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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2021年9月の記事一覧

『バラックシップ流離譚』 キミの血が美味しいから・21

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 ドアをあけると暗い廊下が奥に続いていた。
 呼びかけたが返事はない。

「うむ。どうやら留守のようだね」
「いや。いやいやいやいや」

 ウィルは首を横に振った。

「そんな小声で聞こえるかよ」
「大声を出したら彼女《ラ=ミナエ》に見つかるだろう? それに、この辺の住人はとっくにどこかへ避難しているよ」
「たしかにそうだけど……」

 ウィルは痛みに顔をしかめた。

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