狩猟免許合宿6日目──咖哩
本日も休みである。昨日の話から始めよう。
パンの押し売り
昨日、パンの押し売りが宿舎の敷地内に入ってきた。函館でパン屋をしていて、月一で巡回販売しているという。そのときはわたしひとりで、ちょうど仮眠を取っているときだったから、半分寝ているような頭でなんとなく食パンと焼きそばパンを買ってしまった。1個400円と割高である。
ひとが気持ちよく眠っているというのに誰かいませんかーなんて大声で呼ぶものだから、つい何事かと思って反応してしまった。そして、ここまで車で乗り入れていいですか、なんていうのにも、うっかりいいですよなんて答えてしまう。さらに、ここは何の施設ですか、なんて問うてきたのにもここは合宿所で云々かんぬんと答えてしまった。窃盗の下見かもしれないのに。
ここが何の施設かも知らないで入ってくるなんて、しかもそれを尋ねるなんて、随分肝が座っているものだ。次来たときはそのまま追い返してやるからな(1ヶ月後はいないけれども)。
でも、パンが美味しかったからよしとする(自分でも随分と楽天的なものだと思う)。
イワンのばか
昨日熱中症になってしまったYさんは今日はゆっくりできるということで遅めの朝食を一緒に準備した。メニューは昨日買った食パンのトーストと、焼きアスパラ、目玉焼きに、昨日の残りものである。西瓜なんかも切っちゃって随分と豪勢なモーニングだ。小野Dもあまりの暑さに農作業が中止になったということで帰ってきた。彼に取ってはブランチだ。
朝食を取っていたら、業者らしき人が「水道直しにきましたー」と言って入ってきた。
そんなひと呼んだ覚えもないし、誰かが呼んだという話も聞いていない。
だから、Yさん、小野Dと冗談で、悪徳業者かな、とかパン屋は下見でこの人たちグルかな、とか話していた。話しているだけで台所に様子を見に行かないわたしたちもわたしたちなのだが。
だがどうやら本当にしょぼい悪徳業者だったらしい。
というのも、あとから気づいたら、台所の蛇口が10cmほど短くなっているのである。
水道を捻って出てくる水が、窪んでいる部分ではなく、そのちょっと上あたりに当たるのである。
つまり、水道のパイプを10cm分盗まれたわけだ。
本来なら怖がってもいいのだろうが、わたしたちは呑気なもので大爆笑である。
知らない業者が入ってきても放置で、パイプを盗られても朗らかである、というこのことに、わたしはトルストイの『イワンのばか』を思い出した。
純朴に生きることって大事だぜ。
カンペシーノ
昼食は、Yさんと小野Dと片道30分のカレーとコーヒーの店に行く。信号ひとつない北海道のまっすぐな道を自転車で駆けるのは、暑いけれども本当に気持ちがいい。「呼吸」ってこういうことだったか。
左右を見渡せば、稲やネギ、そのほか知らない野菜がたくさん育てられているのが見える。大きな坂のラストスパートを走り抜けてやっと到着である。5年前も厚沢部町での合宿経験があるというYさんはここに来るのも5年ぶりだという。
皆で同じメニューを頼んだ。カレーとナン、ご飯にサラダの載ったプレートに、アイスコーヒーをつけた。美味しいカレーで道中の苦労が報われたかのようだった。インド生活の経験がある小野Dは右手だけで平らげている。Yさんとわたしはスプーンとフォークで。
帰りは下り坂だからあっという間に宿舎に着いてしまった。ちょうど着いてから夕立が来たのでタイミングがよかった。洗濯物を取り込まなきゃ。小野Dはバイクの教習に行く。Yさんとわたしは仮眠を取る。
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また蠅の羽音がする。おはよう。