プロトタイプ(MVP)のお作法〈4〉|有名スタートアップたちのMVP
本シリーズは、Y Combinatorの元CEOであるマイケル・サイベル(Michael Seibel)の解説を基に、MVP(Minimum Viable Product)の「お作法」についてご紹介します。
今回は、今では有名ないくつかのスタートアップのMVPについてご紹介します。どんな企業にも創業期はあり、その時に作られたMVPというものが存在するのです。
📍 MVPのお作法
MVPを作る最良の方法と間違った方法
アーリー・アダプターという人種を理解せよ
偽スティーブ・ジョブズの罠
いくつかの例
本当に必死な顧客をターゲットにする
どうやって素早く作るか
4. いくつかの例
YC発の有名企業の例をいくつか見てみましょう。
これらの例では共通する3つのポイントがあります。
まず、どの製品も開発に時間をかけずに素早く市場に投入されたことです。
次に、それぞれの初期バージョンは非常に限定された機能しか持たなかったということ。
そして最後に、これらの製品はすべて特定の小さなユーザー層をターゲットにしたものでした。
これらの創業者たちは、「すべての潜在顧客のニーズを満たす製品」を目指すよりも、「少数のユーザーに愛される製品を作る」ことが、はるかに重要であると理解していました。
Airbnbの初期バージョン
初期のAirbnbは、現在の姿からは想像もつかないほどシンプルなものでした。当時のAirbnbを使った場合、次のような「欠けている」体験がありました。
決済機能がなかった
Airbnbを通じて宿泊先を見つけても、支払いは別の方法で行う必要がありました。
地図機能がなかった
宿泊施設の場所を地図で確認することができませんでした。これは、今では基本的な機能の一つと考えられます。
エアベッドでの宿泊のみ
初期のAirbnbでは、自宅全体や部屋の貸し出しはできず、エアベッドでの宿泊に限定されていました。
会議やイベント専用
Airbnbは特定の都市で会議やイベントが開催されるときだけ稼働し、それが終わると停止していました。
Twitchの初期バージョン
Twitchのスタートは、もともと「Justin.tv」という名前のウェブサイトでした。このサイトでは、創業者の一人であるジャスティンがカメラを頭に装着して、24時間365日自分の生活を配信していました。初期のTwitchには以下のような特徴がありました。
1ページのみ
ウェブサイトには1ページしかなく、その中には1人のストリーマー、ジャスティンしかいませんでした。
ゲーム配信はほぼなし
たまに「ギターヒーロー」などのゲームを配信することはありましたが、主な内容は彼の日常生活でした。
コストが非常に高かった
動画の配信には莫大な費用がかかり、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)を利用していましたが、まだ独自の動画システムを構築していませんでした。
Stripeの初期バージョン
Stripeの初期バージョンは現在のような洗練された製品とはかけ離れていました。当時はまだStripeという名前ではなく、「/dev/payments」という名前で提供されていました。
大手銀行との提携なし
大手銀行ではなく、小さな銀行との提携で運営されていました。
手動作業によるアカウント設定
APIを通じた自動化はなく、毎晩手作業で銀行に書類を提出し、アカウントを設定していました。
APIの機能はほとんどなし
APIは非常に基本的なもので、例えば当時のTwitchではこの製品を使えないほど機能が限定的でした。
しかし、このシンプルなサービスが、初期のY Combinatorスタートアップのような顧客にとっては十分なものでした。彼らは単にクレジットカード決済を受け付けられる方法が欲しかっただけで、StripeのMVPはそのニーズを満たしていたのです。
次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。