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2-18. 掴まれて落とされて振り回される
あるところに、女の子と男の子がいた。
女の子は世界を旅している途中、男の子は世界を旅した後国に帰る途中だった。
二人はたまたま同じホステルに泊まっていた。クラビのとあるバックパッカー、海水でごわごわになった髪を無造作にまとめた20代30代の若者がふくらんだバックパックを背負ってチェックインし、シンハービールやラオカオを呷り、タトゥーを入れた手でギターを弾いたりジェンガに興じたりするような、子供と大
2-17. アボカドトーストと恋バナ
5月の上旬、ジョージはしばらく一人旅をすると言って家を空けており、私は数日間の一人暮らしを満喫することができた。
最初の夜こそ寂しさを感じたものの、突如として始まった同棲生活から解放されて私はどこかせいせいしていた。広々としたベッドで身体を思い切り伸ばしたり、好きなテレビ番組を選んだりといった些細な自由が貴重なものだとは、同棲して初めて知ったことだ。
旅から戻ってきたレイチェルと会ったのは、ジ
2-16. 冷たい水
深い水に、落ちる。
どぼんという音を最後に周りの空気は遮断され、青黒い深淵にそのままどこまでも沈んでゆく。体のまわりにまとわりついていた泡だけがしずかに水面へと上って行く。
自分の人生に絶望した時、私は深い水の中に沈む自分を想像する。もがき苦しみながら、気管に入る水にむせながら、私は何を思うのだろう? 叶わなかった夢、愛してくれなかった人、失った若さ。そんなことを後悔するのだろうか? それとも、
2-14. 簡単にいえば、私は、いつの間にか恋に落ちていた。
まさかそのまま5ヶ月もジョージのアパートに居座ることになるとは、思ってもみなかった。
(あとで聞いたところによると、ジョージは私が居着くことを半ば予想し、半ば期待していたらしい。けれど「そのうち嫌になって出て行くだろうなとも思っていた」そうだ。)
話を戻そう。
ホステルを追い出されたあとジョージのアパートメントに一時避難した私は、結局そのままその日はそこに泊まることになった。近場のホステルに空