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ラチャテウィーのレストランに流れる三つの川

僕がラチャテウィーに住んでいた6ヶ月は、それまでよりももっとタイの暮らしの深奥に潜り込めた期間だった気がしている。

ラチャテウィーはBTSサイアム駅(タイ随一の繁華街)から一駅の場所でありながら、少し路地を入っていくと一気にローカル感の増すエリアを有する。

そういうエリアに住んでいると、日本人であるというだけで目立ってしまい、通りを歩くだけで会釈をしてくれる人も増えてくる。

ここで紹介する「Kopi7」というレストランもその一つだった。

僕はここに来ると、いつもハンバーガーを注文した。バンズの間にふんだんに挟まれているレタスや玉ねぎやトマト、風味豊かな牛肉のパティ、どこか甘さを感じるソース。これらが一丸となり、最強のハンバーガーを作り上げている。

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料理が美味しいのはもちろんだが、愛想のいいお店の人達が、物珍しげに話しかけてきてくれるのが、なんだか嬉しかった。しかしずっと詮索するように話しかけてくるのでもなく、丁度良い距離感を保ってくれる。

それはまるでこのお店で飼われていた、子猫の「チャーイエン」がとる距離感のようだった。(「チャーイエン」はタイ語で「冷たいお茶」の意味。毛色がお茶っぽい色であることがその名の由来だそうだ。)

「チャーイエン」は「Kopi7」の店内を自由に歩き回る。僕の足に擦り寄ってきたり、はたまた素っ気なく店の外を眺めていたり。

それはお店の人達が、僕の気分を窺うわけでもなく、思うままに話しかけてきたり、あるいはそっぽ向いてスマホを触ったりするのによく似ている気がした。

そういう自然な気持ちの空気の行き交う空間が、妙に居心地が良くて、僕はこの店で、気ままに一人でいるような、誰かが側にいてくれるような、不思議な感覚を抱いた。

こういうところが、僕はタイ人のすごいところだと思っている。猫のような距離感。寂しくもない、苦しくもない、僕も僕のままでいられる。

とてもいいレストランだったなと思うし、おそらくこういう心地よいレストランが、タイの至るところに在るということは、想像に難くない。タイ人がやってるレストランなのだから、絶対に居心地がいいに決まっている。

お店の人が出してくれたタイティーの香りが立つ店内の片隅、チャーイエンの茶色の背中の毛が揺れる。僕とお店の人とチャーイエンと。三つの川が同じ世界線で別々に流れる。

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