見出し画像

#4 3世代でつなぐ「おばあちゃんのお漬物」体にやさしい菊芋とマコモタケとは!?

芦屋港レジャー港化に向けた町の賑わい創出として、町内事業者一人ひとりに話を聞き、その魅力を発信する「あ!48(あしや)stories」です。まずは、レジャー港化に伴う機運醸成事業に関わった事業者から取材をしていきます。

「おいしいお漬物があるよ」と聞きつけてやってきた株式会社NAOでは、中野菜穂(なお)さん・奨悟(しょうご)さん親子が迎えてくれました。菜穂さんはお漬物の食品卸・運送の会社を立ち上げ、息子の奨悟さんは祖母ひさえさんの指導のもと、お漬物づくりとマコモタケの畑仕事に挑戦しています。新たな挑戦を始めたお二人に、菊芋とマコモタケを扱うきっかけや畑仕事の様子をお聞きしました!


お漬物の販売
(店頭販売は行っていません。電話での注文のみとなります。)
TEL:093-701-6288(平日 9:00~16:00 のみ)

Q どんな商品を扱っていますか?

菜穂さん菊芋のお漬物とパウダーを販売しています。お漬物は白米と食べるのもいいですし、お酒にもよく合う一品です。パウダーは少し甘いのでそのまま飲めますが、味に抵抗がある方はカレーや味噌汁に入れたり、息子はプロテインに入れたりして飲んでいます。

菊芋のパウダー(80g¥1,300)

今の季節はキュウリの粕漬け、3~5月はツボミナ、6~9月にはらっきょうのお漬物などを販売しています。

価格は種類による

Q 菊芋とマコモタケはどんな食べ物ですか?

菜穂さん:どちらもスーパーフード(※1)です。
  菊芋は血糖値の上昇を穏やかにするイヌリン(※2)を多く含むので、糖尿病の予防に効果的です。キク科の植物で、見た目はショウガにも似ています。生で食べるとシャキシャキ、加熱するとホクホクの食感です。熊本県で既に普及していて、八百屋やスーパーに並んでいます。
  マコモタケは食物繊維が多く、便秘解消の効果があります。分類としてはイネ科で、サトウキビのように緑の茎を剥いて中の白い部分を食べることができます。うちでは無農薬・無肥料で育てています。昔、お釈迦様がその葉でムシロ(敷物)を編み、その上に病人を寝かせて治療したという言い伝えのある植物です。
(※1)栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品。
(※2)水溶性の食物繊維。

収穫したての紫菊芋

Q なぜその二つを栽培し始めたのですか?

菜穂さん:母が糖尿病になった時に、イヌリンの豊富な菊芋を食べることで数値が大幅に改善したんですよ!効果を感じた母が育て始め、保存のためにお漬物にしています。
 マコモタケは、ぐんぐん育つ姿に魅力を感じたので今年から栽培を始めました。九州にはあまり普及していないので、チャンスだと思ったのも理由です。栽培している方から株を分けていただき、自社トラックで運んできました。

Q 菜穂さん、奨悟さんお二人のことを教えてください!

菜穂さん:隣町で生まれたので、芦屋町にもなじみがあります。趣味は旅行で、昔はバックパッカーとして海外40か国ほどを渡りました。印象に残っているのがネパールの今は亡きムスタン王国です。標高約4,000mという険しい場所でも農業を営む人がいて、衝撃を受けました。日本を出たことで、環境や文化、暮らし方の違いをはっきりと感じ、価値観が大きく変わりました。

奨悟さん:私は水産高校出身なので、まさか農業をするとは考えていませんでした。でも、祖母が高齢となり今後を考えたときに、「昔から家族みんなで親しんできたお漬物が食べられなくなるのは寂しい!」と思いました。

Q なぜ芦屋町で開業しましたか?

菜穂さん:実家がある遠賀郡で物件を探していたところ、別の運送業者が立ち退いた場所があったので、ここに決めました。
去年、芦屋港活性化推進室が主催のあしや産品つくり講座(※)に参加し、新商品をつくることができました。商品開発に関する様々なアドバイスをいただき、それまで定まっていなかった商品の方向性が決まりました。

(※)芦屋町の特産品づくりを目指して、町内の事業者や居住者を対象に商品開発についてのアドバイスを行った講座。

Q どのように役割分担をしていますか?

菜穂さん:母が息子に漬物作りを伝授し、畑仕事のアドバイスもしています。今は息子がマコモタケ畑を管理していますが、後々は菊芋畑も母から受け継ぐ予定です。私が漬物等の営業で、近隣のお弁当屋さんや関東のオーガニックレストランに卸しています。冷蔵便の運送料が高いので、自分で運送業の会社を立ち上げました。社員の苦労を理解するために、トラックの免許を取り実際に運転もしていました。

奨悟さん:畑仕事を始めたばかりなので、毎日試行錯誤しています。マコモタケは株が1年で10倍に育つのですが、そのスピードに驚く暇もなく、植える場所を確保しないといけません!来年植える土地を確保しましたが、そこに雑草が生い茂っているので、畑として整えるまではまた一苦労です。

植えて2か月ほどが経ち、株が増えたマコモタケ

実はマコモタケを植えてから、全部枯れてしまったことがありました。でもその後、なんと枯れた部分と違う茎が生えてきたのです!間違って踏んでしまったときも、めげずに生えてきてくれました。そんなマコモタケの強さに、いつも元気をもらっています。

Q 日々、大切にしていることは何ですか?

菜穂さん:「行動あるのみ」ですね。動き出してみないと失敗すらできないじゃないですか、そんなのもったいない!失敗をして、原因や改善点を見つけることで成長していくので、どんどん行動に移します。

毎日の仕事は大変なことばかりですが、辛いときがあるからこそ、嬉しいことが何倍も嬉しく感じられます。例えば、リピーターのお客さんから「おばあちゃんのお漬物の味、ちゃんと継承しとってよ!新商品出たら買うけぇね!」と声を掛けていただくことがとても嬉しいです。

奨悟さん面倒くさいと思うことこそ、すぐに取り組むことです。例えば、草抜きの際にはいったん畑の水を抜いて、人が入れる硬さにします。雑草を抜いたら、また水を入れるという手間暇のかかる作業です。しかし畑の環境を守り、周辺の畑に虫が移って迷惑をかけないためには大事な作業です。
畑ではいつもマコモタケに声を掛けていて、愛着が湧いてきます。その愛情を受けておいしく育ってほしいです。

Q 芦屋港がこんなふうになったらいいな!というイメージはありますか?

菜穂さん:私は温泉や酵素風呂でゆったり過ごしたりして疲れをとるので、そういった癒しの施設ができると嬉しいです。
以前兵庫県の淡路島で、海の見える店で地元の玉ねぎを使ったパスタを食べましたが、格別でした。芦屋港にも、海を見ながらそこで獲れた魚を食べられるレストランなどができるといいですね!私自身はゆずを育てて、ゆず味噌やゆず胡椒などを作りますが、やはり身近な土地でとれたものを使った料理は一段とおいしく感じます。

Q これから挑戦したいことはありますか?

菜穂さん:まずはマコモタケの初収穫がうまくいったら、来年は畑を広げて収穫量を増やしたいです。また、食用部分はそのままや加工品として販売し、葉の部分を御座や石鹸、さらにはマコモ茶として製品化したいです。
商品は決して安売りをしないと家族で決めています。「良さを理解してくれる人に届けたい」という思いで、これからもお客さんや商品を大切にしていきます。

「おばあちゃんのお漬物を受け継いでいくんだ」と熱心に畑仕事に取り組む奨悟さんと、それをいろんな人に食べてほしいと食品卸・運送業を始めた菜穂さん、お二人のまっすぐな思いが伝わってきました。昔から当たり前にあった祖母ひさえさんのお漬物が、これからも家族団らんの真ん中にありますように。菊芋の新商品とマコモタケの成長にも、期待が高まりますね!

おまけ

7月が旬のキュウリの粕漬けは、しっかりと浸ってご飯の進む濃い味の一品!柔らかいのにシャキシャキの食感は残っていて、やみつきになります。                            
                            (文―上田裕菜)

いいなと思ったら応援しよう!