するものじゃなくて、落ちちゃったお話
大学2年生の時、はじめて「彼」ができた。
中高6年間を仏教系の女子校で過ごした。
クラスメイト達から日々聞こえてくるリアル恋愛話と、その当時読んでいた本や漫画の中での恋愛で、自分はもうおなかいっぱいな中高生だった。
誰かを本気で好きになること、しぬほど大好きでたまらないと思うことが、この先の私の人生のなかで起こるのかな?
そして私のことを好いてくれる人が本当に現れるのかな?と思っていたら、
大学に入ってすぐ、私は「一目ぼれ」というものを体験した。
恋はするものじゃなくて、落ちるものだ
江國香織さんの小説『東京タワー』で読んだけれど、
その通りだな、と思う。
大学1年の時、私が落ちちゃった相手は4年生。
彼が卒業すると、構内で会う機会も、偶然(を装ってby私)一緒の電車で帰る機会も減ってしまうな、どうしようとぐずぐず、グシュグシュ思っていたら、
これからも、変わらず会おうよ
むこうから言ってくれて、彼の卒業後、おつきあいがスタートした。
好きだよ、とかつきあおうとか、そういう言葉はお互いになかった。
学生の私と社会人の彼がデートできるのはもっぱら土曜日の午後で、それも私が電話を何度もかけ続け、熟睡している彼を起こしてから会う、というのが定番だった。
当時二人とも携帯電話もなく、自宅の固定電話。
彼のご家族は土曜日は不在で、家には彼しか居ないことがわかっていたので、何度も電話することが出来た。
彼の初めての就職先はハードで、かろうじて週休二日はキープしてはいたものの、常に心底くたびれ果てていて、私の電話で起こすのも気が引けていた。
そうしないと起きないし会えないから、気にせずじゃんじゃん電話してくれと言うのだけれど、かける側からしたら、正直つらいことだった。
いつも疲れた身体を引きずって、待ち合わせの場所にやってきた。
眠くて眠くて、会っている最中にウトウトしている時もあった。
こんなに疲れているのにわるいなぁと思いながらも、それでも私と会ってくれるのが嬉しいなという気持ちが、いつも半分ずつ心の中にあった。
ゆるゆるとデートを重ねていったなかで、車でうちまで送ってくれる日があった。
車に乗ると、
今日はなんだかものすごく疲れちゃった。眠い。
と彼が言い出した。
そんなで運転してもらっていいの?私、送ってもらわなくて大丈夫だよ、まだ電車あるし。あ、そうだ、ガムあるんだ、ガム食べる?
バッグの中からガサゴソとミント味のガムを出し、ひとつ渡した。自分もひとつ口に入れる。
まだ眠い。
と言うので、じゃあ、もう1個あげるね、とバックに手をかけたその時、
はじめてのキスだった。
ふいをつかれたーーーーー!
あまりにびっくりして固まっている私。
なにこれ?え?ええ?!
もう、眠くなくなったから、しゅっぱーつ!!
固まっている私の隣で彼がおどけたように言い、ゆっくり車が動き出した。
◇◇◇◇◇◇
「noteで、恋の話を書く企画があるのだけど参加してみたくて……
おとちゃんとのことを書いてもいい?」
昨晩、家呑みしてほどよく酔っぱらっている夫に聞いてみたところ、
いいよー、何でも書いていいよー
と言われました。
今朝もう一度聞いてみると(恋バナだよ、と強調)
いいよー、いいよー
とのことでしたので、書かせていただきました。
みおいちさんの素敵な企画です。
結婚してよかったことのひとつは、もう電話して起こさなくてもいいことです。
好きな人と一緒に暮らせるのはしあわせです。
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