インストについて思う事

僕,灰銀がボードゲームにおける「インスト」って何だろうな。とダラダラお気持ち垂れ流すNoteです。
ちなみに灰銀は「インストの正解は相手によって違うので【一般解】はない」派閥です。


■はじめに

下にダラダラと書いていきますが,結論として僕は
ボードゲーム(の普及)にはいくつもの壁があって,『インスト』と言う1単語に多くを担わせるのは酷だ=「一般解はない」
という考えに至りました。これを踏まえて読み進めてもらえれば幸いです。
以下の図が参考になると思うので,最初に載せておきます。

出展:「知ってる」なんて最初の一歩!スキルにそびえる5つの壁! - GEMBAコンサルティング (gemba-c.co.jp)

■ボドゲを知る「インスト」

 これは「知識の壁」を越えてもらうための「インスト」です。よくXなんかで見かける「ボードゲームって何?人生ゲームみたいなやつ?」と言う質問と,それに対する答えがここにあたると思っています。
 これってインストか?と思われそうですが,インストラクションと考えると,相手の知らないことを教える行為なので,定義通りインストと言ってよさそうです。
 ボードゲームを長くやっている人でも,この「人生ゲームみたいなやつ?」という質問への回答は苦慮します。相手のゲーム歴次第ですが「お金とルーレットだけじゃない人生ゲームみたいなやつ」辺りが,ジャブとしては無難な気がしています。
 相手が食いついてくれるようなら,サイコロを振ったりルーレットを回すだけでなく,自分の番が来たら悩むようなゲームがあるんだよ。というような説明をすると良いんじゃないかと思っています。
 この壁を越えてくれた相手はボードゲームを知らない人から【ボードゲームを知っている人】になります。

■とりあえず1回やる「インスト」

 これは「行動の壁」を越えてもらうための「インスト」です。ただ,個人的にはこのとりあえず1回。と言うのが果てしなく分厚い壁だと思っています。如何に相手の好きそうな土俵に転がり込んでいくか…。
経験上,大人になってみると案外とっつきやすいのが「インサイダー」辺りです。少し前にテレビで人狼が取り上げられた影響もあって,人狼みたいなやつだよ,と言うと通じることも少なくありません。
 とりあえず1回やってもらい「ああ,意外と簡単なんだね」みたいな反応が貰えたらこのステップはOKです。これで相手は【ボードゲームをやったことがある人】になりました。

■自分で気づく「インスト」

 もし,もしですよ,相手が「また何かやってみたい」と言ってくれる金の鉱石だったなら。少し戦略のある,また毎回展開の変わるような中量級を推してみましょう。そう「気づきの壁」を越えてもらうのです。
 個人的には,相手がカードゲーム経験者なら「ドミニオン」,そうでないなら「宝石の煌き」辺りがお勧めです。
 1ゲーム30-60分で終わるものを2,3回遊んでもらえると,その中に「次はこうやってみよう」という欲が出てきます。また,「中々上手くいかんな…」という学びも得てくれると思います。ここまで付いてきてくれた相手はもう【ボードゲームの魅力がわかった人】です。

■戦略を学ぶ「インスト」

 勝った負けたを繰り返して,あるゲームにおける定石みたいなものを身に付けていくステップです。つまりは「技術の壁」を越えてもらうステップです。中には勝手に勉強して勝手に強くなって,勝手に沼に嵌ってくれる方も居ますが,そうでない場合は大体の物事において,誰かに教えてもらい,反復練習を経てそれを身に付けて上達します。
 「気づきの壁」でも遊んでもらった30-60分のゲームを教材に,感想戦や検討をしっかりやったり,あるいは単に強い人のプレイングを見て学ぶのも良いでしょう。重要なのは,自分でできるようになる事と,回数をこなすことです。
 これを続けられれば,相手の趣味の1つにボードゲームが入ったと言っても過言ではないでしょう。そう【ボードゲームができる人】の誕生です。

■自ら誘う「インスト」

 インストの最終段階では,そう。「お前がインストになるんだよ」。
と言うわけで,「習慣の壁」を越えるステップですが,これは余り気にしていません。
 ボードゲーム業界と言うかプレイヤー界隈では,インストを受けていた側の人間が自律学習を経てインストする側に回る。この一連の流れが繰り返されるのが常です。また,ボードゲーム歴が浅いとしても,常にインストを受ける側かと言えばそんなことはなく,全く未経験の友人に対しては,慣れないながらもインストをすることも珍しくはないでしょう。さらに,ある程度遊んだことのある同士なら,流動的にインストし合う事もザラです。
 ここまでいけばその人はライフワークとしてボードゲームを楽しむ【ボードゲームをしている人】と呼んで差し支えないはずです。

■まとめ

 冒頭で触れたように一口に「インスト」と言っても,自分と相手との関係性や,自分や相手のボードゲーム歴によって,その意味するところも違えば,インストをする/受ける方向さえも違います。これは,斯様に様々な意味を持ちうる行為を全て「インスト」で済ませてしまいかねない。という事でもあります。
 僕個人としては,5つ目の自ら誘うステージは「インスト」と言うより「普及」と言った方が良いと思っています。ただ,これも誘われる側からすれば「インスト」を受ける訳で,これこそがインストと言う言葉の難しさだと思っています。

 巷では「インストに正解はない」と言うカジュアルな主張から,「誘った人が自分からやってくれて初めてインストの成功」と言ったシビアな主張まで幅広く見かけます。けれど,上述の通り,関係性によってやり方も方向も変わるものを「インスト」の一言で纏めたとしても,そこに一般解はないし,成否で語る事自体ナンセンスだと思います。
 大切なのは「自分と相手との関係性」「相手のバックグラウンド」に合わせた適度な干渉と,距離感だと思います。

■おまけ:「インスト」と「普及」とに分けよう

 どうしても成否で語るのなら,「インスト」と「普及」との2軸に分けて,
①インスト
 ・相手にルールや遊び方を教えて,遊んでもらう行為
 ・ルールを正しく理解してもらえて,最後まで遊べたら成功
②普及
 ・ゲームを通じて楽しさを知ってもらい,次へのモチベーションを喚起する行為
 ・教えた相手が楽しんでくれて「また遊びたい」「他のゲームもやってみたい」と言ってくれたら成功
と言うように評価してみるとよいのではないかと思います。

●例1:
インストして遊んでもらい,楽しかったと言ってくれたが,1回きりだった
→インストは成功したけど,普及は失敗だった。

●例2:
インストに抜けが多く,最後まで遊べなかったが,一緒に遊んだ人から後日「この前のゲーム,今度は最後までやりたい」と言って貰えた
→インストは失敗したけど,普及は成功した。

●例3:
インストして遊んでもらい,「楽しかったので他のゲームもやってみたい」と言われた
→インストも普及も成功した。

ざっくり3つの例を挙げました。こんな感じで考えを分けると「インスト上手くいかなかった」のハードルが下がるんじゃないかと思います。
 ボードゲームに限らず,何かに嵌るにはいろいろな壁が存在します。自分と相手との段階(どの壁の間に居るのか)の違いによって,説明の仕方は変わってしかるべきです。相手がボドゲ所持数500個越えとわかっているのに,ワーカープレイスメントとは何か,から説明する事がまずないように。
 仲間内でしか遊んでいないからダメなんだとか,2回目がなければ失敗なんだと言わずに,その時その時を楽しめるように,ベストを尽くせばよいのだと思います。

では,楽しいゲームライフを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?