昭和8年から続く老舗銭湯『小杉湯』から学ぶ 場を持つコミュニティ
世の中には様々なコミュニティの形態がありますが、その運営形態は、『オフラインの場を中心としたコミュニティ』とFacebookグループなどを活用した『オンラインを中心としたコミュニティ』の2つに分けられるのではないかと感じます。
今回は、1つ目の『オフラインの場を中心としたコミュニティ』について、昭和から続く老舗銭湯『小杉湯』の事例から、場を持つコミュニティ運営のヒントを学び、『コミュニティの教室』第2回講義のイベントレポートとしてまとめたいと思います。
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銭湯というと昔から日本の生活には欠かせないものであったところから、今では自分も含めて多くの若者には馴染みが薄いものになったという印象を持っています。
近年、サウナの人気が高まってきており、『整う』という言葉もよく聞くようになりました。小杉湯の名物はミルク風呂で、交互浴の聖地とも言われているそうで、多世代で多様な方々が訪れ、最近では20代30代が増えているとのことです。
『小杉湯をきれいで、清潔で、気持ちよくし続ける』という家訓を軸とした、平松さんの思いの一端を感じて頂ければ幸いです。
平松 佑介
小杉湯3代目
1980年生まれ 杉並区高円寺出身
住宅メーカーで勤務後、ベンチャー企業の創業を経て、2016年から家業の小杉湯で働き始める。2017年に株式会社小杉湯を設立、2019年に代表取締役に就任。1日に1000名を超えるお客さまが訪れる銭湯へと成長させる。空き家アパートを活用した「銭湯ぐらし」、オンラインサロン「銭湯再興プロジェクト」など銭湯を基点にしたコミュニティを構築。また企業や地方と様々なコラボレーションを生み出している。2020年3月に小杉湯となりに新たな複合施設をオープン。
1.銭湯の価値を再定義
平松さんのお話:
小杉湯は昭和8年創業なので、今年で87年目の銭湯で
僕は3代目になります。
小杉湯は昭和8年の頃から、大枠の建物の構造は変えていないので天井の格子型のものとかは屋久杉を使ったもので創業当初から変わっていないものとなります。
3年前から登録有形文化財にも申請をしていて今年ようやく無事に通ったので、晴れて登録有形文化財となり、この建物を50年後も100年後も残していきたいと思っています。
銭湯に対しての世の中の定義づけ
家にお風呂が無かった時代
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家にお風呂がある時代
『銭湯の価値・銭湯の役目は終わった。』
『斜陽産業となった。』
小杉湯としては?
『家にお風呂がある時代においても銭湯の価値を発揮している。』
↓平松さんが考える銭湯の4つ価値がこちら↓
Wellness 体を整える(肉体的な健康)
Relaxation 心を整える(精神的な健康)
Leisure 友人、知人と楽しむ場所
Community 地域との繋がりを感じる場所
『家にお風呂がある時代においても銭湯の価値を発揮している。』
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小杉湯なりの銭湯の定義
ケノ日っていうのが日常、ハレノ日が非日常の時に、
かつては家にお風呂が無かった日常のものだった銭湯が、家にお風呂があるようになって非日常の体験を提供しているかというと決してそうではなくてあくまで日常であり、
日常のちょっとした幸せを感じる場所であったり、
日常の延長線上でほっとできるような場所になってると感じています。
人のサービスが介在しない分、場所として人とコミュニケーションを取るということを意識しています。
場所にコミュニケーションを委ねている分、逆に人のサービスや人が活きるというのが特徴だと思っています。
2.小杉湯は環境
小杉湯はけっこう色んなイベントとかが起きていたりとか、色んなコミュニティが起きているので、メディアの取材もおかげさまで頂くんですけど
どうしても何かイベントをやっているから人を集めているとか、コトを起こしているから人を集めているとか、コミュニティをつくっているから人を集めているというように言われてしまいがちで、説明するのが大変だと思っています。
それを思いっきり崩して向き合ってくれたがgreenz.jpの今回の記事で、読んでない方は是非読んで頂きたいです。
コトを起こす→人を集める
人が集まる→コトが起きる
レイヤーとかグラデーションがすごいある人たちが小杉湯には集まっています。集まった結果そこでつながる人が出たりだとか、結果的にお客さんの方から声をかけてくれているので、色んなコトとかコミュニティが生まれているのが小杉湯の状況だなと思っています。
変化が激しい時代において変わらないもの
コミュニティを考える上で、変わらないものの存在はすごく大事になってくると思います。つながりとかコミュニティが人に属してないというのがすごいポイントで、全ては小杉湯に属しているんですね、だから小杉湯のコミュニティマネージャーは誰かと言ったら小杉湯であると思っています。
小杉湯の可能性や将来性を信じた仲間たちが結果的に小杉湯を介してつながっているので、中心にあるものが変わらないので耐久性があるっていうのが印象です。
場所に紐づけることができているのが小杉湯の強みであると思っています。
3.銭湯のある暮らし
小杉湯という環境から生まれたものが『小杉湯となり』
小杉湯となりは、小杉湯のお客さんが集まってつながって、企画して運営している場所になっています。
銭湯のあるくらしの中で
『ケノ日のハレ』
を感じる空間・場所になった。
オン・オフを切り替えられたり、デジタルデトックスな空間なので本当にホッとできたり、頭を整理したりだとか、そういう空間が働き方や暮らし方が多様化する中で大事であると思います。
小杉湯に集まったメンバーが銭湯のあるくらしをして、小杉湯の可能性や銭湯のあるくらしの可能性をすごい感じて、法人として事業を展開していくことになりました。
高円寺というのを一つの家と捉えて、そうすると自分が住んでいる家は寝室になるし、小杉湯は家の中のお風呂だし、まちの喫茶店とかカフェとかレストランは家の中の食堂であると言えます。
家の機能をまちに分散化させて、街にくらして生きるようなライフスタイルっていうのが、今後多様化していく中では選択肢を狭めず可能性があるのではないかというのが、行き着いた体験となりました。
4.Q&A
小杉湯に来るお客さんは昔と今で変化があるのか?
家にお風呂がなかった時代と家にお風呂がある時代で大きく違うが、家にお風呂がなかった時代の多くは機能として来ながらも、つながりは生まれていると思うので大きいコアのところは変わらないのかもしれない。
都市の中で分断と孤独が進んでいる中で、何かをしなきゃいけないとか、繋がらなきゃいけないとか、役割をして頑張らなきゃいけないというのは、分断化を起こしやすいと感じる。中距離な匿名性に近いようなゆるやかなつながり、パーミッション、許容、いるだけでいいと受け入れてくれる場所というものが、特に東京というまちにおいて必要だなと感じている。
コロナ禍でどのように対応したのか?
コミュニティの価値をどこに見出したのか?
営業をどうするか悩んだが、支えられたのは小杉湯を環境という定義にしたというところ
自分たちの役割は何かということを考えたときに心と体のインフラだという話になった。
いろんなリスクも考えられるし不安もあるけれどそこは覚悟を持っていつもどおりやろうと決断した。
緊急事態宣言中っていうのが、高円寺の小さい経済圏の中で生き延びるという形が見えた。
今回コロナの影響を大きく受けて、今後大切にしていきたいのは小さい経済圏 小さい共同体、人とお金とモノがグルグル回るようなものを強固にしていくというのをすごく大事にしていくことが必要だとと思っている。
まちづくりや地域経済圏まで考える原動力は?
原動力は生存戦略僕は家業として覚悟を決めて、未だに斜陽産業と言われている銭湯の中で、自分の娘にいい形でタスキをつなげるかみたいなところが一番なので、何もしなければ衰退してしまうという危機感がある。
銭湯だけで生き延びるのは難しいし、今回コロナにおいて地域で繋がって地域で経済圏をつくってやっていくということで、生き延びれるという手応えを感じているので、逆にそこを生き延びるためにつくっていっている。
5.まとめ
日常に余白をつくるということは、自分の心にも余裕ができて他者に対しても、自分にできることは何かあるかという視点が生まれてくるきっかけになるのではないかと感じました。
コミュニティにおいて場があるということは、コトやイベントを先行させるのではなく、その場所の価値を信じ抜ける人が集まっていることが重要だという気づきを得ました。
運営としては、そのための環境をいかに整えることができるかというのが、一つの学びとしてあるのではないかと思います。
今回もタカタ ユナさん(Twitter @Yuchi_gra)に
グラフィックレコーディングしていただきました。
6.運営側の一員として
イベントから1ヶ月が経過していく最中にもメディアに取り上げられるほど注目を集めている小杉湯さんは、やはり素敵な環境づくりをされていると感じました。
NPOグリーンズでは、greenz peopleという”いかしあうつながり”を探究するコミュニティがあり、毎月1,000円〜から会員となることができます。
是非この機会にコミュニティのことをあらためて考えてみてはいかがでしょうか?
ご興味のある方はこちらから