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小説

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異形ひしめく船上都市での群像劇『バラックシップ流離譚』他連載中
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2020年12月の記事一覧

『アンチヒーローズ・ウォー』 第二章・5

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 こんなナリではあるけれど、怪人《ノワール》としての経歴はそこそこある。
 すくなくとも、あの脳筋《ゾルダ》とちがって、本物の戦場をいくつも渡り歩いてきた。

 ああ、そこでは――
 戦場という、効率と不確定要素の坩堝では――

 なにもかもが道具であり、同時に人とそれ以外に明確な一線が引かれている。
 とりわけ怪人《ノワール》など、動いて、喋りはしても、命あるものとして扱

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『アンチヒーローズ・ウォー』 第二章・4

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 研究所には現在、三つの研究室がある。
 ボガート・ラボ、セルキー・ラボ、そして“アトリエ”ことケット・シー・ラボである。
 ふざけているとしか思えない、トンデモ怪人ばかり作っているセルキー・ラボは別として、ボガード・ラボとケット・シー・ラボは長同士がはっきりとライバル関係にあり、その意識はなんとはなしに、それぞれのラボ出身の怪人《ノワール》たちにも共有されている。
 つま

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