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アンティーク着物と古裂と私 vol.8 骨董市

続きになります。

骨董市という言葉の持つ響き、なんだか敷居が高そうと思う方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そして「一度も行ったことがない」「この先も行く予定がない、行く気がない」という方々も、多数いらっしゃると思います。

私が生まれて初めて行った骨董市は、「横浜骨董ワールド」でした。
オーナーが出店し、販売を手伝ったのが私の骨董市デビュー。
路面店が始まる前の事でした。

西洋アンティークから和骨董まで、食器、ガラス、ジュエリー、アクセサリー小物、家具、衣料品、インテリア、衣料品、紙もの、玩具などさまざまなジャンルの商品を扱う店が、所狭しとひしめき合っている。
お客様と店主の会話が濃く、多少の言葉の乱暴さも、この場ではご愛敬。

私が受けた骨董市の印象です。
開催される場所によって、集う業者さん、来場されるお客様の雰囲気が違うのも骨董市の面白さ。

横浜、平和島、新宿、そして日本最大級の骨董市「骨董ジャンボリー」(有明のビックサイトにて開催)と、いくつかの骨董市を体験しましたが、それぞれに楽しみがありました。

横浜骨董ワールドはおしゃれで、平和島骨董市は年齢層がかなり高く、アンティークフェアin新宿はジャズの生演奏が会場を彩り、骨董ジャンボリーにいたっては規模の大きさに驚きました。

こういった大きな骨董市の他にも、週末にお寺や神社の境内で行われているものや、教会の中庭で催されているものもありました。

骨董市のお客様とお話しすると、この方は初めてなのかな、この方は相当通っていらっしゃるなと分かります。

初めての方は「どこをどう見てまわったらいいか分からない〜」と常にキョロキョロ。
目が泳いでいます。私もそうでした。

出店業者側でありながら、会場内の店舗の多さに、一度自分の店舗ブースを離れると、帰ってこれないような気持ちになりました。
気になるものを見つけて購入を迷っていらしたら、どこのお店にあったのかをしっかり記憶しておくといいと思います。
お店ばかり見てるとよく分からなくなってくるので、店主さんやスタッフさんで憶えておくのもおすすめです。

店主や店員と話すの苦手だと感じていらしたら、それでも気にせず、店舗ブースをご覧になってください。
「初めてで…まずは見てまわってます。」
これで充分で、店側がペラペラうるさくなってきたらすぐ出てしまえばいい。
ドアがない分、お気軽に。
ご不快な思いをされたら、ぜったい戻らない。
この気軽さは骨董市の良いところだと思っています。

骨董市慣れしてる方は、お話が上手です。
「おっ、これはいいねぇー」
から始まり、ご自身のコレクションのお話や、最近お買い上げになって良かったもののお話をしてくださいます。
ほどよく場が温まってきたら値段交渉スタート。
「これとこれと二つ買うからさぁ、安くなんない?」
多くの場合「いいですよ」になります。
でも、時には出来ないこともあり、そうと分かるとお客様の態度急変!なんてこともあります。  
売っている側と買う側が互いに強気でぶつかり合う、そんな事が起きるのが骨董市です。
ドキドキします。それだけ、両者共にものに対しての思い入れが強いとも言えます。
古いものを好きな方々の独特なルールの中で、成り立っている世界。
好き嫌いはありそうです。

出店されている業者さんも個性豊かで、隣のお店の方とおしゃべりしたり、お客様からの差し入れを分け合ったり、和気あいあいとしています。

売る人も買う人も笑顔。

骨董市での笑顔が、私は好きでした。
(店員は売れなければ笑顔は曇りますが……)

本からは得られないお客様のお話からの学びや、
「頑張ってね!」と美味しい差し入れをしてくださる常連さん(店舗ブースを離れられないので、食事はブース奥でさっと食べます)、
ご持参のマイルーペで凝視され購入を延々と悩むお客様、
「やっぱり欲しいから戻って来ちゃった!これください!!」の時の嬉しさ、
一日中立っている点ではデパート催事と共通ですが、骨董市には独特の空気が流れています。

この先骨董市に行ってみようかなと思うことありましたら、お散歩する気持ちでお立ち寄り下さい。
買わなくても、雰囲気だけでも楽しいです。

骨董、アンティークの業者さん達は、たしかにクセの強い方が多いと思いますが、扱っているものに対して深い愛情を持っています。
お客様が欲しいものと出あってくださることを、誰よりも待ち望んでいます。

多少言葉が出過ぎてしまうこともありますが、その際はどうかご勘弁を。
今はアンティーク業界に属してはいませんが、私からもお詫び申し上げます。

そして骨董市に限ったことではありませんが、ひと言のあるか無いかで、大きく違ってくると思います。
「触ってもいいですか?」
「(身体に)あててみてもいいですか?」
お声かけいただければ何でもないことでも、断りもなく無言のままいきなりだったり、商品を乱暴に扱われることはとても悲しいことでした。

「ねぇ、まけてよ、どれくらいまでまけられる?」
最初から自分勝手に突っ走られても、大変困ります。
欲しいものを見つけることが出来たお気持ちを、大切にして欲しいです。
礼儀正しくいい感じのお客様には、おそらくどの店主も店員もおまけします。それが骨董市です。

◇◇◇◇◇◇◇
次回最終話「vol.9 アンティークに思うこと」に続きます。
店で働き始めてからのことを書いてきましたので、どうやってそれが終わったのかも最後まで書こうと思います。
かなり私事な内容でもあるので、古裂、アンティーク着物、骨董のことだけでいいよ〜という方にはつまらないと思います。
お時間あり、ご興味ある方だけで…。ご無理なく。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

※見出し画像は袋帯です。菊の花と立涌(たてわく)文様です。立涌は、2本の曲線で蒸気が立ち昇っていく様子を表しているという説があるようです。見出し画像だと横向きになっていますが、帯を締めた時、お太鼓部分(背中の)は縦になります。天に向かって立ち昇る→おめでたいことを示す吉祥文様です。
この帯を友人の披露宴や子どもの七五三、長男の小学校卒業式に締めました。
アンティークの帯なので、長さが現代ものより短く帯幅も狭いのですが、大好きな帯です。