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好きな本レビュー第2回目『桂 望実/嫌な女』
本レビュー用の見出し画像を作りなおしました。前回載せたものを見たらやっぱりちょっとイメージと違うなーというこだわり根性がむくむくと・・・
手間だし面倒なのについやってしまって、で結果ちょっと楽しい。だから良し。
さて自己満足好きな本レビュー第2回目はこちらの本です
『桂 望実/嫌な女』
これはタイトルのインパクトに惹かれて手に取り、例のごとく冒頭のパラ見で気に入り買ったものだったと思います。
あと装丁の女性の絵、デザイン、表情といい花柄といい構図といい「嫌な女〜〜」って感じで最高です。
初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。
小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。
そんな生来の詐欺師を縁戚に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っ張り出されるのだが・・・
あらすじをちょっと読んだだけでも、「いるよねーーこういう女ーー」
という日本中の女性からの呆れとため息が聞こえてきそうですが、まあ本当にそういう女です。
「嫌な女」。
タイトルのインパクトと、冒頭で語られる子供の頃のエピソードで「ああ嫌ったらしい人だな」と思わずどろっとした感情が胸にひろがる。
だって実際いるもん(いたもん)、こういう人。トトロいたもん。
・・・天性とまではいかなくても、狡猾で人の懐に滑り込むのが抜群にうまくて、とにかく人を巻き込んで好かれながらちょっと小馬鹿にしてて利用しまくるような、誠実さとはかけ離れた(でも好かれる)人。
で、そんな風に始まっていくこの長い長い物語ですが、ただ「嫌ったらしい女」の嫌ったらしいエピソードで完結するわけではありません。
読み進めていくうちに、鮮やかな時間の変化によるグラデーションに彩られた、とても爽快な“人生物語”だということに気がつき、次は何だどうしたんだと夢中になっていきます。
夏子が起こすトラブル、珍事件を通して、語り手・徹子の人生への受け止め方、人柄も少しずつ変化していくのが読んでいてとても豊かな気持ちになります。
途中で出会う「近藤さん」の物語は涙なくして読めません。
この近藤さんとのやりとりを通して徹子が人生における重要なきっかけを体験し、人生全般に感じていた虚しさをうまく消化する出来事となるところは、まさに転換ポイント。
これを読者の目線を通して体感できるところも、この本を読んで豊かな気持ちになったひとつの理由かなと思います。
「嫌な女」に変わりはないんだけど、”嫌”だけで完結されない、タイトルとそぐわないさわやかな感動を味わうことができる良作だと思いました。
これから先もちょくちょく読み返すだろうなー。
ちょっと長くなってしまいました。読んでいただきありがとうございました〜