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シンプルな物づくりの難しさ

デジタルなデザインでもリアルなプロダクトでも言えるのだけれど、シンプルなものを作るのって本当に難しいなと思う。

「装飾しないでいいなら簡単じゃん」って思いがちだけれど、そうでもない。余計なものがないからこそ誤魔化しが効かない。

ボードゲーム制作をしてみるとつくづく思う。「これじゃシンプルすぎないか? もう少し練られていないといけないんじゃないか?」と思うことはざらで、いろいろ試してみたりして、結局ピンとこないままお蔵入りになってしまったりする。(おかげで僕はいまだに作品をひとつも作れておらず、このままだと一生ボードゲームデザイナーを肩書きに追加することはできそうにない)

弊社のミヤザキはその辺り、巧みだなと感じる。普段の考え方をとってもそうだけど、シンプルに仕上げることが本当に上手。明確なテーマをシンプルな形で表現することにかけては、数多のボードゲームデザイナーの中でも随一なのではないかと(身内ということを差し置いても)思う。

新作のサバンナテリトリーだってそうだ。

このゲームはとてもシンプルだ。エリア分けされたボードがあり、プレイヤーはその上に順番に動物のコマを置いていくだけ。動物は4種(4色)あり、同種が隣り合ったら脱落。最後まで置き切れたら勝利。それだけである。

物足りなさ恐怖症を拗らせると、これじゃダメじゃないかってきっと思い始める。それぞれの動物に固有の特殊能力持たせてみたり、ボードに描かれた地形に意味を持たせたりする。

それはそれで間違いではないし、よりゲームが面白くなる可能性もあるのかもしれない。もちろん作り上げることはより大変になるけれど、その歯車がうまく噛み合えば「これでこそゲーム作りだ」なんて満足感も得られるだろう。

だが、あえてそれをしなかった。理由はいろいろある。例えばその方が4色定理のゲームであるというテーマ性が明確になる。煩雑にすればプレイ時間は伸びるし、そうなるとカジュアルに遊ぶゲームではなくなってしまうかもしれない。対象年齢も上がるなど、やはり代償は出てくる。

今作で目指したのは「定番」だ。新しいスタンダード。将棋やチェスみたいになんて言ったら大袈裟だけれど、いろんな家庭に置いてもらいたいと思っている。しかもそれは、お気に入りの本や絵を飾るみたいに何気なく置いてもらいたい。

目につくところにはあるけれど、普段は気に留めない。ふとした時に手に取って、カジュアルに遊ぶ。堅苦しさはなく、少し遊んだらすぐにしまってまた飾ってくれればいい。そんな製品だ。

これは個人的な意見だがはっきり言ってしまうと、サバンナテリトリーはそのシンプルさゆえに誰でも遊べる一方で、楽しめる人を選ぶゲームだとも思っている。複雑な歯車が美しく噛み合うようなシステムに慣れていて、そういうゲームを求めている人にはnot for meなことは間違いないし、オススメしない。

それで良い。

サバンナテリトリーはシンプルなゲームだ。「それだけ」なゲームである。大きな注目を浴びるような要素はないかもしれない。でもそれで良い。それこそが目指した場所だから、それで良いのだ。

「それだけ」であること恐れない。「それだけ」で勝負をする。伝えるべきことが装飾に紛れて見えづらくなってしまうことの方が問題だ。そんなシンプルなやり方をミヤザキは続けていくだろう。ちなみに制作中の新作もまさにそんな感じで、こうやってデザイナーの色は染み付いていくのだなと感心している。

以上が思い立って書き留めておきたかったこと。以下はせっかくなので宣伝。

サバンナテリトリーはバンソウ公式ECで販売中。またゲームマーケット2020秋の会場でも頒布するので、会場に来られる方で興味を持ってくださった方はご予約いただけると嬉しいです。


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