そんなハナコに憧れて
言語のわからない赤ちゃんも動物たちも「かわいい」ということばの意味を感じとっているようだ。
女の子の赤ちゃんに「かわいいね」と微笑みながら声をかけると男の子の赤ちゃんにくらべかなりの高い確率でにっこり笑い返してくれる。
なんてかわいいんだろう!とこちらもまたにっこり微笑んでしまう。
よく行く珈琲屋にあそびにくる野良猫のハナコ(メス)も例外では無い。
ハナコは夕方になるとどこからともなくひょっこり現れ、珈琲屋の玄関先でちょこんと座っている。
お天気や季節でいない日もあるけど、どうやらほぼ毎日の日課らしい。
面倒見のいい珈琲屋の店主にごはんをもらいにきているのかな?
あそんでもらいたいのかな?
と店主からごはんを預かり「ほい」と、前に差し出しても挨拶程度にちょこっと食べて
「それちゃうねん。。」とため息が聞こえてきそうな雰囲気を纏いまた座りむ。
猫は気ままだからとくに大きな理由なんてないのかもしれないと思っていた。
ある日の夕方、珈琲屋に入ろうとしたらまたハナコが座っていた。
「あ、ハナちゃん」
と声をかけた私のうしろから
「かわいいね〜」
と買い物帰りらしいおばちゃんがハナコに声をかける。
またその直後
「みて〜猫いる!かわいい〜」
と女子高生2人組がハナコを見つけスマホで写メを撮りかわいいかわいいと言いながら通り過ぎていった。
あ、そんなに声をかけたら逃げちゃうよ〜とハナコの様子を見ていると、びびりですぐに逃げてくハナコがまんざらでもないといったすまし顔で座っているではないか。
その日だけではなく、別の日もそのまた別の日もハナコは道行く人に「かわいい」と声をかけられ写メを撮られていた。
おやおや?もしかしてあなた「かわいい」って意味わかってるの!?
そして私の推理がはじまった。
彼女が現れるのはだいたい16:00~17:00。
珈琲屋がある路地の奥には駐輪場があり、その時間は学校帰りの学生や買い物帰りのおばちゃんたちが盛んに通りいつも賑わっている。
とくに女性は赤ちゃんや動物に
「かわいいね〜」と気さくに声をかける習性がある(人が多い。もれなく私もそのひとり)
そしてハナコは女の子。
「かわいい」と言われて嫌な女子はほぼいない。
すべて謎は解けた!
そう。私の推理が正しければ
野良猫のハナコは「かわいい」の意味をちゃんとわかっていて、ご飯でもなでなでしてほしいのでもなくみんなからの「かわいい」を珈琲屋の店先で待っているのだ。
私は深く感心してしまった。
言語のわからない赤ちゃんにとっても動物にとっても「かわいい」から発せられる好意のエネルギーはどうやらすごいらしい。
言語がわからないからこそ目に見えないものを感じ取る力が優れているのだろう
言語を獲得した私たちも、自分に対するポジティブな好意を取りこぼすことなくサッとキャッチし、自分の喜びやエネルギーに変換できる能力が高ければ幸福度は格段と高くなるにちがいない
しかし、大人になるにつれ褒めらたときに素直に喜べず抵抗力がはたらいてしまうことが多くなっている。
心の底ではバンザイしつつも
「いやいやまだまだです」と謙遜したり
「顔のお描きプロ級なんです」などと笑いまじりで返してみたり。
時と場合では良いこともたくさんある。
笑いもとれて場が和むこともある。
だけど、同じ女性としてハナコの「褒め」を素直に受け取る素直さ、褒められていることに誇りさえ感じ気分よくしてい姿に清々しさと憧れを抱くようにった。
そして私も褒められたらまずその好意に対して「うれしい!」「ありがとうございます!」と素直な気持ちをまず返してみることにした。
そしたらなんだかとても気分が良い。
今まで感じたことのない明るい気持ちにもなる。
さらに、伝えてくれた相手も喜ぶ私の様子を見てまた喜んでくれている。
なーんだ!良いことだらけじゃないの!
好意の気持ちを本心に背いて拒否したり抵抗するのではなく、スッと受け取るとみんながHappyになる。
ハナコはそのことをすでに知っていて幸せになるヒントを教えにきてくれていたかもしれない。
これで私も受け取り上手さんの仲間入りだ!
と勝手に解釈し感謝した。
ちなみにハナコは食欲旺盛でよく食べるのでぽっちゃりしている。そこがかわいいのだけど
「ハナちゃん、ぽっちゃりやな〜。また太った?」と珈琲屋の店主(男)が無神経にも言おうものなら「この人信じられへんわ」とプイッと顔を背けポテポテと怒って立ち去ってしまうのだった。
言語にはやはり良くも悪くもそれぞれエネルギーがあり、しっかり相手に伝わるようになっているようです。