スタートアップのピッチ文テクニック|いかにして即座に理解してもらうか
今回は、スタートアップを紹介するときのピッチ文、いわゆるone-line descriptionがどうあるべきかを、Y Combinatorでアウトリーチチームのトップを務めているカット・マニャラック(Kat Mañalac)氏の解説動画を基にご紹介しています。
一文ピッチの重要性
簡潔さが信頼を生む
明確なアイデアを持つ人は、短く分かりやすい説明ができるものです。複雑な概念でも、分かりやすい言葉で説明できることは、そのアイデアを深く理解している証拠です。
例:「Gmailを開発したPaul Buchheitの考えでは、”何かを少数の人にとても喜ばれる形で提供する方が、多くの人に少しだけ喜ばれる形で提供するより良い”」。ピッチもこれに似ています。口コミでの拡散効果
最も効果的で低コストの成長戦略は口コミです。人々がディナーの席やオフィスであなたの製品について話題にしやすくするには、説明が簡潔であることが重要です。多様なオーディエンスに対応できる
あなたのビジョンを説明するためには、投資家、潜在顧客、同僚、そして最終的には株主や一般のユーザーに向けても話せるスキルが必要です。一文ピッチは、それぞれの相手にわかりやすく説明するための土台となります。
一文ピッチを作る際のポイント
「何をしているか」から始める
一文ピッチでは、「なぜやっているのか」よりも、「何をしているのか」を最初に説明します。多くの人は、物語的に説明を始め、「なぜこの問題を解決したいのか」を語りますが、これはピッチでは適していません。相手が最初に知りたいのは、どんな製品やサービスなのかという具体的な内容です。例: YCのポートフォリオ企業「Pave」の場合、
悪い例:「私の友人たちはストックオプションについて混乱していて、それがストレスになっているのを見て腹が立ったので、この製品を作りました。」
良い例:「Paveは、企業がリアルタイムで給与計画、コミュニケーション、ベンチマークを行えるツールです。」
前者は「なぜ」を語る一方、後者は「何をするか」を明確に示しています。
ジャーゴン(専門用語)を避ける
無意味なマーケティング的な言葉や専門用語は避けてください。相手が具体的に何をする会社なのか理解できるように説明することが重要です。悪い例: 「IndieCloudはナレッジシナジープラットフォームです。」
→ これは「何をするプラットフォームなのか」が全く伝わりません。良い例: Airbnbのピッチ(YC申請時)
「Airbnbは、旅行者がホテルではなく、地元の人々の部屋を予約できる最初のオンラインマーケットプレイスです。」
→ 問題を明確にし、誰を対象としているかも伝わるシンプルな説明です。
冗長を避ける
長々と話すのではなく、短く、簡潔にまとめます。相手がすぐに理解できるように、要点を明確に伝えましょう。例: 「OpenQは、ターゲットとなるB2Bユーザーを迅速に見つけて話せるツールです。」
→ 問題と解決策を簡潔に伝えています。
マーケティングスピークを排除する
説明において、必要以上の形容詞や売り込み感を出す言葉は控えましょう。「業界を変える」「画期的な」などの言葉は説得力を下げる可能性があります。具体性を持たせる
あなたの製品やサービスを再現するには何が必要かがイメージできる説明を心がけましょう。たとえば、「X for Y」(例: 「Airbnb for dance classes」)の構文を使う場合でも、どんな問題を解決するかを具体的に説明してください。
悪い例と良い例の比較
悪い例: 「IndieCloudはシナジーとナレッジを提供するプラットフォームです。」
→ 何をしているのか全く伝わりません。良い例: 「Airbnbは旅行者がホテルではなく地元の人の家を予約できるオンラインマーケットプレイスです。」
→ 短く、具体的で、問題と対象を示しています。
一文ピッチを磨くためのコツ
リハーサルを重ねる
ピッチは一度で完璧になるものではありません。何度も練習し、他者からフィードバックを受けましょう。異なる相手に試す
投資家、ユーザー、同僚など、異なる視点を持つ人々にピッチを試し、どの部分がわかりやすく、どこが曖昧かを学びます。エレベーターピッチを想定する
エレベーターに乗っている短時間で自分の会社を説明するイメージで、簡潔なピッチを用意しましょう。
一文ピッチを通じて、誰もがあなたの事業を簡単に理解し、他者に伝えたくなるような説明ができるようになることが目標です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。