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♯22 赤紫蘇の効果を最大限に引き出した化粧品は、世界初の試み!
芦屋町の夏井ヶ浜近くに構える大きな白い建物は、自然派の化粧品やヘアケア商品を開発・製造・販売する“パルセイユ株式会社”の工房です。その代表 金井誠一さんは、「肌にやさしい」を突き詰めた自然派商品を生み出しました。起業するまでの経緯や芦屋町ならではの商品づくり、芦屋港の活用についてお話を伺いました!
パルセイユ株式会社
〒807-0141 福岡県遠賀郡芦屋町大字山鹿814-1
TEL: 093-221-3005
コスメショップ 定休日:水・日・祝 営業時間11:00〜16:30
パルナチュレ 定休日:水・日・祝
営業時間:【ランチ】11:00〜15:00【カフェ】11:00~16:00(L.O.15:30)
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Q 大きな建物ですが、どんなお店ですか?
「自然本来の感覚を呼び起こす」をコンセプトに、「パルセイユ」という会社で自然派の化粧品を作っており、コスメショップで商品を販売したり、石鹸づくりワークショップなどを開催したりしています。併設しているカフェ「パルナチュレ」では、添加物を使わないベジプレートやパスタ・ケーキなどを提供しています。
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Q どうして無添加の化粧品やヘアケア商品を作り始めたのですか?
私自身の体験が理由となっています。昔合成洗剤を扱うメーカーに勤めていて、その頃から肌が荒れていました。北九州市出身なので工業地帯も近く、化学成分の影響だとあきらめていました。しかし、その後無添加化粧品メーカーに転職し、そこの石鹸を使い続けていたら皮膚科に通っても治らなかった肌の不調が改善されたんです。その時に、「無添加石鹸がこんなにも体に良い影響を及ぼすのか!」と驚きました。頭皮の荒れも改善するために、肌に優しいシャンプーを開発したいと思いましたが、会社の方針などもあって実現が難しい状況でした。雇われている立場だと、自分の夢を実現するには限界があると感じ、起業しました。そこで無添加の化粧品やヘアケア商品の開発に取り組み始めました。
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Q 2005年に起業してから、どのように会社を運営してきましたか?
実家のある隣町で起業して、自宅の100坪ほどの工房で始めました。当社が脚光を浴びるきっかけとなったのが、マカロンやケーキのような形をしたスイーツ石鹸です。全国版のテレビ番組にも取り上げられ、カラフルでかわいいと話題になりました。
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会社設立から10年ほどたった時に、工房を拡大して、カフェも併設したいと思い広い土地を探していたところ、芦屋町の自然豊かな環境が、自社のイメージにぴったりだと思い、ここに新たな拠点を置きました。拠点を移してからは、ハーブ園を作り約8種類のハーブを育て、種まき→栽培→収穫→原料抽出→原料ブレンド→品質管理→製品製造→製品出荷まで全て自社で行えるようにしました。
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使う素材・加工の仕方、パッケージングまで自然派という軸がぶれないようにしています。また、自社で全て完結するので、お客様からの声をすぐ商品に反映できるのも当社ならではですかね。
Q 芦屋町だからこそ生まれた商品があるとお聞きしましたが・・・?
芦屋町の特産品である赤紫蘇や、海からとった塩は当社の商品作りに欠かせません。
代表的なブランド「SHIZOOJU」では600キロの赤紫蘇から、たった1キロしかとれない精油を入れた、シャンプー・オイル・マスクなどを展開しています。赤紫蘇は抗アレルギー・濃厚ポリフェノールで、ヒアルロン酸は200倍・コラーゲンは100倍に増えるという研究結果も出ていて、肌に優しく高い美容効果があります。実はこの赤紫蘇を化粧品の成分として世界で初めて登録したのが当社です。食品として認識されていた赤紫蘇の成分を化粧品に入れたいと思い立ち、アメリカと国内での審査を経て、やっと実現したのです。世界初の試みだったので、達成できた時はこの上なく嬉しかったです。
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2021年のサスティナブルコスメアワードのブロンズを獲得。
Q 今は関東にも取り扱い店舗が複数ありますが、どうやって商品を広めていったのですか?
当社はOEM(Original Equipment Manufacturing:他社ブランドの商品を受託製造する)が大きな割合を占めていて、全国の様々な企業から声をかけてもらい、イメージが合致したところと一緒に新製品を生み出しています。例えば、京都の電鉄会社が立ち上げたコスメブランドの開発をお手伝いし、そのブランドが高級ホテルや大手外資系ホテルなどのアメニティに採用され国内外にも広がりを見せています。
他社の目に留まるには、自社としての軸をぶらしてはいけません。自社では自分たちのやりたいことをぎゅっと詰めた商品を作り続けてきました。
Q お客様からどんな声がありますか?
当店のお客様はリピートが8割で、その中には20年使い続けてくださっている方もいます。SHIZOOJUは、「目に見えて肌質が改善した」「長年使っていると肌がぷるっぷるになった」という声をいただき、開発してよかったと心から思います。芦屋町の店に来てくださる方もいれば、関東の店舗でOEM製品を知り、ネットで購入してくださる方もいます。一度他社の商品を使ったら、肌が荒れてしまって当社の商品に戻って来てくださる方もいます。私自身の肌質が著しく良くなったように「当社の商品が肌の悩みを解決する選択肢の一つになりたい」というのが願いです。
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店舗にいらっしゃった常連さんから、「中学生の息子がニキビに悩んでいたんだけど、シズージュを使ってからニキビができなくなった!と喜んで使っています」と聞いた時は、喜びを隠せませんでした。
Q 商品ラインナップは多種多様ですが、これからさらにしたいことはありますか?
芦屋町ブランド認定品の金賞を狙っています。今は赤紫蘇エッセンス塩のど飴プレミアムと筑前芦屋釜すはま 霰が審査員特別賞をいただいていますが、金賞に届いたことがないので、今年こそは・・・と新商品を審査に出しています。そのうちの一つ、「芦屋町の旨味粗塩」はこれまで実現できなかった72.4%が塩分、30%近くがミネラルという奇跡的な数字を叩き出しました(市販の生成塩は塩分約99%でミネラルは微量)。海水に限りなく近いミネラルの豊富さを実現するまでには、製法の研究を重ねました。
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※取材時点では審査中でしたが、「芦屋町の旨味粗塩」が見事「芦屋町ブランド認定品 金賞」を受賞されました。おめでとうございます!
Q 次々と商品を開発する金井さんの、力の源泉はどこにあるんですか?
これまで内容も規模も異なる、様々なメーカーに勤めてきました。そこでの経験も糧になっていますし、長年実現したいことを思い続けると、寝ている間にアイディアや方法が降ってくることがあります。「物事を達成する姿を具体的に想像し、それを現在進行形にできるかどうか」が事業展開のカギです。商品を作り始めたら、思い描くものができるかわからないという不安にも駆られますが、実現に向けて試行錯誤する過程を楽しんでいます。
そして、強く思い続けると、不思議なご縁が寄ってきます。同じような製品を作りたいという企業から、新商品の企画提案をもらうこともありました。また、カフェをきっかけに当社の商品を知っていただくこともあります。
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Q 芦屋港活用のアイディアを教えてください!
自分の専門分野以外のことを考えるのは、あまり得意ではないんですが・・・
まずは知ってもらうための起爆剤が必要だと思います。人気テナントを入れたり、他地域にないものを目玉にしたり、そこからいかにリピートしてもらうかを考える、という流れですね。
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交通渋滞を防ぐために一か所に人を集中させるのではなく、町内周遊の仕組みがあったらいいと思います。飲食店と施設・スポットを盛り込んだマップを作成し、行ってみたくなるキャッチコピーなどを入れて、来た人に「おもしろそう、行ってみたい!」と思ってもらえるようにするなどですね。一か所で満足してもらうという目標より、芦屋港と複数の周辺スポットを巡ってもらって満足してもらう方が、広域的な発展が望めると思います。
パルセイユでは、自身の悩みを起点にした商品だからこそ、肌にいいものだけをというコンセプトを大切にしています。また、素材そのものを活かした製法にオリジナリティを感じました。例えば、自社のハーブ園で育てたハーブや地元の赤紫蘇を使ったり、塩にミネラルを多く残留させるなど、自然の魅力を最大限に引き出しています。
「人生の中で無駄な経験はない」と語る金井さんは、一つひとつの経験を糧に新規事業を絶え間なく展開しています。これからも、「美容のテーマパーク」がどのように広がっていくか楽しみです!