バイオニック・ジェミー
『ジェミー』ですね。『バイオニック・ジェミー』。
五十二歳でくも膜下のため死んだ母が、まだ四〇代だったころ。
この番組の大ファンで、中学生だったわたしもその影響で見るように。
たちまち、ハマりました。
金色の長髪をなびかせて時速九〇㎞で走る。
右手で軽々と、何トンもの荷物を持ち上げる。
1㎞先でピンが落ちても、右耳が聞きつける。
自分の命を救ってくれたOSIの局長、オスカー・ゴールドマンのために戦う、地上最強の美女!
数々のエピソード群のなかで、忘れられないエピソードがあります。
核実験がやまないのを憂いた科学者が、核兵器を廃絶しなければ、二十四時間以内に自分の最終兵器を炸裂させると世界を脅すのです。
本気にしなかった中東のある国が核実験を強行。
いよいよ、最終兵器が秒読み段階に……
対立していたソ連と米国は協力態勢を敷き、ソ連の代表から男性の科学者が、米国からはジェミーがこの最終兵器の爆発を阻止する役目になりました。
最終兵器の番人は人工知能のアレックス。
施設を管理し、入り込んでくるジェミーたちを食い止めます。
科学者はリタイアしますが、ジェミーはなんとか心臓部まで侵入することが可能になったのです。
最終兵器発動まであと一〇秒、
五、
四、
三、
二……
ところが!
意外にも、それは最終兵器の科学者が、世界に散らばる核をなんとかしたいと願って起こした芝居でした。
そうと知って脱力するジェミーと科学者ふたりぐみ……
しかし、アレックスが叛乱をおこして。
最後のオチが秀逸。
ジェミー「明日の命を、みんな、
これほど真剣に考えたことはないはずよ!」
ソ連の科学者「しかし明日までそれを覚えているかな?」
そのセリフでエピソードが終わったのですが、中学生の頃のわたしには、このセリフは胸に突き刺さりました。
今日のために、明日のために。
大切な命がある。
アメリカとロシアを巻き込んだ中東戦争が勃発しそうな今、
忘れられない『バイオニック・ジェミー』のエピソードです。
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