『Bump』創業者が教える顧客維持率の測り方〈2〉|作図法と正しい解釈の仕方
本シリーズは、『Bump』の創業者であるデイビッド・リー(David Lee)氏の解説を基に、コホート・リテンションの重要性、測り方についてご紹介しています。
コホート・リテンションを正しく測れば、あなたの製品が本当にPMFを達成している(人々が必要としているものか)が分かるはずです。
逆にコホート・リテンションの測り方を間違えると、成功しているにも関わらず「全然上手くいっていない」と無駄に落ち込んでしまうこともあるので、ぜひ知っておくとよい内容です。
第2回は、いよいよ具体的な測定方法についてです。
📍 コホート・リテンションのポイント
コホート・リテンションとは
コホート・リテンションの測定方法
自分を欺く間違った測り方とその対策
悪いコホート・リテンションを改善する方法
2. コホート・リテンションの測定方法
新しいユーザーのグループ(コホート)を時間の経過とともに追跡する図として、「三角チャート」というものが紹介されています。
三角チャートの読み方(左揃えの場合)
行:コホートの月別分割
各行は「新規ユーザーのグループ(コホート)」が特定の月に製品を初めて使い始めたことを示します。「1月のコホート」は「1月に製品を使い始めた全ての新規ユーザー」ということです。列:時間の経過
各列は、製品を使い始めた月から経過した月を表します。「1月のコホート」の場合、2月は1か月後、3月は2か月後ということです。三角チャートの対角線(黄色のセル)
チャート内の黄色の斜めのセルは「特定のカレンダー月」を示します。
例えば、7月の対角線では、7月に製品を使ったすべてのユーザーがどのコホート出身なのかを確認できます。この数を合計すると、「7月に製品を使った総アクティブユーザー」が算出できます。
例えば「1月のコホート」は、最初の月(1月)に12人新規ユーザーを獲得し、次の月(+1)に3人になり、さらに次の月(+2)には2人になりました。(一度利用をやめたユーザーが再度使い始めることもあるので、この数は途中で増えることもあります)
ここで重要なのは、各月に「アクティブユーザー」としてカウントするのは1ユーザーあたり1回だけである点です。例えば、あるユーザーが同じ月に何度も製品を使ったとしても、1回としてカウントします。
三角チャートの読み方(右揃えの場合)
左揃えの図はカレンダー月ごとの分布が読みづらいですね。
各行の値を右側に揃えることで見やすくなります。
データ自体は左揃えの三角チャートと同じです。
折れ線グラフによる表示
(特にデータサイズが大きくなった場合)具体的な数を見るよりも、図として読めるほうがわかりやすいです。先の三角チャートを折れ線グラフにすると以下のようになります。
コホート・リテンションカーブの基本概念
上の折れ線グラフでは、各コホートのラインがグラフ上に描かれています。縦軸は、コホートのうちどれくらいのユーザーがアクティブであるかを示し、横軸は、時間(例:1か月後、2か月後)を示します。
初期のコホートはデータが豊富ですが、新しいコホート(例:6月、7月)はデータポイントが少なくなります。
よいコホート・リテンションカーブは、途中で平坦になるカーブです。たとえ新規ユーザーの80%が離脱していても、残りの20%が使い続けてくれれば成功と言えるのです。
友人や投資家に「80%のユーザーがすぐに離脱している」と言うと、ネガティブな印象を与えるかもしれません。しかし、20%のユーザーが安定して製品を使い続ける場合、そこには大きな可能性があり、「一定割合のユーザーが製品を望んでいる」という強力な証拠なのです。
逆に注意しなければならないのは、コホート・リテンションの値自体は悪くなくても、カーブが平坦にならず常にユーザーが離脱し続けている状態です。これはサービスが持続しない可能性を示唆します。
コホート・リテンションカーブを平坦にすることは、スタートアップの成長において最も重要な要素です。
カーブが平坦になる → 製品の価値が認められた証拠
カーブが平坦にならない → まだ「人々が望むもの」を作れていない
平坦なカーブを目指して製品を改善し続けることで、大規模なユーザーベースを築く道が開けるのです。
次回は「自分を欺く間違った測り方とその対策」についてご紹介します。
次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。