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資金調達についての7つの幻想〈2〉|複雑で、時間がかかり、高価であるという幻想

本シリーズは、Y Combinatorのグループパートナーであり、投資家でもあるブラッド・フローラ(Brad Flora)氏の解説動画を基に、スタートアップの資金調達の実際をご紹介します。

今動画では、資金調達に関する7つの"神話"(間違った幻想)と題して解説されています。


📍 資金調達についての7つの幻想

  1. 資金調達は華やかであるという幻想

  2. スタートアップを始める前に資金を調達しなければならないという幻想

  3. 投資家を納得させるためにはスタートアップが「印象的」でなければならないという幻想

  4. 資金調達は複雑で、時間がかかり、高価であるという幻想

  5. 資金調達をすると会社の支配権を失うという幻想

  6. 資金を調達するには人脈や学歴が重要という幻想

  7. 投資家に拒絶されるスタートアップは悪いスタートアップだという幻想



4. 資金調達は複雑で、時間がかかり、高価であるという幻想

多くの創業者は、資金調達は非常に手間がかかり、法的な複雑さや多額の費用が伴うため、簡単にはできないと考えがちです。しかし、この幻想は過去のものであり、特に近年では、初期段階の資金調達は驚くほど簡素化されています。

メディアやニュースで取り上げられる資金調達の多くは、大規模なシリーズAや成長ラウンドに関するものです。これらの記事では、巨額の金額を調達したことが書かれています。そして、そういった巨額な取引には、弁護士等の士業に支払うお金も高額になりがちです。

こうした報道を目にした創業者は、資金調達を始める前から「自分には難しいのでは」と不安を感じるかもしれません。しかし、初期段階の資金調達は、これとは大きく異なります。

現実:初期の資金調達はもっとシンプル

初期段階のスタートアップ(シードラウンドやプレシードラウンド)では、プロセスははるかにシンプルです。必要な手順は、短期間で低コストで完了することが可能です。

  • 規模が小さい:調達額は通常50万ドルから200万ドル程度。

  • スピードが速い:調達期間は数週間から数ヶ月以内で完了。

  • コストが安い:法律事務所に多額の費用を支払う必要はなく、多くの場合、手続きは無料または低コストで行えます。

SAFEの登場

2013年、Y CombinatorがSAFE(Simple Agreement for Future Equity)という資金調達の標準ドキュメントを作成しました。この文書が登場したことで、資金調達のプロセスは非常に簡略化されました。

SAFEの利点は以下の通りです:

  1. シンプルでわかりやすい

    • SAFEはわずか5ページの文書で、内容はシンプルです。

    • 主に話し合う項目は「調達金額」と「バリュエーションキャップ(将来の評価額の上限)」の2点のみです。

  2. スピーディー

    • 投資家との交渉を短期間で終えられます。

    • SAFEを使えば、契約書のやり取りが迅速に行えます。

  3. 低コスト

    • 法律家に依頼する必要がありません。

    • YCのウェブサイトから無料でSAFEをダウンロードし、そのまま利用できます。

SAFEは、convertible securityと呼ばれるものの一種で、類似したものにConvertible Noteというものもあります。

著者コメント


5. 資金調達をすると会社の支配権を失うという幻想

資金調達をすると決定権を投資家に奪われ、会社を乗っ取られる可能性があると心配する人もいるでしょう。

SAFEを使用する場合、創業者はボード席を譲渡する必要がなく、投資家に対する情報提供の義務もありません。これは、創業者が完全に会社をコントロールできることを意味します。

例として、Zapierが挙げられます。彼らは初期の資金調達を行った後、それ以上の資金調達を行わずに100百万ドルの年商を達成しました。


「資金調達は複雑で、時間がかかり、高価」という幻想は、過去のイメージに基づいたものです(*ただし、日本での状況は分かりません)。

SAFEのような新しいツールの普及により、資金調達は今や簡素化されています。このプロセスを正しく理解すれば、創業者は「資金調達の負担」に怯えることなく、自信を持って次のステップに進むことができます。

次回もお楽しみに。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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