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つくる・フォルスさんの「トランスの権利運動」にかかわるようになったきっかけ
今回、明日少女隊が一緒にイベントの企画&運営をする、つくるフォルスさんに「トランスの権利運動」にかかわるようになったきっかけを伺いました!以下、つくるさんからのメッセージです。
僕が「トランスの権利運動」にかかわるようになったきっかけは、遠方に住む友人からの一本の電話でした。
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唐突ですが僕は1945年8月6日の原爆投下で350人の命が失われた広島の学校の卒業生です。その関係で以前から反核反戦、そしてアメリカの医療制度改革を求める運動ではかなり活発に活動していました。
この友人は医療制度改革の運動を通して知り合ったニューヨーク•シティ在住の黒人バイ男性です。彼は敬虔なカトリックで自ら「保守」を名乗っていますが、政治課題別に議論するとお互いに共感するところも多く、時々近況や意見を交換しあっていました。
その彼が数ヶ月ぶりに電話をくれたのですが、その内容は、今日、アメリカで「トランスの権利」をめぐる議論の焦点となっている三つのことについて僕の意見を求めるものでした。
その三つとは以下のとおりです。
トイレの使用について:トランス女性/男性が自らのジェンダー•アイデンティティーにマッチするトイレを使う権利をめぐる論争
トランス•アスリートについて::トランス•アスリートが自らのジェンダー•アイデンティティーにマッチするチームあるいはリーグでプレイする権利をめぐる論争
主に未成年を対象とするジェンダー適合治療の是非をめぐる論争
これに対する僕の友人の意見は
トランス女性/男性は出生時の性にマッチするトイレを使うべき(つまり、トランス女性が女性トイレを使うのを認めない)
トランス女性/男性は出生時の性にマッチするチームあるいはリーグでプレイすべき(つまり、トランス女性が女性アスリートとしてプレイするのを認めない)
未成年を対象とするすべてのジェンダー適合治療を違法化すべき(性適合手術だけでなく、思春期抑制剤の使用など一時的かつ可逆的なものを含む)であり、トランスの人権侵害ともとれるようなものでした。
これらの点について彼の矢継ぎ早の攻撃を受けて、僕は少なからずショックを受けました。それまで、僕の意識の中で、これらの論点はアンチ•トランス過激派の「クレイジー」な人たちが用いている論法であり、それを身近な、ましてや親しい友人の口から聞くことになるとは思ってもみなかったからです。
特に、彼から言われたひとつのことが僕の心に深く突き刺さりました。
「トランスの人たちが自分のジェンダー•アイデンティティーにマッチするトイレを使いたいという気持ちはわかるよ。でも、「男性器をもった人が女性トイレに入ってくるのは怖い」という女性の『気持ち』は無視されてもいいの?」
「男性トイレにヴァギナ(女性器)が入ることではなく、女性トイレにペニス(男性器)が入ることを問題視してるんだよ!」
こう問い詰められて僕は黙ってしまいました。彼の露骨な言葉遣いに閉口したのもありますが、「社会的に女性」として認知される立場として50年間を生きてきて、僕も女性に対する社会的偏見や差別、そして性暴力にさらされてきたからです。女性にとって根本的に安全でない社会において、女性が抱える恐怖や痛みや怒りを無視、軽視するつもりは毛頭ありません。
それにしても、人としての存在を性器や生殖器のみに還元して捉えることにフェミニズムは反論してきたはず。でも、トランスとしての僕らの存在は性器や生殖器を主体として定義されるものになってしまっている、その現実に憤りも覚えました。
結局歩み寄りのないまま二時間にわたる論争を終え、電話を切った後、僕は精神的に疲労してぐったりしたまま、悶々として眠れない一夜を過ごしました。
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そしてその2日後にアメリカの下院に連邦法案として提出されたのが、「子供の純真を守ろう」という題名を盾に、未成年を対象とするジェンダー適合治療を違法化するばかりではなく、患者の年齢に関わらず、ジェンダー適合治療に対する国の助成金を断ち切り、大学医学部などの教育機関においてジェンダー適合治療を教えることを禁ずるという、つまり、「トランスジェンダー」の存在を全否定し、文字通りなきものとしようとする法案だったのです。
国が、少なくとも国の立法をつかさどる政治家が、僕の、僕たちの存在を認めないと言っている。僕は自分らしく生きたかった、ただそれだけなのに、その選択肢を許さないという、僕たちが人として生きるうえであたり前の権利を認めないというのですから、戦わないわけにはいきません。
それでも、正直言うと、時々泣きたい衝動にかられます。50歳にしてトランスとしてカミングアウトできた僕自身はこんなに幸せなのに、アメリカにも日本にも、現在の社会には、僕たちの存在を許せない/許さない人がたくさんいます。そして、その渦中にはただの「ヘイター」だけではない、自分の身の安全を真剣に心配したり、自分の子供の未来に心を痛めている人たちもいるのです。
その人たちを「TERF」と嘲笑う気は僕にはありません。彼らも、男、女という二元論の圧政の下敷きにされているに過ぎないからです。ほんとうは共通の敵(圧政者)がいるのに、僕らは戦わされているのです。ほんとうの敵は誰/何なのか、という対話にもっと多くの人を巻き込んでいくことが必要だと思います。今回、僕たちが取り組むアートは、その扉をひとつ開けることになるのではないでしょうか。
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