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もどってきたアミ〜小さな宇宙人〜 第1章:うたがいの気持ち

「アミ 小さな宇宙人」の執筆を手伝ったペドロのいとこ、ビクトルは小説家志望だ。
今は「ノミに姿を変えた宇宙人が地球人を操って地球の資源を奪う…」みたいな小説を書いていて、ペドロはそれを「バカバカしくてマンネリ化した退屈でグロテスクな小説だ」と思っていた。

そう思ってたことがビクトルに知られてしまい、
彼は気分を害し、ペドロのアミとの宇宙の冒険の事を
「ひょっとして夢だったんじゃないか?」
「一度も夢だと疑った事はないのか?」と言って来た。

最初は全く相手にしていなかったが、あまりにしつこく何度も聞いて来ては「本当だと言う証拠があるのか?」と言ってくる。

ペドロは悔しくなって、証拠としておばあちゃんに「宇宙のくるみ」を食べたことを認めさせようとするが、おばあちゃんは最近物忘れが激しくなったといい全く覚えていないという。

ビクトルは28歳の”大人”で、
「空にはたくさんの正体不明の光が現れているけど、そんなものは大気中の光の屈折かプラズマか飛行機としか考えられない。空飛ぶ円盤だなんて…現実と空想をごっちゃにするのはいい加減にしてもらいたいね」と理屈でペドロをねじ伏せる。
そして更に、
「宇宙人と話したとか他の星に行ったことがあるとか、そんな事ばかり言ってると気が触れたと思われて病院送りになるぞ」と言うのだった。

何度「本当なんだ!」と言っても信じてもらえず、
「じゃあ証拠はあるのか?」と詰め寄られるとペドロは何も言えなくなってしまう。

そしてある日、ペドロは初めてアミとのことを疑った。
もしビクトルの言うように全てが僕の夢で空想だったとしたら….
いやそんな事はあり得ない!でもどこに証拠があるっていうんだ?

眠れなくなったペドロは「アミ 小さな宇宙人」を読み返してみた。

そしてふと、あのアミと初めて出会った時の海岸の岩に、円に囲まれた翼の生えたハートのマークが刻まれていたのを思い出した!
全てが夢じゃなかったと証明するにはあの岩に刻まれたマークを確かめるしかない!

そしてビクトルにその事を告げ、マークを確かめに直ぐにでもあの海辺へ行こう!と誘うが、

「子供の空想や戯言になんて付き合いきれない!海は遠いし、俺はそんなに暇じゃない。お前本当に大丈夫か?頭がおかしくなったんじゃないのか?本当に心配になって来た」と言われ、
その憐れみに満ちた保護者みたいな声にペドロは
「僕は気が触れているのかも知れない…?」
そう自分を疑い始め、恐ろしさと不安でいっぱいになってしまう。

一刻も早くこの不安に終止符を打つには、
海岸に言ってあの岩にマークがあることを確かめる必要がある。

アミとの本当の宇宙の冒険を信じようともせず、いつまでも”宇宙人が地球を侵略する”みたいな下らない小説を書こうとして、
そのくせペドロの「素晴らしい空想」の力を借りようとしているビクトルに頭にきたペドロは、ついに頭に血が上り、
「ビクトルのバカバカしい下らない小説になんか興味ない!もう手伝わない!僕一人でも確かめに行ってやる!もう僕を訪ねて家に来ないで!」と本気で言った。

ペドロは悔しくてどうしても眠れない夜、涙を流す代わりに一時間以上も目を閉じて自分が海岸にいる様子をイメージした。

翌日ビクトルが何事もなかったようにペドロの元を訪ねてきて、
いつものように「小説(ビクトルの下らない宇宙の話)の続きを書こうぜ!良いアイデアが浮かんだんだ」と言って来た。

平静を装いながら勉強しているふりをして無視していると、
「海に連れて行ってやってもいい」とビクトルが言い出した。

ペドロを本気で怒らせてしまったビクトルは、その夜ペドロを海に連れて行ってやるかどうか考えていたら眠れなくなってしまったのだと言う。
自分の小説を完成させるためにもペドロの力(”子供の空想や戯言”)が必要だと観念したらしく、つまりペドロの機嫌を取る為に海に連れて行ってやることにした?

ペドロは、ビクトルの気がなぜ急に変わったのか頭をかしげたが、いずれにしてもやっと、
その週末ビクトルの車で海岸に行くことが叶ったのだった。

*******


ここまでが、もどって来たアミ 第1章です。

この章を読み解くにあたり、「ずっと信じていたものが揺らぐ瞬間」とははどんな時なのか?を考えてみました。

自分に自信がない時
周りからの圧に負けそうな時
信念を貫くことより大切なもの、を守る為

こんな感じでしょうか?

ペドロがビクトルにいわゆる”正論”的な事を何度も言われ、
証拠を出せ!と詰め寄られる中で、どんどんアミとの冒険が「夢だったのではないか?」と疑いを持ち始めて、自分が気が触れているのかもしれないと不安を募らせてしまうこの下りは、

スピリチュアルや宗教に関して少なからずある偏見と、怪しく思われないように興味がないフリをしたり、近しい人にだけはなんとか自分の良いと思っている思想や信じているものをわかって欲しいと願うような….現代のそれと共通していると感じました。


この第1章では、そう言う”思想”を持つ人を危険視する世の中でどう振舞い、どう信念を貫くべきなのか?と言うような実はすごく大変なことが書かれているように思いました。

アミ小さな宇宙人シリーズ、は「おとぎ話」ですので(笑)
宗教やスピリチュアルとは違うとは思いますが、でも”思想”と言う意味では同じ扱いをされる気がします。

私に関して言えば、スピリチュアルや宗教的な考えを信じるか信じないかと言うよりも、
アミ小さな宇宙人シリーズを読み解く中で感銘や刺激を受けたり、
新しい視点や、全てのものとのもっと繊細な関わり方(今まで知らなかった世界の見方)を知ることで得られる喜びを味わいたいという強い欲求があり、
そう感じる「偽りのない自分の感覚」を信じています。

すごく美味しいレシピを思いついたり、面白いアニメや映画を見たらその感動を誰かと共有したい!と思ったりする感覚に、近いものはあると思うのですが、
何より自分その知欲や発見への興奮で満たされていることが一番だと思っているので、
無理やり布教(笑)しようとは思いませんし、しません。
理解されなくても仕方ないし、
批判されたとしても、それによって自分の感覚(好きだ!と思った感覚やもっと知りたいと言う欲求)が揺らぐことはありません。

それは多分、自分の胸の愛に忠実に従えてるということだと思うし、いい意味で「孤独」だとも思います。
自分という殻の中に、偽りのない自分だけがちゃんと居る、みたいな感じでしょうか。

他人からどう思われるか?と言う他人軸で生きていると、
「他人の中の私」が疎外される危機感から自分の感情を抑えたり、自分の考えとは異なる方に迎合したりしがちなのかな、と思います。

たくさんの人に囲まれたり組織に所属していると当然の事ながらたくさんの考え方や”思想”が渦巻いていて、
もし自分というものを持っていなければ渦に巻き込まれてしまうでしょう。

気づけば「誰かの地図」に書かれた宝物を自分の宝物だと勘違いしてずっと探し続けたりすることになってしまいます。

会社や学校だけでなく「家族」という単位も「組織」の一つです。

近しい人(親など)からの、頭ごなしな一方的な”正しさ””常識””願望”は、
子供のような弱者にとっては絶対的な権力に近いものがありますし、
それを押し付けられた子供はだんだんと”大人の価値観””常識”に染められて行き、
自分で考え感じること、自分自身を生きるという術を持たなくなってゆく様に思います。

せっかく子供の心を持っている大人も、組織からの疎外(孤独)への恐れから自分を押し殺して楽な方(トラブルが少なく変人扱いされない方)へ流されて行ってしまうのです。

でも今、コロナで人との接触が減ってきていることで、なんとなく
必要のないコミュニケーションや、ストレス、損得勘定だけだった友人関係は淘汰されてゆき、本当に必要なコミュニケーションだけが残って行くような…そんな気がしています。

押し付けや義務感を感じていた場所から離れ、偽りのない自分で居られる場所だけにオンデマンドでアクセスし、必要なコミュニケーションや情報を得、発信ができる。
本当の自分で生きていける。そう言う時代が始まっている。
以前より人が愛に生きやすい世の中になりつつあるなと感じています。

本編に話を戻します。

ペドロが、アミとの冒険の証拠を確認しに海へ行くことをビクトルに拒絶され、頭がおかしくなったのか?と心配されたとき、
「悔し涙を流す代わりに、目を閉じて一時間、海岸に着いた自分をイメージし続けた」のは、明らかに瞑想であり、
叶ったヴィジョンをより具体的に強く頭に描くことで実現を引き寄せる、いわゆる「アファメーション」のようなものかな、と思いました。

そして、信念を貫き、掴みたい未来に近づくために出来ること、それは
「わかっている人にだけ届く形でいいから、本気で強いメッセージを送り続ける」
と言うことです。

本人は意識していなかったとしても、本気で放っているメッセージというのは同じアンテナを持つ人には届くものなんじゃないかなと思っています。

ペドロは自分の信念を曲げず、アミとの冒険の事は本当だ!と主張し続け、
ついには毅然とした態度でベクトルに接した事でその真剣さが伝わり、それはなんとなく聞き流せない形でビクトルの心に引っかかったのです。

ビクトルは”大人”だけど、小説家を志すという夢を持つ子供の部分も持っている”半分大人”の存在です。

宇宙の素晴らしい”空想”を話すペドロに対しての敬意も少なからず持っていたと思うし、そもそも「証拠を出せ」とか言ったことも、自分の小説をバカにしたペドロへの反撃、または嫉妬だったのでは?と思っています。

ビクトルの中に小さくとも確かにアンテナがあり、そこにメッセージが届いたのかもしれないな、と思いました。


本編よりも考察が長くなってしまいました..笑

実はこの「もどってきたアミ」は、全編を通して比較的辛辣というか、
自分の嫌な部分に目を向ける事、についての話が多かったように思います。

なので今後の章も、考察が長くなる予感です…
そんなところも含めてお付き合い頂けたら幸いです。


次回は、第2章 「岩の上にある(?)ハートのマーク」です。



前作「アミ小さな宇宙人」のログはこちらのマガジンからお読みいただけます。


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