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自分のカラダを知って、自分にやさしくできる選択を。中村寛子×寺尾彩加×小林味愛(前編)

日々うつろいゆく私たちの心とカラダ。生理、尿もれ、デリケートゾーンのトラブル。そんな女性特有の悩みに寄り添ってくれるプロダクトやサービスが生まれています。

選択肢をもって、自分を知ることができたなら、きっと自分にもっとやさしくできるはず。

女性の健康課題を解決するfemtech(フェムテック)のセレクトショップを運営するfermata(フェルマータ)の中村寛子さんと、吸水型ショーツを展開するPeriod.(ピリオド)の寺尾彩加さん、デリケートゾーンケアブランド明日 わたしは柿の木にのぼるの小林味愛が、女性の心とカラダのヘルスケアをテーマに語り合いました。

女性の悩みに寄り添うフェムテックの日本市場をつくる


小林味愛(以下、小林): 今日はありがとうございます!おふたりとお話しできること、とっても楽しみにしていました。

中村寛子(以下、中村): お声がけいただけて嬉しいです。

寺尾彩加(以下、寺尾): よろしくお願いします!

小林: まず、それぞれが今の事業を始めるきっかけについてお聞きしたいです。中村さんはfermataをどんな経緯で始められたんですか?

中村: もともと私、10代の頃から月経が重くて。生理は痛くてつらいもの。仕方ないと思っていたんですが、イギリスに留学したときに、ユースクリニックで無料で低用量ピルを処方してもらったんです。飲み始めたら、人生が変わったんですよね。生理中も快適に過ごせるようになって。

小林: おお。

中村: 帰国して働き始めたんですが、日本で低用量ピルを処方できるのは、産婦人科かクリニックしかなくて、9時〜17時までしか開いていない。就業時間と重なるので、有給を取るか、昼休みにタクシーを飛ばすか。その頃から、働く女性のヘルスケアに課題意識を持ち始めていました。

画像1(fermata co-founder/CCO 中村寛子さん)


中村: 20代の頃って体力もあるから無茶をしちゃっていて、31歳のときに心もカラダもボロボロになって倒れちゃったんです。それで、会社をスパッと辞めました。

寺尾: へえ。

中村: その後、ビジネスカンファレンスってなんで男性ばっかりなんだろうという疑問も持っていたので、性別も国籍も職業も異なる人たちでつくるカンファレンス「MASHING UP」を企画したんです。そのセッションの中で、50代の女性が「更年期でキャリアがブレる」とおっしゃっていて、ええ!って。やっぱりウェルネスの視点を持ってキャリアを形成していかなきゃ、と課題意識を強くしたタイミングで、fermataの共同創業者、Aminaに出会ったんです。

小林: そうだったんですね。

中村: 2年前のGWにAminaとふたりで合宿をして事業構想を練って。当時は卵巣年齢がわかるプロダクトをつくろうと思っていたんですよ。でも、フェムテックのマーケットマップを作成してみたら、海外には200社以上あるのに9割以上日本に入ってきてないことがわかって。そもそも日本に市場がなければ、いいものをつくっても届かない。だったら私たちは、日本でフェムテックの土壌を耕すことから始めようと。それで2019年の9月に「Femtech Fes!」を開催したんです。

画像2最新のフェムテック国内マーケットマップ 2020 秋冬版。97サービスが参加。
出典:fermata inc.( https://note.com/hellofermata )


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フェムテック海外マーケットマップ 2020 秋冬版。35カ国484社が参加。
出典:fermata inc.( https://note.com/hellofermata


寺尾: ちょうどそのときに遊びにいかせてもらったのが出会いでしたよね。

中村: ですね!Femtech fes!は2500円で高めな価格設定をしたんですが、100名以上の方が申し込んでくれて。そこから、女性のウェルネスの課題を解決するプロダクトを紹介して、悩みを共有する場所をつくろうとfermataが生まれたんです。

画像4(乃木坂にあるFemtechのセレクトショップ「New Stand Tokyo」の店内)


生理をより快適に軽やかにする「吸水型ショーツ」という選択肢を


小林: Period.の始まりは?

寺尾: 私はもともと特別生理に関心があったわけじゃなくて、そこまで悩んだこともなかったんです。でも、前職で海外のトレンドをリサーチいるときに、たまたまニューヨーク発の吸水型パンツ「THINX(シンクス)」の創業者のインタビュー記事を読んで。うわあ、何これ!使ってみたい!と取り寄せてみたら、全然漏れないじゃんって。吸水型ショーツを使ってみて初めて、生理が不快だったことに気づいたんです。

画像5(Period.CEO 寺尾彩加さん)


寺尾: 私、ランジェリーが好きなんですけど、生理が始まる頃にお気に入りのショーツを汚してしまうこともストレスで。しかも当時、メンタルの上げ下げが激しくて、心療内科に行くのもハードルが高いしどうしようって悩んでたんですよ。吸水型ショーツをきっかけに、生理のことをいろいろ調べ始めたら、自分の不調がPMSに当てはまることがわかって。産婦人科でピルを処方してもらったらすごく楽になった。

小林: へえ。

寺尾: たった一枚のパンツで人生がわあ〜って高揚していくのがすごいなって、周りの人に吸水型ショーツをすすめまくってたんですよ。そしたら同じ熱量で語っている人がいるよ、って紹介されたのが株主になってもらった駒崎クララさんなんです。

中村: そんなに早い段階でふたりは出会ってたんですね。すてき!

寺尾: “パンツ友だち”だったんです(笑)。初めはいい商品があるから日本で広めるために代理店をやろうと思ってたんですよ。でも、彼女たちはアジア市場をあまり重視してないこともあって、条件が厳しくて。だったら自分たちでつくろうと日本で工場を探して、オリジナル商品の開発を進めて、今のPeriod.になりました。

小林: 私もPeriod.使ってます!吸水型ショーツっていろんなブランドがありますけど、履き心地とかってやっぱり違うんですか?

寺尾: 使っている素材とか、つくり方も結構違いますね。Period.は、多い日の夜眠るときではなく、デイリーユースに適していて、平均的な生理の量をカバーできるものなんです。吸水量を増やしちゃうと過多月経に気づけなくなるので、あえて増やしてなくて。量が多い人は吸水量が多いほかのブランドをおすすめします。

画像6(Period.の吸水型ショーツ「High waist」)


中村: POP UPで彩加さんも店頭に立ってくれることがあるんですが、他のブランドも合わせてご紹介してくださるんですよね。

寺尾: まず、「用途はなんですか?」と聞くようにしています。一番避けたいのは、生理の量が多い人がPeriod.を使って漏れちゃって、せっかく新しい選択を試したのにがっかりさせちゃうこと。吸水性、素材、デザイン、用途、Period.が合う人には長く使ってもらいたいなと思っています。

中村: Period.はブラックでデザインもスタイリッシュなので、生理用だけでなく尿漏れ用に買っていかれる方も多いです。尿漏れ用のパンツってピンクやベージュが多いみたいで。先日、おばあさまとお孫さんが、Classicをそれぞれ尿漏れ用、生理用に買っていかれましたよ。

寺尾: 嬉しい。かっこいいおばあさま!


非常時も安心。生理中もアクティブになれる「月経カップ」

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小林: この月経カップ、私がいつも使っているものより柔らかい。月経カップもやっぱりブランドによって違うんですか?

中村: 違いますね。人によって膣のかたちも異なりますし。たとえばフィットネスをしていて骨盤底筋が鍛えられている方は、カップの素材が柔らかすぎると折り曲がって漏れてしまう可能性もあるんです。

小林: ほー。サイズはどうですか?

中村: 経血量が多い人や出産経験がある人は大きめのサイズと言われていますが、本当は自分で図るのがベストですよね。膣の中に中指を入れてどこまで入るか。韓国ソウルでは2017年の時点で、月経カップのフィッティングルームがあったんです!シンクとカーテンがある場所で中指を入れてサイズを測って、その場で購入したカップを実際に入れてみる。「入らない〜」と言うと「ビール飲む?」って(笑)。リラックスしてカラダを緩めるために。実際にビールが買える自販機もあるんですよ。

小林: へえ〜!ソウルってそんなに進んでるんですね。

画像8(「明日 わたしは柿の木にのぼる」代表 小林味愛)

中村: ソウル市がサポートしてるみたいです。まあサイズは、入れやすい小さいサイズで試して、漏れるようであれば大きいサイズに変えるのがいいと思います。小さなサイズも量が少ないときに使えるので無駄にはなりませんから。

寺尾: 私、月経カップは使ったことがないんですよ、実は。タンポンも入れるのが苦手で。

中村: タンポンを入れるのに抵抗がある人は、難しいかも。吸水型ショーツも含めいろんな選択肢がある中で、自分が快適に思う、カラダに合ったものを使うのが良いですよね。

小林: 私は月経カップも吸水型ショーツもどちらも使ってます。

中村: 量が多い日は月経カップで、量が少ない日は吸水型ショーツ、という使い方もありますよね。最近は、月経カップを防災グッズの中に入れたいから試しておく、という方も増えています。

月経カップを使い始める方から多く寄せられるのが「膣の中でなくならないんですか?」という質問。なくなりはしません。でも、先端のステムがどこに行ったかわからなくなるときはある。そのときは、骨盤底筋を使って、う〜〜っんって力むとヒュ〜〜ンって出てきます。月経カップを使っていても、骨盤底筋は大事だなって思います。

尿漏れ、子宮脱を改善するには、骨盤底筋が大事。


小林: 骨盤底筋!そうですよね!

中村: 尿漏れ、悩んでいる人も多いんですよね。くしゃみをしたときや立ち上がったときのあれ。骨盤底筋を鍛えることで改善できますから。あと、子宮が正常の位置から下降してしまう「子宮脱」は手術をするか、骨盤底筋を鍛えるか、どちらかの選択肢になるそうなんですよ。

小林: へえ。鍛えてます?

中村: 「エルビートレイナー(Elvie)」でトレーニング、してますよ。骨盤底筋をキュッとしても連携するアプリのボールがぽーんと上がらないと、弱ってるんだあって(笑)。日常の中でもトイレでおしっこをしているときに、途中でキュッと止めて10秒間くらいホールドできてるかどうか。ちょろちょろ出ちゃうのは骨盤底筋が衰えているんですって。

寺尾: え、それ小さいときからよくやってます(笑)。尿検査でもやりません?

中村: そうそう(笑)。自然に鍛えてる!

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寺尾: 昔からバレエをやっているのでお尻をグッとあげて膣を引き締める習慣がついているのかも。姿勢を正すだけでも変わってきますよね。

中村: みんな姿勢がよくなってる!(笑)。Elvieのほかにも、ベル型の錘をつけていって抜けないように過ごすアナログな「ケーゲルベル」というトレーニングアイテムもありますよ。

小林: へえ!おもしろい。試してみようかな。

中村: デリケートゾーンは、鍛えて、洗って、保湿する。生理を快適にする月経カップや吸水型ショーツが少しずつ普及してきて、今後はより膣ケアにも注目が高まっていくんじゃないかなって思っています。

(後編につづく。)


中村 寛子さん fermata co-founder/COO

Edinburgh Napier University (英)卒。ad;tech/iMedia Summit主催。2015年にmash-inc.設立。女性エンパワメントを軸にジェンダー、年齢、働き方、健康の問題などまわりにある見えない障壁を多彩なセッションやワークショップを通じて解き明かすダイバーシティ推進のビジネスカンファレンス「MASHING UP」を企画プロデュース。fermataではコミュニティ運営と各種イベントを統括。hellofermata.com
寺尾彩加さん/Period.代表取締役

東京出身。大学卒業後、新卒で動画コンサルティングを行うベンチャー企業LOCUSに入社。クリエイティブコンサルタントとして女性商材の動画プランニングに従事した後、広報を経験。在職中にサニタリーショーツブランド「THINX」と出会い、輸入代行をする準備を進めるも断念。クラウドファンディングで資金を集め、2019年3月にオリジナルブランドとして「ピリオド」をスタートさせ、10月に法人化。period-tokyo.com/
小林味愛/株式会社陽と人 代表取締役

1987年東京都立川市生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向。その後、株式会社日本総合研究所での勤務を経て、2017年に福島県国見町に「農産物の流通・6次化商品開発・ 地域づくり」を行う株式会社陽と人を設立。現在、東京都と福島県の2拠点で活動を行なっている。

text by 徳 瑠里香 photo by 川島彩水


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