
スマホを子どもから遠ざけず “ポジティブな失敗” を! 10代前半のためのスマホ対処法
子どもがスマートフォンやパソコンを積極的に活用する前提で、プログラム開発を進めています。少なくとも「スマホの持ち込み禁止」となるプログラムは一つもありません。それがたとえ、自然体験プログラムだったとしても、です。
なぜなら、知らない土地で、やりたいことを実現するために、インターネット検索や地図アプリは欠かせませんし、アウトドアでのリスクを避けようと思えば、天気予報アプリも使いこなさなければいけません。
また、遠方でも現地集合・現地解散が基本です。保護者の送り迎えがないときは、子どもは自分で行き来することになりますが、LINEでいつでも連絡を取れるようにしておければ少し安心できます。
(大人になりつつある子どもたちがターゲットなので、現地集合・現地解散も、子どもたちには少しずつ世界を広げる機会にしてほしいと思っています!)
社会に出れば、スマートフォンやインターネットは、ほぼ必要不可欠と言えるIT機器です。
大人になる将来が視野に入り始める10代前半がターゲットですから、避けて通れない――いや、むしろ、使いこなせるようになる機会を積極的に提供したいと明確に考えています。
悩みは尽きないけれど……本音は「コントロール&活用してほしい」???
こんにちは。よりかね隊長です。
スマホ × 子ども問題は、
「1日●時間まで」とルールを作ったはずが、あの手この手でゴネられ形骸化してしまっている
いい加減にしなさいと叱って没収すると、癇癪を起こして収拾がつかなくなる
そもそもイライラして叱る自分にモヤモヤする
などなど、悩みは尽きませんよね。
幼少期はともかく、私たちのプログラムに参加するような10代前半(おおむね小学校高学年〜中学生)となってくれば、将来を考えて、
「自分でコントロールできるようになってほしい」あるいは、「YouTubeやゲームに熱中するだけでなく、IT機器の活用の仕方を身につけてほしい」
そんなふうに思っている親御さんは、きっと少なくないはずです(できる・できないはともかく)。
考えてみれば、大人である私たちにとっては、生活必需品とも言えるツールです。
電話、メール、SNS、インターネット検索はもちろん、ニュースをチェックしたり、天気予報を確認したり、時刻表を検索したり。SuicaやApple Pay、PayPayなど支払いにも使います。
いま10代前半の子どもたちは、5年もしたら、高校生や大学生。あっという間に社会人になりますが、スマホのような機器は、きっと現在と同様(もしかしたら今よりもずっと!)なくてはならないツールであるはずです。
方針:子どもたちがうまく付き合い、使いこなせるように
テストの点のとり方は、学習塾で教わることができます。
一方で私たちは、子どもたちが自分らしく社会に羽ばたいていくための、心強い武器を身につけられる場所となれるよう、事業をスタートさせました。
いちばんは、世の中の様々なものに興味を向ける力です。
大人になった私たちには、わかるんですーー社会では、常に新しい状況に直面し、適応を迫られ、答のない決断を繰り返さなければならないと。
だからこそ、新しく学ぶことを苦にせず、自分から没頭して世界を広げていけるなら、親としてこんなに安心できることはないのではないでしょうか。

他にも、自分で考え、計画し、行動する力も大切ですし、社会を広く見て回る機会、多様な人とのつながりの中でしなやかな人間関係を育む経験なども、それぞれ価値観にもよりますが、欠かせないと感じる人もいるでしょう。
そして、インターネットテクノロジーや、メディアとの付き合い方も、避けて通れない課題の一つ。しかも学校や塾で学ぶというのは、ちょっと期待できない分野となってきます。
スマートフォンは、いま私たちが直面しているとおり、付き合うのが難しいツールではあります。
でも、だからと行って子どもから遠ざけようとするのでは、子どもたちは学んだり、経験を積んだりできないまま(性教育やアダルトコンテンツ対策などにも、似たところがありますね)。
スマートフォンやノートパソコンは、これからの時代、あって当たり前のものだと位置づけ、子どもたちがうまく付き合い、使いこなせるようになる、様々な機会を提供していく方針です。
依存症の研究から見える事実。「使わせるが、制限する」が最も困難
私たちの「スマートフォンを積極活用していく」という方針には、科学的・論理的な裏付けもあります。
薬物依存や嗜癖など、依存症を研究テーマとするM・クーハー教授の著作『溺れる脳』を紐解いていくと、「我慢させればさせるほど、欲求は強まる」という、身も蓋もない事実を読み取ることができます。
これを参考に、スマートフォン対策を考えてみれば、必然的に、大きく2つの方向性が見えてきます。
1. 完全に遮断する(もちろん親も子どもの前では全く使わない)
2. 飢餓感を覚えないよう、日常の中で当たり前のものにしてしまう
つまり、一切やらせないか、積極的に活用させるか、どちらかしかないわけです。
1日●時間までという制限ルールは、子どもにはもっとやりたいという思いがあるのに、我慢させる……つまり、根本的に矛盾をはらんだやり方。
私たち親世代は、自分が子どもだったファミコンの時代から、時間制限を刷り込まれており、それが当たり前だと、わりと深く考えずに時間制限をしてしまいがちですが……。
論理的・科学的に考えて、最高難度の方法であり、子どもの「やりたい」という欲求は強くなるばかり。世の中の大半の家庭がうまくいっていないように見えますが、みなさんの感覚ではいかがでしょうか?
「一切やらせない」vs「積極的に活用させる」であれば、“自分らしく社会に羽ばたいていくための、心強い武器を身につけられる場所” というコンセプトの私たちが、どのようなスタンスを取るかは明白――もちろん後者以外にありません。
人にとって「自分の状態を客観視すること」は難しい
インターネットが一般家庭に普及し始めて約20年、スマートフォンが登場して約10年。まだまだ、年月が浅いですよね。
よりかね隊長のファミリーでは、長女は3歳くらいから、2歳半下の長男は0歳のときから、身近にスマートフォンやタブレットがあった環境でした。自分の子どもたちにスマートフォンやタブレット、ゲーム機を使わせていくなかで、実際にやってみたからこそわかったことが、実にたくさんあったのを覚えています。
やらなきゃいけないことをやらない、夢中になりすぎて「おはよう」も「おかえりなさい」も言わないなど、このままではいけないな……とルールを設定するようになったのが、長女が4歳くらいだったと思います。
このときに設けたルールは、3つだけ。
寝る時間になったら、すっぱりやめる
やるべきこと(朝の支度であったり、お風呂であったり、宿題であったり)は先に片付けてから遊ぶ
用事できたときは、すぐに中断して用事を片付ける
この3つを守りさえすれば、あとは自由に使っていいことにしました。
やってみてわかりましたが、子どもが……というより大人も含めて、人ならば誰しも難しいのは、自分の状態を客観視するということです。
たとえば、YouTubeに夢中になりすぎて、おじいちゃんが帰ってきたのに「おかえりなさい」を言わなかった。
YouTubeをわずか5秒だけ一時停止して「おかえりなさい」を言うことと、楽しいからと無視してYouTubeを見続けること。どちらが大切か、どちらを選ぶべきかは、落ち着いた状態で尋ねれば、幼児でもちゃんとわかります。
けれども、正常な判断ができない状態になってしまっている。
ポイントは、YouTubeを見ていると自分がいつもとは違う状態になってしまうんだ、と知り、意識できるかどうか。意識さえできるのならば、いくらでも対処ができるわけですが、それがなかなか難しいわけです。
本人にコントロールする意志があるのなら、応援してあげる
大人でも無意識に歩きスマホをしてしまう人、やめられない人がいますし、ゲームで夜ふかしをして次の日に響いてしまう人がいます。
それでもやはり、大人のほうが発達が成熟し、しかも経験がありますから、問題が起きたときに対処する術(すべ)を持っているケースが多いのは、言うまでもありません。
夜ふかしして、次の日の大事な用事に響いてしまったとしたら、じゃあ大事な用事がある前夜はゲームはやめよう……というふうに。
でも、私たちは、「子どもだから無理だよね」とは考えません。子どもだって、足りない部分を大人が補ってあげれば、少しずつ訓練を重ね、経験を積み、対処できるようになっていきます。
本人に、自分でコントロールしたいという意志があるのなら、全力でサポートしていきます。
実際、よりかね家の子どもたちは、小学校2〜3年生になる頃には、“スマホやゲームに呑まれて自分をコントロールできない” ということは一切なくなりました。
もちろんすぐに身につくわけではありません。4歳くらいからはじめて、8歳・9歳ですから、4〜5年はかかっており、根気が必要です。何度も何度も失敗はすると思います。
力づくでルールを守らせるのではなく、本人の意志・選択に委ねる
では実際のところ、子どものスマートフォンについて、具体的にどのように対処しているのでしょうか。
私たちのプログラムでは、このようなスタンスである以上、誰かはスマートフォンを持ってくると考えるべきで、どの家族にとっても関係してくることになります。
(我が子にはスマホを持たせないから安心、と思っていると、よその子のスマホを隣でずっと見ていた……ということにも!?)

とはいえ、スマートフォンだからと言って、特別なルールがあるわけではありません。
私たちには、”「何をするか」「何をしないか」を、自分で決める自由が保証されていることが大切”という価値観があります。どう関わるかは、常に子ども自身に主導権があり、何かに没頭することはもちろん、いまは何もしないという選択も、あたりまえのように許される場です。
だから、たとえ、スマホに夢中になってプログラムに参加しない……ということがあっても、スマホを止めさせるようなことはなく、その子の選択を尊重します。
もっとも、私たちの各プログラムは、スマートフォンよりも魅力的なものに仕上げている……少なくとも私たちは自負しています。
それでも見向きをせずスマホ漬けなのだとしたら、プログラムに興味がなかったか、日常で自分の時間を持てておらずここで発散しているか、タイミングが合わなかったのかもしれません。こうしたミスマッチを生まないためにも、参加は子ども本人の意志を必須としています。
そしてもう1つ考えなくてはならないのは、私たちが大切にしている4つのルールです。

ここで関係してくるのは、「一人ひとりの大切にしたいことを尊重しながら、自分も自由になる方法を考えよう」の部分です。
自分の「こうしたい」という思いは大切です。でも、他の子の「こうしたい」も同じだけ大切。利害が対立してしまうときに、いったいどうするのか、しなやかに考え、向き合う必要があります。
たとえば、みんな一緒に15時には出かけようと自分たちで決めた。けれども、スマホに夢中になっている子がいて、支度をしようとしない。もちろん、安全上、一人だけ置いていくわけにはいかないので、他の子も出かけることができません。
石垣島7日間など、時間に余裕のあるプログラムの場合は、子どもたち同士で、どうするか話をしてもらいます。しかしながら、子ども同士で話し合いをする時間を持てないケースや、今このときを逃すともうできないことである場合もあるでしょう。

こんなときは、やむなく大人スタッフが介入し、
1. プログラム中はスマートフォンやゲームをやらないルールとし、帰りまで機器を預かる
2.やるべきことをやってから遊ぶように、自分でコントロールする
どちらかを選んでもらうことがあります。
そして子ども本人に、自分でコントロールしたいという意欲があるのなら、全力で応援し、サポートします。何度でも失敗してかまいません。それどころか、子どもが安心して失敗できる場でありたいと思っています。
※とは言うものの、いちど「自分でコントロールする」と決めた子は、やるべきことをやってから遊ぶ、がほぼできるようになるケースが大半です。ちょっと夢中になってしまっても、一声かければ割とすんなり解決します。
なにしろ、子どもにとっては、そこまで大変ではない「やるべきこと」をやりさえすれば、スマートフォンについての自分の自由が保証されるのですから、当然かもしれませんね。
イソップ寓話『北風と太陽』ではありませんが、力づくでルールを守らせようするのではなく、子ども当人が守る価値があると思えるルールを設定し、本人の意志・選択に委ねることで対処しているんです。
ご家庭でも参考になる場面は多いかと思いますので、詳細は30分トーク配信をYouTubeでご覧いただければと思います。