなかっただけで、もう学校へも行きたくなくなる有様でした。幼稚園まではかなり度胸も据わって、誰とでもすぐ話すような子だったそうなので、親としても困り果てていたのではないでしょうか。
でも私にはラチのように力を分けてくれるらいおんはいませんでした。あの時らいおんがいたら、状況は変わっていたのでしょうか。ただ思うのは、らいおんは自分を信じる気持ち、なのではないかなということ。私はみんなと別の中学校に行った時「誰も私のことを知らない。好きな自分になれる」と思った瞬間、吹っ切れたんです。きっとラチも「ぼくは大丈夫」と思った瞬間がらいおんとのお別れだったのではないでしょうか。
『ラチとらいおん』の作者紹介:
マレーク・ベロニカ(Marek Veronika)
1937年、ハンガリーのブダペスト生まれ。国立人形劇場のスタッフとして働いた後、絵本作家に。その作品は世界中の子どもたちに、ずっと愛され続けている。主な作品として『ラチとらいおん』『ボリボン』『もしゃもしゃちゃん』(ともに福音館書店)、「アンニパンニとブルンミ」シリーズ、「キップコップ」シリーズ、『ぼくとおにいちゃん』『きのう きょう あした』『どうぐで なにが つくれるの?』『くだもの だいすき!』(ともに風濤社)などがある。