中国語を学ぶ理由
英語を学んでいても、「アメリカかぶれ」や「イギリスかぶれ」と思われることはほとんどありませんが、中国語を勉強していると言うと、よく「中国が好きなんだね」と思われます。これは、日本語を学んでいる中国人に対して私たちも似たような感情を抱くことがあるから、仕方ないのかもしれません。
でも、実際に「中国が好きですか?」と聞かれると、自信を持って「そうです」とは言えません。中国で知り合った人や学校で「你为什么学习中文?」(なぜ中国語を学んでいるの?)と聞かれるたびに、私は「中国映画が好きなんです」とか「中国の歴史はスケールが大きくて面白いですよね」なんて答えて、その場をなんとかやり過ごしています。でも正直言えば、実はそこまでの興味があるわけではないんです。単に今の語学力で説明しやすいからそう言っているだけで、いつも「これ以上突っ込まないでほしいな」と思ってしまいます。
本当の理由はもっとシンプルです。私は高校時代に大学受験に失敗して、仕方なく中国語を学び始めました。その時は中国に対して特別な興味も何もありませんでした。でも、将来は中国が中心になる時代が来ると言われていて、中国がWTOに加盟し、経済が急成長しているにもかかわらず、中国語を学ぶ人はまだ少ない。これは大きなチャンスだと思ったんです。高い学歴がなくても、中国語ができれば将来有利になるかもしれない、そんな打算で中国語の勉強を始めました。
でも、興味がないことを学ぶのはやっぱり大変です。外国語の勉強そのものが単調な苦行のように感じ、中国の文化や歴史にもほとんど関心が持てず、受験の失敗の影響もあって、日々何となく過ごしていました。自分がどこに向かっているのか、将来何をしたいのかもわからず、悶々とした気持ちを抱えていました。
そんな大学1年生の時、東南アジアを旅しました。マレーシアやシンガポール、カンボジアで、現地で力強く生きる華僑の人たちと出会いました。まだ片言の中国語しか話せませんでしたが、彼らと少しだけ会話ができた瞬間、自分の中で世界が少し広がった気がしました。同じものを見ていても、英語のフィルターを通して見る世界とは、違うものの見え方というか。言葉を通じて、ただの風景以上のものが見える瞬間があるんだと、その時初めて気づいたのです。
その経験から、もっと広い世界を見たい、もっといろんなことに興味を持ちたいと思うようになりました。そして、大学の留学制度を利用して中国に留学することを決めました。
今、中国で学んでいる留学生仲間たちも、それぞれ違う理由を持っています。中国で働きたい人、ビジネスを起こしたい人、自分のルーツを探りたい人…理由は様々ですが、みんな共通しているのは、中国語を通じて新しい可能性を見つけようとしていることです。
こうした多様な考えに触れると、自然とわくわくします。まだ、自分が言葉を通じて何を学び、将来何を成し遂げたいのかははっきりしていませんが、留学が終わる頃には、その答えが見つかるといいなと思っています。
2004年3月31日