ディベロッパーツール企業の作り方〈1〉|開発を始める前に
ディベロッパーツールというのは、開発者が製品を構築するのを支援するためのソフトウェアのことです。
Node.jsやLangChainなどの開発の中身のライブラリーやフレームワーク、StripeなどのAPI経由のツール、AWSやFirebaseなどのホスティングサービスなど、色々なものがディベロッパーツールに該当します。
ウェブ系の製品を開発する上では、何も利用していない人などいないはず。デベロッパーツールの市場は広範囲にわたり、非常に多様です。GitHubやPostmanのような製品も、かつてはシンプルなツールから始まりましたが、現在では非常に多くの組織に採用されています。
本シリーズ(全4回)では、そんなディベロッパーツールを提供する会社を作り、運営していく上でのノウハウを、algolia創業者のニコラ・デセーニュ(Nicolas Dessaigne)氏の解説動画を基にご紹介します。
第1回では、会社や開発を始める前のポイントについてご紹介していきます。「スコープ」のようなものですね。
📍 ポイント
会社を始める前のポイント
何から始めるべきか
オープンソースにするべきか
収益化・販売戦略
創業チームとアイデアの見つけ方
創業チーム
開発者自身が開発するのが重要です。開発者は自分が使いたいツールを作り出すことが多いため、より実用的な製品・優れた製品を生み出せます。
良いアイデアとは?
良いアイデアかどうかを確信するのは困難です。今日ではAIや他の進化した技術があり、以前は「悪いアイデア」とされていたものが成功することもあります。
「開発時(build-time)」と「運用時(run-time)」のアイデアの違いも重要です。
開発時のツールとは、開発プロセスを助けるツールで、なくても良い」場合が多いです。
一方運用時のツール(APIやデータストレージサービスなど)は、運用に欠かせない「必須ツール」であることが多いです。
使用頻度が高いツールかどうかも重要です。
顧客が頻繁に使うツールは、製品の価値を高めます。Stripeのように顧客が製品を販売するたびにツールを使用するようなケースは理想的です。
他の回でも、決済に近いサービスは成功確率が高いという話がありましたね。これはディベロッパーツールに限らない重要なポイントです。
ホスティングサービスというアプローチもあります。
Next.jsなど、オープンソースライブラリやフレームワークから収益を得るためには、ホスティングサービスを提供する方法が一般的です。
AIと大規模言語調査モデルの潮流
現在、LLM(大規模言語モデル)に関連する新しい開発者向けツールが多数生み出されています。それ自体は素晴らしいことです。こうしたLLMを活用する企業を支援する開発者ツールに取り組むことは非常にエキサイティングです。
しかし同時に、この市場はまだ非常に初期段階にあります。
例えば、明らかに有望なアイデアとして「LLMの観測性(LLM Observability)」が挙げられます。これを必要とする人々、つまりLLMを利用している企業は、自分たちのモデルがどのように機能しているかを把握したいと考えています。
評価可能な仕組みを求めるのは自然なことです。
しかし、同じことを考えている企業が他にもたくさんあります。数十社、多ければ数百社もの競合企業が存在しているのです。これは「悪いアイデア」というわけではありませんが、この分野で参入する場合、どのように差別化を図るのか、あるいは競合他社に対してどのように優位に立つのかを明確にする必要があります。
始める前のよくある間違い
完璧なアイデアを待つこと
完璧なアイデアは滅多に見つかりません。「十分良い」アイデアで始めてみて、途中で学びながら修正することが重要です。
間違ったアイデアに固執すること
YCのスタートアップの50%は、初年度でアイデアをピボット(方向転換)します。ディベロッパーツールでも同様に、柔軟性を持つことが重要です。
ビジネス創業者が必要と考えること
「自分たちには売るスキルがないからビジネスパートナーが必要」と考える人がいますが、これは間違いです。実際、Y CombinatorのDevTools企業の74%は、技術者のみのチームで始まっているのです。
次は、いよいよ会社を始める時期のポイントについてご紹介していきます。
次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。