林道郎氏のセクハラとアカハラ報道について #私たちは驚きません
私たちは今週、美術手帳と日刊ゲンダイ、上智大学学生によるGender Equality for Sophiaの署名運動のページにより、林道郎氏のセクハラとアカハラ*についての報道を知りました。
林氏は2018年、私たちのプロジェクト「アート界のセクハラをなくしたい #私たちは驚きません 」に応援メッセージを寄せており、今でも明日少女隊のウェブサイトに掲載されています。
応援メッセージにはこちらです。
私たちは、「差別する側の(時に意図的な)盲目性」について語る林氏の言葉を信じ、応援メッセージを喜んで受け取っていたので、今回の事件を聞いて、裏切られた気持ちになりました。一方で、まさに私たちのプロジェクトのタイトル「#私たちは驚きません」の通り、またか、という気持ちにもなりました。
林道郎氏は、上智大学国際教養学部の教授を務めています。林氏は、被害者からの訴状に対する答弁書の中で、「指導教官という立場ではあったが自立した成人同士の自由恋愛をしていたに過ぎない」と主張していますが、学生は教授に評価をされる立場であり、その圧倒的な力の不均衡**がある中で「対等な自由恋愛」はなり立たないと私たちは考えます。今回の件に限らず、教授と学生の両方が同意の上の「自由恋愛」だとしたら、立場が上である教授が責任ある判断をして、学生の卒業まで待つことや自身が教授を辞めるということもできるはずです。しかし、林氏は、仕事や結婚など自分の立場や財産を守ったうえで、相手の状況を考えず被害者との関係を10年以上も続け、さらには無償のアシスタント業務を頼むなど労働の搾取***までしていました。これは彼にとってあまりにも都合が良すぎるのではないでしょうか?
また、今回のケースでは、明らかに学内で起きたセクハラ・アカハラ問題であるにもかかわらず、大学側が「当人同士の問題」とする不適切な対応も目立ちました。こちらに関しては、上智大学の学生たちの署名文に詳しいですが、大学側は問題を重く受け止め、林氏へ適切な処分をし、セクハラやアカハラについてのガイドライン作り、教授陣への教育を徹底すべきです。
被害者の方の苦しみは計り知れず、声をあげられた勇気に敬意と、連帯の意を表します。
この報道を受けて、honeyhandsのメンバーからは、「苦しい、悔しい。どうしてハラスメントをする人がハラスメントをなくすためのプロジェクトに賛同したんだろう/賛同できたんだろうと混乱し、ふつふつと怒りがこみ上げてきました…」という声が上がりました。
また、明日少女隊のメンバーからは、「こんな事件があると、フェミニズムの運動をサポートしてくれる男性を信用できなくなってしまう。このような人たちが、本当にハラスメントを無くそうと立ち上がっている男性の足まで引っ張っているのではないのか。最近思うのだけれど、平等を信じているとか、平等が大事と言うだけではだめで、平等な世の中にするために、男性にもちゃんと行動してほしい。男性同士で男性の加害性について語り合うグループ作りなどをしてはどうか。」という意見も出ました。
このようなケースでは、周囲の心ない言葉によって、被害者が2次被害を受けてしまうことも懸念されます。被害者の周囲の方、またオンラインでこの事件についてコメントされる方は、よろしければ私たちのプロジェクト「無意識に人を傷つけないために」を被害者への声かけの参考になさってください。
平等な世の中にするために、口先だけではなく行動で示すことが社会に広がることを願っています。
明日少女隊
honeyhands 一同
2021年9月25日
* アカハラ(アカデミック・ハラスメント):研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為。アカハラとセクハラが重なる部分もある。例えば、大学教授が研究生に対して、卒業単位を与える代わりに性的な関係を要求するといった行為はセクハラにも該当し、卒業単位を要求材料にしている点でアカハラにも該当する。
** 不均衡:二つ、またはそれ以上の物事の間に、力、数量、程度のつりあいが取れていないこと。
*** 搾取:他人の権利や利得を不正に侵害したり取得することや、優越的立場を乱用し他人を働かせて不当な利益を得ることを表す。一般的には、人を自分本位に、または非倫理的に利用することを言う。
「#私たちは驚きません」プロジェクト
「#私たちは驚きません」のプロジェクトは、ニューヨークのアート界の女性たちが書いた、アート界のセクハラに声をあげる#notsurprised公式書簡を明日少女隊が日本語に翻訳したことをきっかけにスタートしました。
美術業界にある、構造的な女性へのセクハラについて書かれた文章は、世界中の言語に翻訳され、多くの人から共感を呼びました。
その公式書簡の本文と、同時に発表された「セクハラの定義」の文の抜粋を掲載します。
『美術界で権力を持つ多くの機関や個人は、フェミニズムのレトリックと理論上の公平を支持しますが、実際には抑圧的で有害な性差別主義者の規範を温存しながら、進歩主義的な政治の軽薄な主張から財政的利益を得ています。
これらの権力者は、日常的な事実であるハラスメントや人の品格を貶める行いを無視したり、弁解したり、犯したりしながら、さらに多くの深刻で違法な権力の乱用の受け入れと共謀する環境を作り出しています。』
#私たちは驚きません 公式書簡より
『被害者は、仕事中であったり、社会的なまたは個人的なつながりをとおして、加害者に遭遇する可能性があります。 被害者はやむなく、加害者との職場関係や社会的交流を保つかもしれません。 被害者は、ハラスメント行為に同意したり同じ考えであるかのように外見上では見え、加害者と関係を保ち、関係があるように見えるかもしれません。被害者と加害者が以前に合意がある関係であったとしても、被害者は受け入れられない状況に遭遇し、ハラスメントを受ける可能性があります。』
『セクシャルハラスメントは、被害者にとって非常に破壊的であり、深刻な心理的損傷を引き起こす可能性があります。 職場、学校、または組織的な環境で発生すると、仕事を成し遂げる能力に害を及ぼし、被害者の業績、キャリア、評判に害を与える可能性があります。
人間としての価値を、性の価値として判断されるのは、その人物の能力と功績をないがしろにします。』
セクシャルハラスメントの定義 より
2018年の「アート界のセクハラをなくしたい #私たちは驚きません 」より詳しくはこちらをご覧ください↓